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日本を代表するロボットメーカー安川電機とは

安川電機はファナックとともに、日本を代表する産業用ロボットメーカーで、「ACサーボ」「インバータ」で世界トップシェアを誇り、アーク溶接産業ロボットも世界トップクラスです。業績絶好調の同社の強さを探ります。

戸松 信博

執筆者:戸松 信博

外国株・中国株ガイド

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日本を代表するロボットメーカー安川電機(6506)

世界中で工場の自動化需要が拡大しています!その中で安川電機の業績は堅調に拡大しています!

世界中で工場の自動化需要が拡大しています!その中で安川電機の業績は堅調に拡大しています!

ロボットメーカーの安川電機とは、ACサーボモーターやインバーター、産業用ロボットなどメカトロ製品の世界トップメーカーです。産業用ロボット市場で日本シェア1位、世界シェア第4位を誇ります。2017/3期の売上構成比は、モーションコントロール46%、ロボット35%、システムエンジニアリング12%、その他6%、海外売上比率は66%。事業拠点は日本含め世界29か国、また10か国に生産拠点を有します。

主力のモーションコントロール事業は、大きく、ACサーボ・コントローラ事業と、インバータ事業から構成されています。ACサーボは、高速かつ高精度に位置を制御することを得意としていることから、例えば半導体製造装置や電子部品実装機など高い精度が求められる設備・自動機械に組み込まれています。

インバータは、モータの電源周波数を変えることでモータの回転数を制御する装置です。大型空調やエスカレータ・エレベータなどの社会インフラで使われ、省エネや生産性アップに貢献しています。

同社はこのACサーボ、インバータ共に世界シェアNo.1を誇るモータ制御のリーディングカンパニーです。また、アーク溶接ロボットの世界シェアもトップクラスで、完成車メーカーをはじめ、自動車部品メーカー、半導体・液晶製造装置メーカーなど幅広いユーザーに納入しています。

(※アーク溶接=アーク放電(電気の放電現象)を利用し、同じ金属同士をつなぎ合わせる溶接法自動車部品の溶接工程で使用されることが多く、ほかにも、建設機械、建設資材、健康機器等多様な用途で使用されます)

電動モーター技術を活かし画期的産業ロボを開発

同社は、1915年炭坑用電気品の受注生産からスタートした老舗メーカーです。「モーターとその制御」をコア技術に、「モーターの安川」、「オートメーションの安川」、「メカトロニクスの安川」と進化を遂げてきました。

電動モーター技術で成長をしてきたそんな同社に、転機が訪れます。時は1970年代の高度成長期です。自動車をはじめとする製造業で、大量生産のため24時間働くことができるロボットニーズが高まっていました。

同社は1972年に、産業用ロボット事業への参入を決めるのですが、参入の決め手となった新製品が電動モーターでの技術力を生かして作ったオール電気式の産業用ロボットでした。1977年のことです。これは日本で初めての画期的な製品として、後の日本産業ロボット業界の発展に大きく貢献しています。

このオール電気式の産業用ロボットの用途は、アーク溶接と呼ばれる技術。溶接作業は繊細な動作を伴うため、それまで職人がやっていました。ところが、高温で有毒ガスが発生する危険な作業であることから、ロボットによる代替ニーズは大きかったと思われます。

しかし、当時のロボットといえば、油圧や空気圧で動かす工作機械に過ぎず、溶接に求められるきめ細やかな作業を再現することができなかったのです。そのため溶接用途で参入しているロボットメーカーはありませんでした。だれもいないアーク溶接ロボット市場でのポジション確立は速く、翌年には黒字化、そして2003年には世界トップシェアを獲得しています。

アーク溶接技術は、製造業全般に使わることから、自動車生産向けから始まり、食品や薬など幅広い分野で展開してきています。

同社は1990年代まで、自動車用アーク溶接ロボットを主力としてきましたが、1997年に溶接ガンのサーボ化などで使いやすくした製品でスポット溶接ロボットに参入を果たしました。この分野はそれまでファナックや不二越が市場を寡占していたにも関わらず、1998年のホンダへの納入をキッカケに、マツダやスズキ、ダイハツ工業といった国内自動車メーカーでの実績を積みながら、シェアを拡大してきました。

技術面でも、アーク溶接からスポット溶接、塗装、ハンドリング、電子機器の組立、半導体分野でもクリーン・真空ロボットやウエハ搬送装置搬送など、幅広い用途のロボットを次々と開発してきました。

ところで、産業用ロボットは人の腕のような形の「多関節ロボット」と、ICチップなどの電子部品をプリント基板にのせる「電子部品実装機」に大別されます。このうち、多関節ロボットは人の腕と手の動きをするロボットで、手首に当たる部分を取り換えると様々な用途で使うことができます。

「より少ない労働力で、生産性を向上」するに必要不可欠さ産業ロボ。世界中で産業ロボ稼働数が増加!

産業用ロボットは、世界中でモノづくりの現場で年々存在感を増しています。かつては日本が安い労働力を求めて生産拠点を広げていった中国においても、日本同様少子高齢化を背景とした人手不足問題が深刻化しています。問題解決のためには「より少ない労働力で、生産性を向上」する必要があり、省力化・省人化を実現するIoTや産業ロボットの導入が活発化しているという環境になっています。

日本ロボット工業会によると、産業用ロボットの出荷額は2016年で国内外合わせて7,160億円となり、1980年の769億円から9倍の規模となっています。世界の産業用ロボット稼働台数は、1985年の13万8千台から、2015年末には163万1千台まで拡大してきました。

1980年から90年までの10年間は日本のロボット生産台数は4倍に当たる7万9千台(金額ベースで6.9倍の5,443億円)と急増しました。この時期は市場が急成長したことから「産業用ロボット普及元年」と呼ばれています。

1985年になると、米GMが日本製ロボットを採用するなどもあって、日本ロボット産業が世界トップの地位を獲得しました。この年、日本の産業用ロボット稼働台数は9万3千台で世界の67.3%を占めています。以降、海外での稼働台数増加に伴い、2015年には2割程度にまで縮小しています。いかに世界的需要が高まってきたかということです。

日本は1980年代に「ロボット大国」として世界に認められ、現在でも産業用ロボットの出荷台数・稼働台数で世界一を維持しています。産業ロボット世界4強は独KUKA社、スイスABB社、ファナック、安川電機の4社であり、同社は、ファナック<6954>とともに、産業ロボット業界で日本を代表する企業です。

産業用ロボットメーカーには、自動車向け溶接産業用ロボットに強みを持つファナックや自動車製造の分野を得意とする不二越、半導体向けクリーン産業用ロボットを強みとする川崎重工業などがあります。

ちなみに、ライバルのファナックとの違いは、ファナックが標準化による大量生産を基本戦略としていることに対し、同社は顧客ニーズに合わせた製品開発をやっているところでしょう。ファナックの粗利益率43.5%に対し、同社の粗利益率が31.4%と低いのは、顧客ごとに仕様を変えているためだと見られます。

主力事業の貢献と採算性改善で大幅増収、大幅増益に

2018年2月期上半期の業績は、主力のACサーボモータやインバータが業績をけん引しました。生産設備の自動化加速やスマホ関連向け需要が旺盛な中国を中心に海外も好調で、高機能タイプの増加などによって収益性が大幅に改善したことが営業利益を押し上げました。営業利益は前期比2倍。

同社ではこの好業績を踏まえ、通期業績を上方修正し、配当も引き上げています。第一四半期には旺盛な中国需要を取り込むべく、工場を拡張しており、19年の業績寄与が期待されます。

また、製造業における生産設備の高度化・自動化に対する旺盛な需要を受け、中国など海外を中心に、ACサーボモータ・コントローラ事業やロボット事業が好調に推移していることが業績を牽引しています。こうした好調な業績を踏まえ、同社は通期業績を上方修正しています。

旺盛な中国需要を取り込む生産能力増強計画

2017年7月、長期的に好調が続いている中国の産業用ロボット需要を取り込むべく、現地法人に新たに第3工場を増設すると発表しています。この増強と第1、第2工場の再編で生産能力は月間1,500台に拡大するとのこと。稼働開始は、2018年9月ですが、2019年までに月産3000台から5000台まで増強の計画をたてており、受注に強気なことが伺えます。今後の業績寄与に期待したいと思います。

中国での産業ロボット販売台数は、2015年の6万8556台から、2025年には11万1554台に増加すると予想されています(公益財団法人中部圏社会経済研究所)。中国では人手不足の解消や生産性向上のほか、製品の高性能化に伴って高機能タイプのニーズが更に高まっていくと思われ、今後も継続した需要が期待できると思います。

世界中で広がる省エネ・省人化施策による需要拡大を追い風に継続的な成長が期待できる

2018年2月期第二四半期の業績は主力のモーションコントロールの中国を中心とした好調や、切替需要による収益性改善などにより、大幅増収増益となりました。好調な業績を踏まえ、通期業績を上方修正し、配当金を引き上げました。また第一四半期には、旺盛な中国需要に対応すべく、現地工場を拡張するなど設備投資も積極的に行っていることも好印象です。

産業用ロボットは半導体・液晶分野や食品・医薬品分野など、幅広い分野に適用分野を広げているものの、依然として自動車分野がメインとなっています。このことから、自動車業界の設備投資増が追い風となります。自動車業界は電気自動車や自動運転車の登場と成長によって産業構造が大変革を起している時期であり、同社もその恩恵を享受することができると思います。

2017年9月末時点の財務内容は、自己資本比率が52.1%、有利子負債が350億5100万円。351億8000万円の現金等を考慮すると実質無借金経営です。また固定比率は60%、流動比率は1.85倍と、長短共に支払い能力に問題はありません。2017年3期実績ROEは10.7%と、収益性も良好です。

参考:日本株通信

※記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告無く変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、御自身の責任でお願い申し上げます。
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