子育て/プラス思考の子を育てるコツ

「あと一歩」の勇気を子どもに手渡したい時

新入学の季節です。新しい環境に入っていく時は、いつもよりたくさんの勇気を必要とするタイミングですが、日常の中でも、一歩踏み出す勇気がほしい場面は時々訪れます。勇気を出すのは子ども自身。「その場面」で親ができることは、悲しいほどにありません。だからこそ「あと一歩」の勇気を子どもに手渡す方法を考えてみましょう。

福田 由紀子

執筆者:福田 由紀子

臨床心理士/メンタルケア・子育てガイド

人生は日々チャレンジ

手

あとほんの少し勇気が持てたら……。そんなふうに思ってしまうこと、大人にもありますよね。

新入学の季節です。新しい環境に入っていくことは、大人でも緊張するもの。「一緒に遊ぼう」と新しいおともだちに声をかけること、自己紹介すること、新しい教科書を開くこと。すべてが人生の大きな節目におけるチャレンジです。

日常の中でも、一歩踏み出すのに少し勇気が要る場面は時々訪れます。「おともだちと仲直りしたい」とか「跳び箱のもうひとつ上の段に挑戦したい」とか「宿題のプリントをなくしてしまったことを先生に言わなきゃいけない」などなど。

勇気を出すのは子ども自身。「その場面」で親ができることは、悲しいほどにありません。だからこそ「あと一歩」の勇気を子どもに手渡したいものです。


不安の元になっているものを探す

漠然とした不安は厄介です。うっすらと不安は抱きつつも「考えても仕方がない」と、サッサと寝てしまえる時は大丈夫!「どうにかできるだろう」と、自分を信頼できているからです。でも、子どもが「どうしよう……」と不安の堂々巡りに入ってしまっているような時は、「何が不安なの?」と聞いてみましょう。不安が強すぎてうまく言葉にできない場合は「こういうこと?こういうことかな?」といくつか選択肢を出してあげましょう。

「話しかけて、無視されたらどうしよう」「うまく話せなかったらどうしよう」「先生に怒られたらどうしよう」など、問題の焦点が絞れてきたら、不安の根拠になっているものを探しましょう。「無視されてしまうかもって思っちゃうのはどうしてなんだろうね?」というふうに。

不安の元になっているものが見つかったら、「そう、前に○○君に話しかけたとき何も言ってくれなかったから、また知らんぷりされたら悲しいなと思ってしまうんだね」「前にクラスの子が先生に怒られて泣いてるのを見たから、自分が怒られるかもと思うと怖いんだね」というふうに、なるべく子どもが使った言葉で復唱してあげましょう。自分が言ったことを、相手の声で聞くことで、客観性が生まれるからです。


色々な視点で問題を眺めてみる

不安の悪循環に陥っている時は、最悪の場面を想定し、足がすくんでしまっています。その悪循環を断ち切るために、色々な視点を提供してみましょう。

「○○ちゃんなら、どうすると思う? △△君なら?」と聞いてみると、色々な対処法があることに気づくかもしれません。もし「でも、自分にはできない……」と、自信をなくす方向に行ってしまったら、「おともだちが同じように悩んでいたら、どんなふうに声をかけてあげる?」と聞いてみましょう。子どもがどんな言葉を望んでいるのかを知ることができますし、子ども自身が自分にエールを届けることができます。

「ぜったいに、また知らんぷりされちゃうかなあ?」と、不安が現実になる可能性をどれくらいだと見積もっているのか、聞いてみるのもいいですね。また無視されるに違いないと思っていたけれど、知らんぷりされたのは一度だけだったとか、他のおともだちから知らんぷりされたことはなかったとか、色々思い出すかもしれません。


対処法をできるだけたくさん考える

不安が現実になったとしたら、どんな対処ができるかを一緒に色々考えておくのもいいでしょう。「ほかのおともだちと話をする」「もう一度話しかける」「理由を聞く」「トイレに行く」「本を読む」「まあいいやと考える」などなど、ブレーンストーミングの要領で、できるだけたくさん考えてみましょう。「帰ってきて、ママに話して泣く」というのも、立派な対処法です。「自分は何もできないんじゃないか」と思うと自信がなくなりますが、「何かできることがあるかもしれない」と思えると、頑張ってみようと思えますよね。

子どもの悩みを聞いたとき、大人は「なんで、これくらいのことで」と思ってしまいがちです。でも、子どもにとっては、大問題。ですから、大まじめに対応しましょう。たいした解決法が思い浮かばなくても、親が自分の不安をしっかり受け止めてくれた。心細さを知ってくれている。そのことが安心感を与え、子どもの勇気の元になっていきます。


勇気を出せる「おまじない」

子どもとたくさん話をしたら、子どもの利き手ではないほうのてのひらに、指で「おまじない」のマークを描くのもおすすめです。勇気の「ゆ」でもいいし、パパの「パ」でも、ママの「マ」でも、ハート型でも、星形でも、花丸でもかまいません。「勇気を出せるおまじないだよ」と、指でゆっくり描いたら、そのマークを包み込むように握らせてあげましょう。そして「勇気がほしいとき、ギュッと握ってね」と伝えておきましょう。

子どもから、利き手のほうがいいとか、マークを変えてほしいというリクエストがあれば変更しましょう。不安が強い子には、問題が解決するまで毎朝出かける前の決まり事にしてもいいですね。

これは不安を感じたときの、ひとつの対処法になります。勇気がほしいと思った時に、自分の意思によってコントロールできる方法だからです。

昭和生まれの人は「緊張したときに、てのひらに人という文字を指で3回書いて飲みこむ」というおまじないをしたことがあるかもしれません。それと似たようなものですが、「こぶしを握る」というのは、周りに知られず自分を元気づけることができます。

「がんばれると信じてるよ」「がんばれなくても、ママがいるから大丈夫」「あなたのことが、とても大切」……子どものてのひらに、色々な思いをこめて描いてあげてください。不安な時、この指の感触を思い出してくれますようにと。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。

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