住みたい街 首都圏/住みたい街の見つけ方

カフェのあるまち、喫茶店のあるまちの違いは?

複数のまちを歩いてみると違いに気づくことがある。そのひとつがカフェのあるまち、喫茶店のあるまち。特に喫茶店のあるまちに注目してみると、そのまちがどんなまちなのかが見えてくる。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

カフェと喫茶店の違いは?

最初にそもそもカフェと喫茶店はどこが違うのかについて書いておこう。と書くと、何か法令的に違いがあると思われるだろうが、実はない。特に名称には意味がない。なぜか。

飲食を提供する店を開業するためには保健所に営業許可を得る必要があるが、カフェ、喫茶店の場合には2種類のうちのいずれかを選択することになる。ひとつは喫茶店営業。これは「喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲物または茶菓を客に飲食させる営業をいう」と定義されており、酒類、食事は提供できないことになっている。純粋に喫茶だけである。

ナポリタン

喫茶店ランチの定番、ナポリタン。場所によっては和定食がある喫茶店も

だが、多くのカフェ、喫茶店は種類、食事も提供しているのはご存じの通り。昔懐かしいモーニングセットがあったり、ピラフやナポリタンは喫茶店の定番メニューだし、カフェだったら、いわゆるカフェ飯だ。このように食事や酒類を提供する場合には、喫茶店営業ではなく、飲食店営業という許可を申請することになる。だから、食事を出している店は喫茶店と言いながら、実は飲食店営業。カフェも同じで、店名がなんであろうと、営業許可とは関係ない。

だとしたら、飲食店許可を取ったほうがいろいろできていいんじゃないの?と思うが、中にはお湯が出ない、シンクが2つないなど、保健所の決めた要件を満たせないことがあり、その場合に喫茶店営業になる。ちなみに飲食店営業で可能になる飲食店には食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、弁当屋、レストラン、カフエー、バーなどがあり、かなり幅広い。

喫茶店は古いまち、高齢者が多いまちにある

古い喫茶店

千葉県の常盤平団地の中にあった古い喫茶店。団地の1階にある喫茶店も多い

というわけなので、この記事ではまず、喫茶店を独自に偏見に基づいて定義する。基本、チェーン店以外の個人営業とし、カフェという単語が一般化し始めた2000年以前から営業していること。カフェラテではなく、カフェオレ(場合によってはミルクコーヒ)を提供し、できればウィンナコーヒーもあること。テラス席はなく、新聞、雑誌などが置かれていること。チェーン店でもここまでの要件に当てはまる店があるが、数はそれほど多くないと思われるので、ここでは無視する。

では、こうした店がどこにあるか?

カド

浅草ではなぜか、くるみパンが名物のこの店も知る人ぞ知る老舗喫茶店

2000年以前を喫茶店としたことから分かるように、古いまちである。そして、公共財団法人全国生活衛生営業指導センターのホームページによると、喫茶店消費の中核となっているのは50~70代の中高年ということから、高齢者の多いまちであることも分かる。たとえば、江戸時代からの繁華街、浅草には創業70年以上というAngelus(アンヂェラス)があるし、日本橋には大正8年創業の喫茶去快生軒がある。

意外にも高齢者が多いオフィス街にも喫茶店は生き残っており、大手町ビルの地下にはスターバックスや日本茶カフェを並んで、老舗ルナ、サンマリがあるし、日比谷には昭和32年創業、ピザトースト発祥の地として知られる珈琲館 紅鹿舎がある。

もちろん、住宅街にも点在している。再開発が始まろうとしている京成立石駅前にはカフェと言いながら、思いっきり昭和の喫茶店カフェ・ルミエールがあるし、三ノ輪橋駅近くには白鳥(はくちょう)。歩いてみると分かるが、下町では地元の人のたまり場になっているような喫茶店があり、モーニング、ランチと居続け、最後にビールを飲んで帰るという人なども。今風のカフェがそうした場になっていないのは、営業主体が個人か、そうでないかという違いだろう。

下町以外では開発年代が古い中央線沿線、ちょっと離れるが熱海なども喫茶店の多いまち。中央線では国立にある昭和28年創業、料理メニューが充実しているロージナ茶房やミニヨン(荻窪)、ネルケン(高円寺)のような名曲喫茶など、個性的な喫茶店も。ちなみに名曲喫茶は昭和30年前後に登場、その後、ジャズ喫茶、シャンソン喫茶、歌声喫茶など音楽メインの喫茶店が続々と誕生した。だが、残っているのはずいぶん少なくなった。その後、昭和54年頃の、インベーダーゲームの流行った時期にはゲーム喫茶なるものもあったが、最後に見たのは10数年前だ。

カフェは若い人が集まる、多いまちにある

カフェ飯

カフェ飯といえば彩りが良いのが特徴。喫茶店ランチと比べると華やかだ

続いてカフェはどこにあるか、である。喫茶店がどちらかと言えばレトロな方々に愛される場であるのとは逆に若い人が多い場所と考えれば良い。ついでに言えば、どことなく、おしゃれな雰囲気(死語)のあるまちだろう。実際、原宿、表参道や恵比寿などにはよく知られた店が集まっている。

ちなみに2017年5月末現在で見ると、スターバックスの店舗が多いのは港区(39)、千代田区(41)などの都心部、繁華街のあるエリアで、逆に少ないのは江戸川区(1)、葛飾区(2)、足立区、北区(いずれも3)など下町エリアとなっている。

ストリーマコーヒー

東急東横線の高架下、学芸大学駅と祐天寺駅の間にあるカフェ

住宅街のあちこちでも見かける場合も、若い人が多いまちが中心である。まちの歴史及び住民の年齢層が喫茶店があるのかか、カフェなのかで分かるというわけだ。

大森

個人的には気になって仕方ない大森にある喫茶店。昔風のケーキが用意されている店も多い

加えて、まちでそうした店を見かけたら、自分が利用できるかどうかをチェックしてみるのも面白い。年代的に馴染めるかどうかはもちろん、一人暮らしであれば、食事もできる喫茶店、カフェがあれば嬉しいし、我が家の延長としてくつろげる場があれば、部屋が多少狭くても我慢できる。人間関係が生まれやすい場でもあり、まちでの暮らしを楽しくしたいなら、カフェや喫茶店(この場合はどちらでも)は使えるはずなのだ。


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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