電気自動車のゲームチェンジャーとして期待高まる
中国・広州市で開催されている広州モーターショーでも、電気自動車(EV)などの環境対応車が主役となっています。日本企業は米国などに比べてやや遅れを取っているとも指摘されますが、液体のリチウムイオン電池の次の世代の主役になりそうな「全固体電池」では日本が先行していると見られています。先に開催された東京モーターショーでは、トヨタのルロア副社長は「全固体電池で(EVの)ゲームチェンジャーになる。保有特許はトップ。2020年代前半に実用化する」と宣言しました。以降、株式市場で同電池関連銘柄が物色される流れが継続しています。
EVの航続距離を伸ばし、充電時間も大幅短縮
全固体電池は現行のリチウムイオン電池に比べて航続距離が2倍、充電は数分で完了する可能性がある「次世代電池」です。リチウムイオン電池の主要部材である電解液を固体の電解質に変えたもの。特徴としては
(1)一つ一つのセルを包むケースが不要となり、直接積層できる
(2)優れた高温耐性により、冷却システムなどが削減できる
(3)高電圧でも使用できる
などです。この特徴を活かし、リチウムイオン電池に比べて電池や周辺の機器を小型化できる一方で、大容量化が可能になるそうです。また、リチウムイオン電池が高温(セ氏70℃以上)や低温(-30℃以下)では出力が低下するのに対し、全固体電池は出力低下が少ないというメリットもあるのだそうです。今回は、全固体電池関連銘柄を取り上げます。
日立造船 <7004>
16年2月に硫化物系固体電解質を使用した全固体リチウムイオン電池の開発を発表しています。電解質に液体ではなく、固体を活用。同社独自の製造方法で耐久性に優れ、かつ製品化に適した電池の開発に成功しました。会社側の発表資料によれば「大気圧下での充放電が可能」(従来の全固体電池は機械的に圧力をかけた状態で充放電を行なう必要がある)、「フラット化により積層が可能」(電池本体の厚さが約0.3ミリメートルで固体。積層化で電池の小型化が可能)、「広い温度環境で使用可能」(セ氏マイナス40度からセ氏100度での充放電を確認)、「超寿命」(理論的には一般使用の下で90%以上の容量維持率を約7年間保つ)などの優位性があるそうです。オハラ <5218>
16年8月に全固体リチウムイオン電池の試作に成功したと発表しています。積層シートの一括焼結製法を用いることで、マイナス30℃という低温化でも駆動するとの実証に成功。大気中で安定している酸化系材料で構成されるため、安価な工程構築が可能になるとしています。トヨタ自動車 <7203>
16年3月に東京工業大学と、全固体電池の開発は成功と発表しています。日本特殊陶業 <5334>
全固体電池向けに、同社が得意とするセラミック製造技術を応用したシート型の製品開発に乗り出しています。三井金属工業 <5706>
全固体電池用の硫化物系固体電解質を開発。イオンが動きにくいという従来の固体電解質の欠点を克服したようです。2020年にも実用化を目指しているとのことです。積水化学工業 <4204>
ゲル状の電解質を使用した大容量フィルム型リチウムイオン電池を開発しています。準全固体電池ともいえる内容ですね。村田製作所 <6981>
ソニー <6758> から買収した電子部門に全固体電池の供給実績があります。村田製の有する技術と融合で、車載向けにも開発進展に期待が持てそうです。【関連記事をチェック!】
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