築30年ともなるとあちこち手を入れて直す必要が生じてくるものです。建て替えかリフォームかの選択は慎重に行いたいものです。
そこで今回は、リフォームと建て替えで悩み、その結果リフォームを選択されたAさんの事例を元に、その分かれ道やチェックポイントなどをご紹介いたします。
実は建て替えを考えていたAさん
築32年を迎えた4LDKの一戸建てをお持ちのAさん(60代男性)は、奥様(60代)とお母様(80代)の3人で暮らしています。子どもたち(長男30代、長女20代)はすでに独立していますが、久しぶりに家族全員が揃った機会を見計らって、Aさんは話を切り出しました。子どもたちはそれぞれ結婚しており、長男夫婦は職場に近いマンション、長女夫婦はすでに一戸建てのマイホームを取得済みであることから、Aさんは思い切ってこの家を建て替えたい旨を家族に打ち明けたのです。
長女は了承してくれましたが、長男からは異論が出ました。「今は元気だから心配ないのかもしれないけど、実は建て替えって婆ちゃんにとって負担にならないのか。それに今から建て直すとしてあと何年住めるのか、そして俺たちに引き継ぐ時が来た時に、負の資産になるような選択だけはしないでほしい」
あと20年、健康に暮らすためのリフォーム
新たに家を建て直すには解体費用の他、仮住まい費用、引っ越し費用もかかります。そもそもAさんが建て替えに憧れていたのは、高齢の母親や自分たちが夏涼しく冬暖かい暮らしをしたかったからです。確かにその希望を叶えるためであればリフォームでも十分です。この後、Aさんたちは「あと20年健康的に暮らすためのリフォームを予算750万円以内で実施し、いずれ子どもたち相続させる際には、長男家族がマンションを売却してこの家をさらにリフォーム、あるいは建て替える」という結論に至りました。そして、もし相続が発生した時点で長男も長女もこの家に戻ってくることができない事情が生じた場合には、この家を売却するという方向性まで話し合いました。Aさんのお住まいが駅から徒歩20分程度の利便性の良い場所であることから、将来の不動産売却の見通しも立てやすそうです。
現在と未来を見据えての計画立案が重要!
わが国にはおよそ700万~800万もの空家があると言われます。将来を見据えた計画があったらもっと違った結果になっていたことでしょう…。
リフォームにするか建て替えにするかを考える上で、チェックポイントは5つほどあります。
1. 資金力(自己資金やローン計画)
そもそも建て替えにもリフォームにも資金が必要です。ローンを利用するとなると、ご自身の年齢条件によっては長期間のローンが利用できなかったり、親子ローンを設定する必要があったりなど、事前に自分の資金力(信用力)を知っておく必要があります。
2. 現在の住まいの問題点(住み替えもしくはリフォームの動機)
漠然と「新しい家に住みたい」というのも一つの動機になりますが、やはり現在の住まいに何らかの不具合や不満があることがきっかけですので、新居もしくはリフォーム後はどのように暮らしたいかを一度整理しておきましょう。
3. 建て替え費用とリフォーム費用の比較(予算の把握)
上記1と2がまとまったら、実際にどのくらいの費用が必要になるのかを実際に工事業者に聞いてみましょう。工事業者であれば、建て替えるかリフォームするかを決定する上で、費用面だけでなく構造や間取り上のポイントなども教えてくれるはずです。
4. 居住者の増減(同居する家族はいるか)
自分だけが住むのか、それともいずれ子どもたちが同居するのかといった、現在だけでなく将来の居住予定者の有無は、建て替え・リフォームのどちらにしても重要な検討事項です。費用にも影響する大きな部分といえます。
5. 資産価値(相続や売却)
相続が必要になったとき、あるいは建物と土地を処分しなければいけなくなった時に、資産価値があるかどうかは非常に重要な問題です。一般的には築年数が古くなれば資産価値は減少し、建物を解体して更地にしないと売却できないといったケースも少なくありません。
以上ポイントをご紹介しました。他にも家族ごとに事情が違ってくると思いますが、まずは安易に建替え、リフォームという結論を出す前に、上記5点について振り返ってみて、上手な住まい計画を立てていきましょう。