飛行機を利用してのダイビングツアーの場合は、スケジュールを組む際に注意が必要です。
ダイビング後はなぜ飛行機の搭乗までの時間をおかなくてはいけない?
ダイブコンピュータで深度や時間、浮上速度などをチェックしながら潜ります。
「飛行機に乗る前に買ったお菓子を機内で食べようとしたら、袋がパンパンに膨らんでいた」
「機内で飲んでいたペットボトルを、飛行機を降りてから確認してみたら、クシャッとへこんでいた」
「飛行機が上昇するときや下降するときに、耳に不快感を感じた」
これは飛行機内の気圧の変化によるもの。地上で1気圧(大気圧)となっている大気の圧力は、飛行機が上空に行くにしたがって、どんどん低くなります。そのままでは人間の体は耐えられないため、機内の気圧を調節する装置で陸上に近い環境がつくり出されていますが、まったく同じというわけにはいかず、やはり1気圧よりも低い気圧となります。そのため、上空では地上に比べると気体が膨張し、密閉されている袋が膨らんだり、耳が詰まったような感覚になるのです。
スキューバダイビングでは、主に空気の入ったタンクを使用しますが、圧力(水圧)が増えるのに伴い、呼吸する空気に含まれる窒素が、体内の細胞に溶け込んで蓄積されます。深ければ深いほど、水中にいる時間が長ければ長いほど、体内に溶け込む窒素は多くなります。浮上して圧力が減ると、余分な窒素は細胞から溶け出し、血流に乗って肺に運ばれ、吐く息と共に体外に排出されるのですが、体内に溶け込んだ窒素の量が多く、浮上による気圧の変化に窒素の排出スピードが間に合わない場合、血液や細胞の中に窒素の気泡が形成され、「減圧症」を発症する危険があります。減圧症になると、マヒやしびれ、関節や手足の痛み、ひどいときには意識不明や死に至ることもあります。
ダイバーは、ダイブテーブルやダイブコンピュータを使用して、体内に溶け込む窒素の量を限度内に留めるようコントロールしますが、これはあくまでもダイビング後に海抜0m(大気圧)の状態で過ごすという考えに基づいたもの。ダイビング直後に飛行機に乗るということは、体内に窒素が溜まっている状態で、急に気圧の低い場所に行くことなり、「減圧症」のリスクが高まります。ダイビング後は十分に時間をとり、しっかりと体内の窒素を排出してから、飛行機に乗る必要があるのです。
ダイビング後の飛行機搭乗ガイドライン
では、ダイビング後にどれくらい時間をあければ、飛行機に乗っても問題ないレベルまで窒素を排出することができるのか。以下のようなガイドラインが定められています。1回だけダイビングをした場合
-飛行機に乗るまでに、少なくとも12時間待つ。
1日に複数回、または数日間にわたって毎日ダイビングした場合
-飛行機に乗るまでに、少なくとも18時間待つ。
上記は、体内に蓄積された窒素量がいつでも水面に直接浮上できる範囲内でダイビングを行なった場合で、その範囲を超えて「減圧停止」が必要なダイビングをした場合は、
-飛行機に乗るまで、18時間よりもさらに長く待つ。
とはいえ、これらはあくまでも推定値であり、これを守れば絶対に減圧症にならないというものではありません。余裕を持った日程を組み、できれば「ダイビング後、飛行機搭乗まで24時間以上あける」のがベスト。せっかくのダイビング旅行、水中だけでなく、観光やショッピングで陸上もたっぷりと楽しむことをおすすめします。
飛行機だけじゃない、車での高所移動にも要注意!
実はダイビング後の高所移動について注意が必要なのは、飛行機を使ったダイビングツアーだけではありません。車を利用したダイビングツアーでも、ダイビング後の移動には注意が必要です。特に日本は山が多いため、ダイビングエリアに車で向かうのに、山を越えたり、高地を移動するということも少なくありません。例えば伊豆半島から小田原へ戻るルートで利用される「箱根ターンパイク」は標高1,025m、国道1号線の箱根峠で標高846m。高速道路で沼津から東京に帰る際も、御殿場で標高454mあります。NOAA(アメリカ海洋大気局)では標高300m以上が高所となっているため、車でのダイビングツアーでこうしたルートを利用する場合は、その前に十分に時間をとって窒素を排出してから、移動することが推奨されます。
ちなみに、高所移動後のダイビングについては、特に時間的な問題はなく楽しめますが、体調面なども考慮してスケジュールには十分に余裕を持ち、ダイビングを楽しんでくださいね。
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