よりEVに近づいた三菱アウトランダーPHEV
三菱自動車のフラッグシップモデルであるアウトランダーPHEVがマイナーチェンジを受けた。
ひと言でいうと、「よりEVに近づいた」というのが最新モデルの特徴。充電可能なハイブリッドであるPHEV(PHV)システムが世界でもトップクラスといえる状況にまで進化しているのを実感できた。
改良前のアウトランダーPHEVは、バッテリーに電気を貯めるため、優先的に(比較的早く)エンジンを始動させている印象を受けたが、改良後は、一般道はもちろん、高速道路に入ってもエンジンがかかりにくくなった。
機能面でも従来からあるバッテリーセーフモード、バッテリーチャージモードに加えて、可能なだけエンジン始動を抑制するEVプライオリティモードが新たに設定されている。
なお、高速道路の法定速度まで加速してもEV走行が可能で、120km/hまでモーター走行ができるのは変わっていないが、改良前よりもよりモーター走行の頻度が高まり、距離も長くなったのが確認できた。
エンジンが始動するのは急な上り坂や、かなりの加速をした時で、高速道路を含めて流れに乗って走る分にはほぼEVとして機能する。つまり、夜間の安い電気代で充電し、その電力でEVとして走行するというPHEV(PHV)の理想に近づいたという印象だ。山の上に住んでいない限りほぼEVとして使えそうだ。
急速充電の時間を約5分短縮
このモーター走行のスムーズさは一度体感してしまうと忘れられない人も多いはずで、経済的な面からではなく、急速充電をしてEV走行のフィーリングをできるだけ味わいたいというニーズもあるだろう。
改良後のアウトランダーPHEVは、約80%までの急速充電時間を約30分から約25分にまで短縮している。アウトランダーPHEVは、当然ながらハイブリッドでもあるので電池切れになってもガソリンが残っていれば走行できるが、モーター走行をより楽しめる充電面の体制がより充実したのは朗報だ。時間課金制の急速充電器を使った際の負担軽減にもなる。
乗り心地や操縦安定性では課題も
よりEVに近づいた利点がある一方で、大型バッテリーを積む弱点がハンドリングや乗り心地の面で明らかに感じられる。実用面では、荷室を開けると床面が「上げ底」になっているのが分かるくらいであるのと、3列シートの設定がないくらいだ。
しかし、リヤの床下に重い重量物(バッテリー)が積まれているのが原因と思われる路面からの大きな突き上げ、常に感じられる細かな上下振動が気になる点で、アウトランダーPHEVに限らず電動化車両のネガだろう。
また、コーナリング時にハンドルを切った際にワンテンポ遅れて曲がっていくクセも少々気になるところ。さらにいえば、こうした曲がりにくさがあるうえに、直進安定性ももう少しもの足らないのは惜しい。
ガソリン車をベースとした現行アウトランダーPHEVだけにこうした乗り味の課題があるのは仕方ないところで、それを補って余りあるプラグインハイブリッドEVとしての魅力を備えている。予算が許せば一度乗っておきたいPHEVだ。