金融資産を保有してない世帯は増加している
2人以上世帯が保有する家計の金融資産額の平均値は、前年と比較して73万円増加して、1151万円になりました。ただ、最も多かった2015年の1209万円と比較すると、58万円少ない状況です。平均値よりも生活実感に近いといわれる中央値は前年と比較して20万円減少の380万円となりました。中央値が最も高かった2009年、2010年の500万円と比較すると120万円も減少しています。平均値は増加、中央値は減少と間逆の動きとなっているのは、多額の金融資産を保有している人は資産額を大幅に増やした反面、全体では金融資産を減少させた人が多いことが推測されます。
なぜなら、金融資産を保有していない世帯は前年と比較して0.3ポイント増え、31.2%となっているからです。さらに銀行等の預貯金口座、または証券会社等の口座に残高がないと回答した世帯は前年比較して1.1ポイント上昇の14.1%となったのです。口座残高がないと回答した割合は、金融資産を保有していない世帯の45.1%も占めている、言い換えれば持つ者と持たざる者の差が開いているのです。
金融資産を保有していない世帯で気になるのは、60歳代、70歳代は横ばい、20歳代、40歳代は減少しているのに対し、30歳代、50歳代は2年連続して増加していることです。30歳代は非正規雇用が多いこと、50歳代は収入の減少やリストラなどが影響しているように推測されます。世代間格差から、年代別格差へと格差の形が変わり始めているのかもしれません。中でも50歳代は、老後の準備のラストスパートをかける時期。同年代としては大丈夫なのか?と心配になります。
金融資産保有世帯の平均値は100万円超の増加
金融資産額の平均値1151万円は金融資産を保有していない世帯を含めた値ですが、金融資産を保有している世帯だけの平均値は、前年比で109万円も増加して1729万円となりました。中央値も前年比50万円増加して1000万円となっています。中央値は過去最高額に肩を並べましたが、平均値は2015年の1819万円より90万円少ない状況です。金融商品別の構成比をみると、預貯金は前回より0.8ポイント減少して54.1%、有価証券(債券、株式、投資信託)は前回より1.9ポイント増え18.0%となりました。また、生命保険は前年比0.9ポイント減少して16.7%となっています。
金融資産を保有している世帯におけるNISAの平均保有額は、前年比16万円増加して183万円となった反面、ジュニアNISAを保有している世帯の平均保有額は前年比38万円減少して45万円となりました。
意外とNISAは使われていないと考えられる一方、ジュニアNISAは使い勝手の悪さから敬遠されている気がしてなりません。利用者を増やすにはジュニアNISAの抜本的な見直しが必要と思われます。
年間収入別、年齢別ともに金融資産が「増えた-減った」の割合は全て右肩上がりですが、その内訳が興味深いです。「定期的な収入が増加したから」、「定期的な収入から貯蓄する割合を引き上げたから」は共に前年と比較して2ポイント以上低下しているのに対し、「株式、債券価格の上昇により、これらの評価額が増加したから」、「配当や金利収入があったから」は共に2ポイント以上上昇しています。中でも評価額の増加は7.8ポイントも増加されています。投資の有無が金融資産保有額に大きく影響したようです。
金融資産の保有目的等について
金融資産の保有目的では、「老後の生活資金」が69.2%と最も高く、次いで「病気や不時の災害への備え」が62.8%と続いています。共に前年比では1ポイント前後低下させていますが、この2つが保有目的の双璧であることは10年以上も変わることはありません。今後保有を希望する金融商品は、預貯金が44.6%と前年と比較して2.6ポイントも低下したのに対して、有価証券の保有を希望している世帯は14.7%と前年と比較して1ポイント上昇しています。有価証券の中では、株式が8.9%、株式投資信が5.1%と共に前年と比較して1ポイント上昇しています。
反面、元本割れを起こす可能性があるが、収益性が見込まれる金融商品の保有については、「そうした商品を保有しようとは全く思わない」が80.8%と最も高くなっています。。「そうした商品についても、一部は保有しようと思っている」は15.4%しかありませんから、政府が掲げる「貯蓄から投資(資産形成)へ」はなかなか進んで行きそうにないと思われてなりません。