生命保険

商品改定は「値下げ」の歴史

自身が契約している保険商品の内容がリニューアルされたら、皆さまはどう感じ、どのように行動するでしょうか? ここでは、リニューアルから垣間見える保険会社の契約者への姿勢を考えていきましょう。

執筆者:後田 亨

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相次ぐリニューアルに戸惑いの声も

相次ぐリニューアルで不安になることも

相次ぐリニューアルで不安になることも

保険会社の新商品発売や商品リニューアルの際、いつも感じることがあります。セールスポイントが強調される傾向は当然だとしても、従来の商品に加入している人が戸惑うこともあるのではないか、と思うのです。

たとえば、主に入院に関連する「医療保障」に限っても、私が保険営業の仕事を始めた90年代後半から今日まで、様々な改定が行われてきました。
  • 入院5日目以降ではなく、「日帰り」入院から給付金を支払う
  • 70歳や80歳までの保障ではなく「一生涯」の保障が続く
  • 高額な「先進医療」に要する実費を補てんする
  • がん・急性心筋梗塞・脳卒中の三大疾病の入院日数は「無制限」で保障する
  • 三大疾病にかかった場合、以降の「保険料支払いが免除」される
  • 入院後だけではなく「入院前の通院」も保障する
  • 短期入院について「一時金」を支払う
  • 入院中の手術に限らず、「外来の手術」も保障する
わずか数分間でも、上記のような例を思いつきます。

各社が消費者の声や医療環境の変化などに、随時反応してきた結果だと見る向きもあるでしょう。一方で、新商品が登場するまでに加入していた保険の保障内容について「(相対的に)見劣りする。このままでは不安だ」などと感じる人もいるだろう、と思うのです。

また「今、入っている保険に新たに登場した保障だけ足すことはできないだろうか? 追加費用が必要な場合、喜んで払うから、見劣りする部分を新しい内容に変えることはできないだろうか?」などと考える人もいるでしょう。

実際、数年前まで300万円ほど実費がかかるガンの粒子線治療に役立つ「先進医療特約」の保険料が100円程度であることを知り、「毎月100円追加料金を支払うだけで、今の契約に先進医療特約を付加できたら……」と話すお客様とお会いするのはよくあることだったのです。
 

既契約を解約し、新規加入―――結果、保険料負担が増える結果に

とはいえ、そんなサービスをしている保険会社はまず見かけません。一般に、加入中の保険より新種の保障が付加された保険を魅力的に感じる人は、新規加入した後、既契約を解約することになります。

既契約に新たな特約が付加できる場合でも何かしら制約があり、ほしい保障だけ自在に選択できるわけではなかったりします。したがって、新しい保険に乗り換える場合は、加齢の影響で保険料負担が増えるようなことが多いのではないか、と思われるのです。

私は、このような状況は新たな保障内容をアピールすることで自社の既契約者だけでなく、他社の保険に加入中で健康状態が良好な人などに「入り直し」を促すことを重視した保険会社の都合によるものではないかと疑っています。
 

「内容が改善されても料金はそのまま」という商品もある

「既契約者が新たな保障の恩恵を無料で受けている」実例もあるからです。「都道府県民共済」です。「総合保障型 月々2,000円コース」の病気による入院保障では、1982年の発売当初、20日以上の入院をしたときに入院当初から日額1,500円(120日限度)の保障だったのが、その後改定を重ね、現在では入院1日目から日額4,500円(124日限度)の保障になっています。

「こども型」は1989年発売ですが、その後の改定により入院保障などの保障額が増額されただけでなく、発売当初にはなかった「手術」「先進医療」「がん診断」「犯罪被害死亡」の保障も追加されています。

つまり、「都道府県民共済」では料金は据え置きのまま、時代や環境の変化に合わせた保障内容の改善が行われているのです。事実上、値下げの歴史と見ていいでしょう。特に「入り直し」をすると保険料負担が重くなりがちな中高年には、歓迎される措置ではないでしょうか?

しかも、特筆すべきは商品改定が実施される際、既契約者の保障内容も新たな保障内容に自動的に移行される措置が、これまで取られてきたことだと思います。既契約者にはとてもありがたく、良心的だと感じられる対応だと思います。
 

リニューアルから垣間見える契約者への姿勢

保険商品のリニューアルは、各社とも10年も経たない間に行われることが多いと認識しています。時に「一生涯の保障を数年おきに買い替える」ことになる人もいるかもしれません。

読者の皆さまには、新商品発売時の既契約者への対応から、保険や共済のあり方を問う視点も持ってほしいと思います。それは、商品やサービスの進化につながるはずなのです。


※この記事は、掲載当初協賛を受けて掲載したものです。
 
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