カフェ/三軒茶屋・駒沢・下北沢・荻窪のカフェ

ki、珈琲とお菓子「き」で読書にふける(世田谷代田)

世田谷代田駅から徒歩1分、あるいは下北沢からぶらぶら散歩して10分。白い森のような空間に、女性店主がハンドドリップするスペシャルティコーヒーと、マメトラ菓子店のお菓子。そこは静かな読書の楽園です。

川口 葉子

執筆者:川口 葉子

カフェガイド

「き」の入口の小さな黒板

「き」の入口の小さな黒板


ある午後、駅のそばの小さなコーヒーショップで和んでいたときのこと。窓の外に時ならぬ粉雪が舞いはじめ、ちょっと驚いて空を見上げていたら、庭かけまわる犬のように小走りにやってきてドアを開けた人がいました。

それはすぐお隣のカフェ「ki」の店主、片山祐子さんでした。雪が嬉しくて隣人に伝えたくなっってしまったのそうです。いつも白を着ている片山さん。粉雪を背景に、その白が一瞬はっとするほど眩しく見えました。

ki(き)=木


kiの店内

kiの店内


「き」という不思議な名前のカフェが誕生したのは2013年のこと。ガラス張りの店内は、椅子もカウンターも天井も床も、白。とにかく真っ白です。駅のそばの静かな住宅街にこのハコを見つけた片山さんは、「白い森のような空間にしよう」と思ったのだそうです。

マメトラ菓子店の焼き菓子たち

マメトラ菓子店の焼き菓子たち


その白い空間に、一杯ずつ抽出するコーヒーと、「マメトラ菓子店」がkiのために作るオリジナルのスイーツ。あまりにも清潔ですっきりしていると、逆に落ち着けない人もいるのでは……と思いきや、女性たちも年配の男性たちも、心おきなく読書に集中できる場所として、あるいは笑顔の可愛い片山さんと言葉を交わすのが楽しくて、このカフェを愛用しています。

白い森のような空間づくり

kiのために作られたイチゴとバナナのパウンドケーキ。自家製はっさくシロップを使ったはっさくティーとともに

kiのために作られたイチゴとバナナのパウンドケーキ。自家製はっさくシロップを使ったはっさくティーとともに。


片山さんがこの物件を決めたポイントは、静かな環境であること、大きな窓から光がふんだんに差し込むこと、そして隣室に飲食店勤務時代の同僚が開いた「マメトラ菓子店」が厨房を構えていること。デザインオフィス「イド」に依頼してイメージを伝え、シンプルに徹した空間が完成しました。

白い森を構成するのは、木ではなく鉄。6人がけのテーブルの焦げ茶色の脚がそのまま上部に伸びて幹となり、枝となって、パーティションの役割を果たしています。人々はテーブルを共有しながらも、一人または二人のパーソナルスペースに座っているような安心感を得ることができるのです。

ki 店内

ki 店内


片山さんの自宅のクローゼットの中も、少し前まで白一色だったとか。その理由は「白い服なら、染みをつけても漂白すれば白に戻れるから」。kiの店内も時が経つにつれ、どうしてもコーヒーの痕跡などが残っていきますが、その部分だけをまめにペンキで修復して清潔な白を保っているのです。

カフェを長く続けるために

レモンのお菓子を見ると注文せずにはいられ

レモンのお菓子を見ると注文せずにはいられないので…ウィークエンド・シトロン。


こんなに小さな店舗で午後からのオープン、お茶とお菓子だけでは経営が大変なのでは……というのは全くの杞憂で、大学時代に経営やマーケティングを専攻し、卒業後は自らのカフェ開業のために飲食店の立ち上げなどに関わってスキルを身につけてきた片山さんは、賢明な解決策を見出していました。
コーヒーを抽出する片山さん。この日は「白一色だと写真が困るかなと思って…」と赤を着てくれました。

コーヒーを抽出する片山さん。この日は撮影用に赤を着てくれました。(白い空間に白服は難しい)


「カフェで利益を上げるのが難しいのは充分に理解していました。だから午前中は他の仕事をして、午後からカフェを開店する。そうすれば赤字を心配せずにゆったりと続けていけると考えたんです。カフェで利益を上げようと必死になると、作りたい空気が作れなくなってしまう」

その素敵な覚悟が、白い森に優しい居心地の良さを生み出しているんですね。

読書の楽園

テーブルに置かれたお店のノートには、kiの切り絵を残していくお客さまも!

テーブルに置かれたお店のノートには、kiの切り絵を残していくお客さまも!


店内はお客さまが心おきなくリラックスして読書にふけることができるよう、入口で靴を脱いで革製の洒落たスリッパに履き替えるスタイル。
こうして「学生時代からコーヒーを淹れることが好き、人と話すのが好き、空間作りが好き」という店主のもと、快い静けさが漂う白い森が育っているのです。


menu

ハンドドリップコーヒー 500円
カフェラテ 550円/カフェモカ 600円
紅茶(ディンブラ)500円
はちみつジンジャーティー 650円

おやつプレート(パウンドケーキまたはスコーンとドリンク) 800円~
ケーキプレート (ケーキとドリンク)1000円~


shop data

珈琲とお菓子「き」(コーヒーとおかし・き)
東京都世田谷区代田5-9-5 1階A
【TEL】03-3413-4678
【OPEN】13:00~19:00頃
【CLOSE】不定休
【最寄り席】小田急線「世田谷代田」駅西口より徒歩1分/井の頭線「新代田」駅改札より徒歩5分

コーヒーと、白くて見えにくいチーズケーキ

コーヒーとチーズケーキ…白い!


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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