歯科インプラント治療における様々な骨造成術
さまざまな骨造成法を検討することでインプラント治療の可能性が広がります。
インプラント治療に不可欠なのは、インプラントを埋め込むための土台となる顎の骨です。骨というのは体の一部であり、例えそっくりに生まれてくる双子であっても同じ骨の形や厚さが全く同じであり続けることはありません。ましてや年を重ね別々の場所で生活したり食べ物の好みが違ったり生活環境が異なればそれに伴って口腔環境も変化してくるのでインプラントを必要とするタイミングでの顎の骨の状態は十人十色なのです。
一方でインプラント治療後にインプラントを快適に機能させるためには、最低でも8ミリ、できれば10ミリはインプラントを埋め込みたいところです。そうなるとそれ以上の厚みの顎の骨が必要になります。インプラント治療に入る前にはカウンセリングや3DCTといった多角的な診断をしっかりと行い、今の状態にぴったりの治療方法を選ぶことが大切です。では、その判断によりインプラントをいれるには土台が十分ではないと判断された場合、治療そのものを諦めなければならないのでしょうか? いいえ、そんなことはありません。それを可能にしてくれるのが骨量を増やす「骨造成術」なのです。
インプラントにおける骨造成術:サイナスリフトとは
サイナスリフトによる骨造成
サイナスリフトの方法には、頬側面に直径約15ミリの穴をあけて行い大量に骨補填できる「ラテラルアプローチ」、インプラント埋入する約4ミリの小さな穴から行う低侵襲のため術後の腫れが少なく済む「バーティカルアプローチ」の2種があり、それぞれのメリット、デメリットがありますので状況に応じて選択するとよいでしょう。
インプラントにおける骨造成術:ソケットリフトとは
ソケットリフトとは、インプラントを埋入するためにあけた直径4ミリほどの穴から専用の器具を槌打し上顎洞底を挙上し、それによってできた空間に骨補填を行い、インプラントを安定させる方法です。サイナスリフトラテラルアプローチと同じ目的になります。元々骨質が軟らかめのこの付近にインプラントを入れる穴を形成するために、「オステオトーム」という器具を使うことがあります。オステオトームは、上顎洞底骨を持ち上げる目的のコンケーブと、軟らかい骨を押し広げる目的のコンベックスの2種類からなり、それを交互に使用します。元々は挙上量が2~3ミリと少ない時に行われるテクニックでしたが、近年は5ミリほどの挙上時にも低侵襲手術を目的に行う術者も増えました。ただし盲目であるため、上顎洞底を貫通するときの感覚や、できた空洞にどの程度の量の骨補填を行えばいいかなど、熟練したテクニックなしではできません。インプラントにおける骨造成術:べニアグラフトとは
ベニアグラフトによる骨造成
インプラントにおける骨造成術:オンレーグラフトとは
臼歯部が欠損した為インプラントを埋入したいが骨の高さが足りず、隣の歯との骨の状態が大きく異なる場合の骨造成法が「オンレーグラフト」です。上顎は親知らずの奥から、下顎は奥歯の下から自家骨をブロックで採取し、骨量が不足した部位に貼り付けまます。人工骨を使用してこの治療を行う場合もありますが、その場合は粒状の素材を固定するためにチタンメッシュなどを用いる必要があります。インプラント治療が出来るように安定するまでに約半年かかります。治療箇所や状況により対応する骨造成法は様々です。今回挙げた方法のほかにも様々な可能性がありますので、あきらめずに相談して健康な口腔環境を目指しましょう。治療の第一歩は自分の状況を知ることです。まずは信頼できる専門的な治療を行っている歯科医院で相談されることをおすすめします。