石田陽子の恋愛コラム

自分を見失うほど激しい恋と穏やかな恋どちらがいい?

思わず酔いしれてしまうほどの激しい恋に出会えるのは素敵なこと。もともとドラマチックな恋に憧れる人もいますし、夏は恋心が加速しやすい季節です。ただ、激しい恋にはリスクがあり、恋愛以外の大切なものを手放すことになったり、純粋な愛情が嫉妬に変わったり、大変なこともあります。ドラマチックな恋に飛び込む覚悟、あなたにはありますか?

石田 陽子

執筆者:石田 陽子

恋愛ガイド

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激しく情熱的な恋愛に憧れしまうあなたへ

海辺の生と死

出会いが鮮烈であればあるほど気持ちは止まらない (C)2017 島尾ミホ / 島尾敏雄 / 株式会社ユマニテ


日々の課題を淡々とこなしたり、無難な毎日を送っていたりすると、「恋愛ってなんだろうと思うくらい、素敵な出会いがない」「付き合ってはいるけれど、ときめかない。本当にこの人でいいのかしら」ということに悩んでいたりします。

実際、思わず酔いしれてしまうほどの美しく激しい恋愛に出会えること、そして、そんな恋に身を捧げて生きるのは、きっとその人の人生において素晴らしい体験です。そんな恋に憧れてしまう人は少なくないでしょう。

・ビビッと来てひと目で激しい恋に落ちてしまう
・ジェットコースターのように乱高下する激しい恋愛事情
・いけないと思っていても落ちてしまう恋
・運命を感じるようなひと目ボレ

――例えばそんな激しい恋に生きた場合、少なからず、恋愛以外の自分にとって大切なものを捨てなければならないこともあります。純粋に愛すれば愛するほど、負う傷は深くなるというリスクも含めて、その覚悟があるかどうかとも言い換えられます。

映画を元に、考えてみましょう。


自分を見失うほどひかれてしまったら


今回の題材は、はかない恋の一瞬のきらめきを描いた恋愛映画『海辺の生と死』(7月29日公開)です。

主人公のトエは、加計呂麻島の旧家である大平家の一人娘として育てられ、国民学校の代用教員をしていました。その島に特攻艇隊の隊長としてやってくるのが朔中尉です。

軍歌よりも島唄を歌いたがる軍人らしくない朔中尉は、島の子どもたちに慕われ、トエも心惹かれていきます。二人は恋に落ち、部隊近くの浜辺で深夜の逢瀬を重ねます。さらに頻繁に手紙のやりとりで思いを伝え合っていました。そんな中、ついに朔中尉にも出撃する日がやってきます。

このように、特別本人が強く求めていなくても、思いがけず強烈な出会いが訪れることがあります。

「初めて会った、偶然出会ったのに、なぜか波長が合う」というのは恋愛が始まるきっかけとして重要で、もともと恋愛に没頭しやすいタイプの人だったら、暗示にかかるように気持ちを持っていかれてしまうこともあるでしょう。

また、恋が芽生えやすい非日常の空間というのは存在します。たとえば、美しい夏の海辺だったり、自分の存在さえ小さく感じられる圧倒されるような自然の中だったり、生と死の境界線が曖昧な神様の存在を信じたくなる場所のことです。

婚活用の無難な服とパンプスで出会うのと、開放的な海辺で裸足で出会うのとでは、第一印象だけでなく気分さえ違うでしょう。本気で激しい恋に身を投じたいと考えるのであれば、そういう場所に身を置いてみてもいいかもしれません。


激しい恋に落ちた際の注意点


とはいえ、陶酔できるような恋愛は非常に危険です。なぜなら、それは日常と離れた場所にあればあるほど、その恋愛に酔いしれることができるから。感情の波にどっぷりと浸かれるということは、現実の生活からの乖離も意味します。また、すべての人が恋愛に陶酔できるわけでもありません。

ヒロインのトエは島の中で旧家のお嬢様として大切に育てられ、おだやかに暮らすはずでした。「他の島の人と縁を結んではいけないよ」という昔からの言い伝えに背き、恋におちたことで彼女はしなくてもいい苦労、精神的につらい思いをすることになります。

自分の意志で素晴らしい恋に身を捧げた人生ですが、純粋で深い愛情は強い嫉妬や激しい修羅場を招く危険もあるのです。狂おしいほどの恋心が報われるとも昇華されるとも限らないのが現実。恋にすべてを捧げてしまう人生に憧れ、マネしたいと思うかはあなた次第です。


自分を見失うほど激しい恋と穏やかな恋どちらがいい?

トエの止められない激しい恋情を知り、あなたには、恋に生きる覚悟はありますか?

ドラマチックな恋に憧れる人もいますし、それはもちろん素敵ですが、実際はそれなりに大変なこと、傷つくことが多いのです。

逆にいえば、目の前にいるけど恋愛対象として見ていなかった相手、おだやかすぎてドキドキもときめきもない身近な人との縁だったら、自然にゆっくりと良い関係を築いていけるかもしれません。

周囲の人が反対するどころか「◯◯さんとか、どう?」「お似合いなんじゃない?」なんて、すすめられてピンとこなくても、一緒にいることが当たり前のようなそんな人となら、日常の幸せをたくさん見つけていけそうです。

「恋愛とはこうあるべき」という思い込みだけで貴重な出会いを見逃すことのないように、自分が求めている縁について考え直してみませんか?

いずれにしても人生は一度きりです。小説や映画、ドラマなどで「自分だったら、どうするだろう?」とシミュレーションしておくことをおすすめします。


作品情報『海辺の生と死』

海辺の生と死

はなかい恋の一瞬のきらめきを描いた恋愛映画『海辺の生と死』 (C)2017 島尾ミホ / 島尾敏雄 / 株式会社ユマニテ


出演:満島ひかり、永山絢斗、井之脇海、川瀬陽太、津嘉山正種
脚本・監督:越川道夫
原作:島尾ミホ「海辺の生と死」(中公文庫刊)島尾敏雄「島の果て」ほかより
配給:フルモテルモ、スターサンズ 
7月29日(土)テアトル新宿ほか全国順次公開
(C)2017 島尾ミホ / 島尾敏雄 / 株式会社ユマニテ


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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