広辞苑にも掲載される富山弁

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広辞苑にも掲載される富山弁

正直に言えば、富山県出身者ではない筆者が方言を紹介するなど地元の方に首をかしげられるかもしれません。ですが、旅の者(県外者)であるからこそ、耳に残る富山弁の代表的な例を紹介できるという面もあるはず。
まずは辞書に掲載されている、ある種の「市民権」を得た方言からいきましょう。富山弁にはたくさんの言葉がありますが、そのうち4つが『広辞苑』(岩波書店)の第6版に掲載されています。
「きときと」(新鮮な)
「うまそい」(丈夫そうである)
「へしない」(遅い、待ち遠しい、まだるっこい)
「はらうい」(腹がいっぱい、苦しい)

この中で筆者が頻繁に耳にする言葉が「きときと」。富山の魚を表現する際に頻繁に使われる言葉で、「新湊きっときと市場」という観光漁港の名前にも使われるほどですね。
その他は富山県民に聞いてみても、知っている人・知らない人がばらばらの状態でしたが、富山県でも呉羽山という山を隔てて西部と東部で言葉が異なっていますので、仕方ないのかもしれませんね。

富山県方言番付表の横綱は?

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富山県方言番付表

富山県には、富山県商工会議所と富山県観光連盟が2006年に作成した富山県方言番付表という一覧もあります。相撲の番付表のように富山県の方言を横綱、大関、関脇、小結などとランク付けした表ですね。
使用頻度や言葉のインパクトなどを評価基準に番付を作成したのだと予想されますが、横綱と三役に選ばれた方言は以下の通りになります。
〇東
横綱「きのどくな」(ありがとう)
大関「だら」(ばか)
張出大関「また、こられ」(また、いらっしゃい)
関脇「つかえん」(かまわない)
小結「だいてやる」(おごってやる)

〇西
横綱「きときと」(生き生き)
大関「まいどはや」(こんにちは)
張出大関「いとしい」(かわいそう)
関脇「こーりゃく」(手伝い)
小結「うしなかす」(紛失する)

どれも特徴的な方言ですね。「きのどくな」に関しては、富山に来て間もないころ、年配の女性に連呼されて「何が気の毒なんだろう」と不思議に思った思い出があります。

本当にキュンと来る富山弁とは?

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キュンとくる富山弁とは

ただ、上述してきた富山弁は、ある意味で単語レベルのお話。標準語の基準で考えると意味が分からない、意味の違いが大きい単語がメインになります。
そうした言葉の面白さももちろん大変に興味深いのですが、冒頭で紹介したように耳にしてキュンと心をくすぐられる方言かと言えば、ちょっと疑問も残ります。
本当に心に残る富山弁は、むしろ単語というよりも言葉のイントネーションや語尾、感情表現に目立ちます。
一例としてはアニメ『うる星やつら』のラムちゃんを連想させる富山弁の語尾「ちゃ」。
「よかったちゃ」(よかった)
「そうやちゃ」(そうだよ)

といった使い方で登場する「ちゃ」ですね。上述の富山県方言番付表でも、「ちゃ」は富山県民の「得意技」として紹介されています。
他には「られ」。富山県方言番付表では、
<尊敬の助動詞を親愛ややさしさの表現として使う>(富山県方言番付表より引用)
とあるように、
「また来られ」(また来てね)
「気ぃつけられ」(気をつけてね)

といった表現として使われます。
語尾やイントネーションではないですが、ある種の感情を表現する富山弁の否定語句として「なーん」も代表例。例えば何かを勧められたとき、
「なーん、いらんちゃ」(いえ、要らない)
といった感じで使う富山弁ですね。否定語句とは思えないほど優しい「なーん」の響きはとにかく平和的で、その愛らしい方言を「Naaan」とTシャツにする業者もあるほど。
富山の旅行では、現地の人に何かを質問したとき不意に「なーん」と出てくるはず。その瞬間を聞き逃さないように、会話をじっくりと楽しみたいですね。

以上、富山県の方言を紹介しましたが、いかがでしたか? 旅の予習の前に覚えて、富山旅行で思い切って使ってみるといいかもしれません。一気に地元の人と距離が縮まるはずですよ。

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