婦人病・女性の病気

PMS症状対策に有効なストレス対策・食生活・運動習慣

【産婦人科医が解説】多くの女性たちを悩ませるPMS(月経前症候群)。ほとんど気にならない人もいれば、日常生活に支障が出るほど重い症状に悩む人もいます。どうすればPMSとうまく付き合うことができるのか、PMSの原因および症状緩和のポイントについて解説します。

清水 なほみ

執筆者:清水 なほみ

産婦人科医 / 女性の病気ガイド

生理前に不調になる「PMS(月経前症候群)」とは

椅子に座っている女性

生理前の不調は人によってさまざまです

なんとなくイライラしたり、お腹が張って痛んだり、無性に甘いものが食べたくなったり……。生理前になると、多くの女性がこのような不快な症状に悩まされます。症状が軽ければ問題ありませんが、症状の程度が日常生活を妨げるレベルになるとPMS(月経前症候群)と呼ばれ、治療の対象になります。PMS(月経前症候群)は、生理が始まる2週間前から生理の直前にかけて一時的に生じるもので、その症状は多岐にわたっています。

身体的な症状で多いのは、乳房が張る、下腹部が張る、食欲が出る、体重の増加、体がむくむ、強い眠気に襲われる・または眠れない、肌荒れ、便秘、頭痛など。精神的な不調としては、イライラする、情緒不安定、集中力の低下、怒りっぽくなる、無気力などが挙げられます。これらは「うつ病」の症状によく似ていますが、生理が始まると、まったく症状がなくなるのが特徴です。

症状の中身や程度は、人によってかなりの差があるものの、20~30代のほとんどの女性は、月経前に何らかの不調を感じていると言われています。PMSの原因ははっきりとはわかっていませんが、考えられるのは、生理の周期に伴う女性ホルモン分泌の影響です。女性ホルモンは排卵後に分泌量が増え、生理前になると急激に減少します。このダイナミックな変動に体が対応できず、さまざまなかたちで不調が引き起こされると考えられています。

PMS症状を重くする「ストレス」への対策も有効

女性ホルモンのほかにも、PMSを引き起こし、また症状を悪化させると考えられる要因は、いくつもあります。

まず、日常生活で受けるストレスの影響です。たとえば、就職や転職、結婚、離婚、引っ越しなどの環境の変化は、誰にとっても大きなストレスになります。あるいは、仕事などで常に緊張している状態が続くと、PMSの症状が重くなる傾向があります。

個人の性格や考え方も影響するといわれています。もともと几帳面な性格の人、細かいことを気にする人、あるいは負けず嫌いで自分に厳しい人なども、PMSの症状が強く現れるようです。

さらには、栄養状態もPMSに関係していると考えられています。PMSの症状が強い人は、ビタミンやミネラルの微量栄養素が不足していたり、逆に甘い物などによって糖質の摂取が過剰になっている可能性があります。

女性ホルモンの周期的変動は生理的なものなので、意志の力で変えることはできません。しかし、それ以外の要因の多くは、本人の努力で改善することが可能です。そこに、PMSとうまく付き合っていくヒントがあります。

PMS対処法……上手に付き合っていくコツは?

それではどのようなことに気をつければ、PMSの症状を和らげることができるのでしょうか。

まずは食事の内容です。血糖値を安定させるような食事を心がけましょう。生理前は、女性ホルモンの影響でインスリンのはたらきが低下し、血糖値が不安定になりがちです。このことが、精神的に不安定な状態を作り出してしまいます。

血糖値の急な変動を抑えるためにも、チョコレートやケーキ、果物などの甘いものは、できるだけ食べないようにします。おすすめは、いも類や精製していない玄米、蕎麦、全粒粉パンなどです。栄養面では、PMSの症状の強い人に不足しがちな、ビタミンやミネラルを積極的に補うことも大切です。そして、血糖値をゆっくり上げる食べ方を心がけましょう。空腹時に甘い物など糖質をとると急激な血糖値の上昇を招きます。小腹がすいた時につまむのは、砂糖類が含まれていないナッツ類や小魚などがお勧めです。また、普段の食事も、野菜類→肉や魚→最後に主食といった、コース料理を食べる時のような順番でとるようにすると、血糖値の上昇が緩やかになります。

生活習慣に加えるとよいのが、基礎体温と一緒に症状の記録をつけることです。自分の生理周期を把握することで、PMSが生じる前から準備を整えることができます。普段よりも仕事を減らしてストレスを溜めないようにする、あるいはウォーキングやストレッチなどの軽い運動で、気分転換をはかるのもよい方法です。

なお、PMSはあくまで生理前だけの一時的な症状です。生理の周期に関係なく症状が出る場合には、別の病気の可能性があります。社会生活に支障をきたすほどPMSの症状が重い場合も含め、あまりにも辛い、どうもおかしい、と感じたら、無理をせずに医師に相談しましょう。
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