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ヒトもネコも快適・安全に暮らしやすい住まいの工夫

イヌ・ネコをはじめとするペットとともに暮らす生活スタイルが、一段と一般的になってきました。一方で、私たちの暮らしは共働きが増えるなどしており、そのためにペットとの暮らしも多様化し、工夫も求められるようになっているようです。今回の記事では、ネコとの暮らしに焦点を当て、実例を交えてより良いあり方を探る内容です。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

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ペットと共に暮らすライフスタイルが、以前より確実に定着しています。中でも、イヌ・ネコについては「家族の一員」と考える方も増えています。このことから住まいについて、「彼らにとっても住みよい環境にしたい」というニーズも高まっています。そこで、今回の記事では主にネコとの暮らしに注目して、住まいの工夫について考えてみます。ネコとの暮らしをより快適にするアイデアや仕様が盛り込まれた実例もご紹介します。

暮らしのパートナーとなったイヌとネコ

ネコ

ペットの飼育は飼い主の責任。天寿を全うできるよう、できるだけ快適な住環境を提供したいものだ(クリックすると拡大します)

総務省が発表している「人口推計」によると、平成28年4月1日現在の子どもの数(15歳未満人口)は1605万人。このご存じのように、子どもの数は非婚・晩婚化の影響で減少に歯止めがかからない状況です

一方、「平成28年全国犬猫飼育実態調査」(一般社団法人ペットフード協会のまとめ)によると、2016年の飼育数は犬猫の合計飼育数は1972万5千頭。イヌは前年に比べ若干減だそうですが、すでにイヌとネコの数は子どもの数を上回っているわけです。

犬猫飼育実態調査では以下のことも指摘しています。
・16歳未満の子どもの場合 「心豊かに育っている」(71.1%)
・高齢者の場合 「情緒が安定するようになった」(47.7%)
・夫婦関係の場合 「夫婦の会話が多くなった」(58.6%)
・自分自身の場合 「生活に潤いや安らぎを実感できるようになった」(54.2%)

自分自身の場合を除く全てのケースで前年より数値が高まっているのですが、このことはイヌとネコが家族の一員、私たちの暮らしのパートナー的存在となっていることがハッキリとみえてきます。

さて、平成28年度のネコの飼育数は984万7千頭となっています。前年とは横ばいで推移していますが、1頭あたりにかかる飼育費用は上昇しているとのことで、ネコがもたらす経済効果は2兆円を超え、「ネコノミクス」という造語も生まれているそうです。

このような状況から、ハウスメーカーなど住宅事業者はこれまでに愛猫家に向けた住まい提案を行ってきました。大和ハウス工業もその一つですが、先日、従来よりも充実した内容の提案を盛り込んだ仕様を発表、公開しましたので、取材してきました。

現在人の生活スタイルも反映した仕様

石黒さん

「猫と暮らすまちなかジーヴォ」の開発に携わった石黒由紀子さんと、リビングに備え付けられたキャットステップの様子(クリックすると拡大します)

それは「猫と暮らすまちなかジーヴォ」(千葉県流山市)というオープンハウスに取り入れられたもの。エッセイストの石黒由紀子さんと、ベネッセコーポレーションの雑誌「ねこのきもち」が開発に携わっています。

石黒さんご自身がネコ(他に柴犬も)と一緒に暮らしていらっしゃるとのこと。その暮らしを通じたアイデアを取り入れたのが建物の特徴となっています。以下で、写真を交え特徴的なものをご紹介します。

まず最初はリビング【写真1】の工夫について。吹き抜けの四方と飾り梁にキャットウォークが巡らされ、キャットステップで上り下りできるようになっています。キャットウォークには2階からもキャットドアなどを通じてアクセスできるようになっています。

キャットウォーク

【写真1】


これは、ネコの活動や動線が立体的なのに配慮したもので、ネコは家中をほぼ自由に行き来できるようになっています。「イヌは平面移動だけですが、ネコは立体的に動き回るので、その習性に合わせた縦方向の動線を重視しました」(石黒さん)とのことです。

ネコがストレスなく、元気なのは良いことですが、一方でイタズラされるのは困りもの。そのため、キッチンスペースは【写真2】のようにシースルータイプの引き戸を閉めることで、ヒトがいない時には行き来ができないようにしています。

ヒトがいて料理をしている場合でも、閉めていてもお互いに気配が分かりますから安心です。知らずに踏みつける心配もなくなります。そういえば、最近はオール電化の普及に伴い、IHクッキングヒーターを採用するケースが増えています。

キッチン

【写真2】


平板でネコが寄ってきやすい場所になりますが、調理の高温な板に触れるとヤケドなどの事故も懸念されます。しかし、キッチンに出入りできないようにすることで、事故を未然に防ぐことができるわけです。

このような配慮は、共働きなどで家に人がいない時間が増えた現代人の暮らしに配慮したものといえます。加えて、病気予防を理由にネコを一生室内飼いすることが増えてきたことにも対応するものです。

ネコの習性を反映した細やかな配慮

ネコの健康維持のための配慮もみられました。それはヒトの洗面台を兼ねた水飲み場。比較的高い場所にあり、ヒトの目に触れやすいため、ネコを踏んづけてしまうということも少なくなりそうです。

爪研ぎ

爪研ぎ用の柱。これならいくら爪を研いでも大丈夫!?(クリックすると拡大します)

また、少量の水を出しっぱなしにしておくことで、人がいない時間でも、ネコがいつでも新鮮な水を飲むことができます。「そのことでネコの健康を維持することができます」(石黒さん)とのことです。

細かなところですが、よく考えられているなと思ったのが爪研ぎなどによる住まいの汚れや痛みにへの対策。いくらかわいく大切な存在とはいえ、傷だらけにされてしまうのは嫌なものだからです。

例えば、窓の網戸はステンレス製。ネコの爪が引っかからない目の細かい網となっており、破れにくくなっています。よじ登りなどのイタズラも防止できます。また、爪研ぎの柱も設置されていました。

予めこのように用意し、ここで爪研ぎをするようにしつけておけば、壁や家具を傷められずにすみます。このほか、壁紙に脱臭効果があるものを使い、臭いへの対策を行っていたことも目に付きました。このような設えにより、ヒトもネコもストレスなく暮らせるようにしているわけです。

リアルサイズで提案を確認できるのも魅力

ところで、今回この事例についてご紹介したのには大きく二つ理由があります。一つ目は前述したように、現在の私たちヒトとネコにとっての快適さや安全の両方を追求しているという点にあります。

網戸

窓の網戸にも工夫がみられる。これはイヌを飼っている世帯にも役立つアイテムかもしれない(クリックすると拡大します)

これまでにも愛猫家に向けた住まいの仕様は色々とありましたが、実は私はあまりピンと来ていませんでした。というのも、キャットタワーやキャットウォーク、ネコの通り道があるドアを設置するといった、建具や設備の採用に重きを置かれたケースがほとんどだったからです。

比較対象となる愛犬家仕様の住まい提案については、その習性や大きさなどの特徴、家族とイヌとの付き合い方を加味した提案があるように思われます。今回の事例は、それと同様に、ネコの習性はもちろん、ヒトの暮らしも考慮されているという点で、提案の完成度が大変高いように思われたわけです。

もう一点は、主に注文住宅に大変参考になるということ。「まちなかジーヴォ」そのものは分譲住宅として建築され、しばらくの間はモデルハウス(オープンハウス)として、注文住宅を希望する方々に公開された後、販売されるものです。

分譲住宅ですから、建物は皆さんがこれから建てようとしている住宅と同じような規模。そこには大和ハウスならではの安心安全のための配慮や、動線、収納などの工夫が詰まっています。愛猫家の方だけでなく全ての方にとって、訪れてみると住まいづくりの参考になることが多いはずです。

モデルハウスだけでなく、このような分譲住宅も含めて数多くの建物を見て、体験することで、完成する住宅のレベルが高まります。つまり、今回の建物は愛猫家仕様としての視点だけでなく、見学する価値があるように思われるのです。

ちなみに、今回紹介した愛猫家仕様の「まちなかジーヴォ」は、2017年3月23日から公開されているもので、全国で初めてのものです。愛犬家仕様については既に展開しており、私も以前、記事を書いて紹介しています

犬と共に快適に暮らす家づくりの工夫・アイデアとは

現在、全国に100ヵ所以上あるそうです。お近くの方は訪れてみてはいかがでしょうか。


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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