ネズミからキツネを介して人にも感染するエキノコックス症

キツネ

感染したキツネの糞便には注意しましょう(イメージ写真)

エキノコックス症とは、包虫症とも言い、エキノコックスという寄生虫によって起こる感染症です。エキノコックスの幼虫である包虫が人の身体に侵入して、肝臓、肺、腎臓、脳などの中で包虫が発育することで本来の臓器の機能が低下します。

エキノコックスの成虫は、キツネだけでなく、イヌやネコなどのペットにも寄生することがあります。感染経路は以下の通りです。

  1. 虫卵を食べたネズミの体内で幼虫になる
  2. そのネズミを食べたり、口に加えたりしたイヌやキツネに感染する
  3. イヌやキツネの体内で成虫となったエキノコックスが虫卵を産み、それがキツネやイヌの便に混入する(感染したキツネやイヌは無症状なことが多い)
  4. 人が何らかの原因で、便に含まれる虫卵を摂取する
上記のような感染経路で人の経口感染が成立します。

体内にエキノコックスを持っているキツネやイヌであっても、触るだけでエキノコックスに感染するわけではありませんし、飛沫感染もしません。とはいえ、エキノコックスを持っているキツネやイヌの皮膚には、糞便などからの虫卵がついている可能性があります。予防法として後述しますが、やはり触った後には入念に手洗いをすることが大切です。

エキノコックス症の潜伏期間……症状が出るまでに5年以上も

エキノコックスは「単包性エキノコックス」と「多包性エキノコックス」に分類されています。単包性エキノコックスは世界的に分布しており、多包性エキノコックスは北半球に分布するため日本では北海道に多く見られますが、北海道だけに限らない可能性もあります。北海道では毎年数十人の発生が見られています。

体内に入った虫卵は、幼虫である包虫になり、主に肝臓で発育し、増殖して、1つの塊(嚢胞)になっていきます。そのため、検査時に肝がんなどと間違われる可能性もあります。肝臓だけでなく、肺で発育し増殖すると、結核や肺がんなどと間違われるケースもありますが、はっきりとした症状が出るまでに5~15年かかり、それまでは無症状です。

エキノコックスに感染したら…エキノコックス症の症状

エキノコックスは、寄生する臓器によって表れる症状が異なります。

肝臓に寄生すると、肝臓が大きくなり、腹痛、胆管炎などが見られ、寄生虫の入った袋(嚢胞)が破裂して、腹部内に寄生虫がばらまかれることになります。肝臓で大きくなると腹痛、黄疸などが見られ、血液検査で、AST、ALTなどの肝臓に含まれる酵素が上昇する肝機能障害が見られます。さらに、胆管にも影響が及ぶと黄疸、肝機能の低下により体の浮腫や腹水が溜まります。肺に感染した場合は、呼吸困難や咳症状が起こり、脳に感染した場合は意識障害や痙攣が起こります。

エキノコックス症の検査法・診断

エキノコックスに感染しているかどうかは、まず北海道に居住したことがあるかどうか、野生のキツネやイヌなどと接触したかどうかが重要になります。特に、エキノコックスが流行している、または発生している地域に住んだことがある場合に、野生のキツネや犬などの糞が土壌にある可能性があります。

血液検査を行い、エキノコックスに対する抗体が陽性であれば、感染している可能性があります。本当に寄生虫がいるかどうかは、肝臓などを中心に超音波検査やCT検査などの画像検査を行い、水を含む塊である嚢胞にエキノコックスが含まれる塊があるかどうかを見ます。嚢胞があった場合、切除した上で、寄生虫の有無を確認します。がん検査で行われる針を刺して組織の一部を採取する生検検査は、エキノコックスの疑いがある場合はすすめられません。嚢胞を針で潰してしまった場合、中に入っている寄生虫がお腹の中にばらまかれて拡がることで、根治が難しくなるためです。

感染が疑われる時には、北海道立衛生研究所または国立感染症研究所の寄生動物部で相談するとよいでしょう。

エキノコックス症の致死率・治療法は外科手術が基本

現時点では、外科的に寄生虫を含む塊の切除が最適とされています。切除できない時には、5年で70%、10年で94%の死亡率となります。アルベンダゾールと呼ばれる駆虫薬を使用します。

感染が判明した時点でしっかりと治療しないと、高確率で再発します。

手塚治虫氏の医療漫画『ブラック・ジャック』では、ブラックジャック自身が変異エキノコックスに感染し、自ら手術するシーンがあります。

エキノコックスの予防法を知って感染を防ぐことが大切

エキノコックスの予防法は、手や野菜などについた虫卵が口に入らないようにすることです。エキノコックスの虫卵は、直径約0.03mmで、肉眼では見えません。エキノコックスに限らず、多くの寄生虫に感染しないためには下記のような対策をしましょう。
  • 野山などにから帰ったら、石鹸を使ってしっかりと手を洗う
  • 衣服や靴についた泥をしっかりと落とす
  • 沢や川などの生水は飲まない
  • 山菜や野菜、果物などはよく洗って食べる。可能なら加熱する
  • ペットのイヌを放し飼いにしない。野山などで放さない
  • 野犬や野生のキツネに近づかない
基本的なことですが、感染予防には手洗いが最も有効です。
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