子供の病気

冬前に異例の流行が続く「RSウイルス感染症」とは

【小児科医が解説】2017年、RSウイルス感染症の異例の流行が報じられています。RSウイルス感染症は、2歳までに一度は子どものほぼ100%がかかる、ごく一般的な感染症です。ほとんどが軽い症状で済みますが、乳児期早期の子どもや、特定のリスク要因のある子どもは重症化する恐れがあります。日頃から取るべき具体的な予防法についても解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

RS感染症とは……誰もが一度は感染する感染症

寝ている赤ちゃん

冬だけではなく日常的に予防意識を持ちましょう
 

2017年9月現在、全国的に異例の流行が報じられているRSウイルス感染症。国立感染症研究所も、例年とは異なる全国的な患者数の急増が見られることを発表しています。

RSウイルス感染症とは、生後数週間~数カ月間の乳児期の子どもを持つ親が、特に注意したい病気のひとつです。RSウイルスに感染することで、肺炎や気管支炎など呼吸器の症状が出る病気で、年齢にかかわらず何度も感染と発病を繰り返し、生後1歳までの子どもは50%以上、2歳までにはほぼ100%の子どもが、少なくとも1度はRSウイルスに感染すると言われています。

RSウイルスの潜伏期間・症状・重症化リスク

RSウイルス感染症は、一般的に感染してから4~6日間の潜伏期間を経て発症します。はじめは発熱や鼻汁が出るなど風邪に似た症状が数日続き、多くの場合は軽症ですみます。しかしこの病気は、初めの感染で発症した場合は症状が重くなりやすいといわれ、生後数週~数カ月の乳児期早期の子どもの場合は重い症状を引き起こすことがあります。

重症化するリスクが高いといわれるのが、早産で生まれた子ども、生後24カ月以下で心臓や肺に基礎疾患がある子ども、神経・筋疾患・免疫不全の基礎疾患がある子どもなど。RSウイルスの感染によって、すでに持っている病気や障害が重症化する可能性があるということです。基礎疾患をもっていなくても、生後3カ月以内の乳児については、感染しないように特に注意が必要です。

0~1歳児に特に注意を! RSウイルスの感染経路と予防法

RSウイルス感染症は、従来は毎年冬に感染のピークを迎えていました。しかし近年では、7月頃から感染した患者がみられるようになっているので、日常的に感染に対する予防意識が必要になっています。

この病気は、RSウイルスに感染している人の口から出る、唾などのしぶきを吸い込むことによる飛沫感染のほか、感染している人との直接的な接触、ウイルスがついている物を触ったりなめたりすることによる間接的な接触感染で感染します。麻疹(はしか)や水ぼうそうのように空気感染(飛沫核感染)することはありません。

RSウイルス感染症は、子どもも大人も感染を繰り返します。しかし幼児期の初めての感染以降は、風邪のような症状や気管支炎のような症状のみの場合が多く、自分がRSウイルス感染症にかかっていると気づかないことも少なくありません。そうした隠れた感染者たちは、無自覚のまま周囲にウイルスを拡散させてしまうのです。

RSウイルスの予防法・対策法

ですから、予防のためには日頃の注意が必要です。RSウイルスによる初感染の発症の中心となるのは0~1歳児です。彼らと日常的によく接触する人は、RSウイルス流行期でなくても咳などの呼吸器の症状がある場合は、飛沫感染対策にマスクを着けるようにしてください。年長の子どもや成人で、咳などの呼吸器の症状がある人は、できれば0~1歳児との接触を避けることが大切です。

さらに間接的な接触感染の予防として、子どもたちが日常的に手で触るもの、たとえばドアノブや手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップなどは、塩素系の消毒剤やアルコールで消毒しましょう。もちろん、家庭や外出先での正しい手洗いやアルコール製剤による手指の消毒も行ってください。

RSウイルスの治療法……特効薬はなく対症療法に

RSウイルス感染症には特効薬はなく、インフルエンザワクチンのような予防や症状軽減のためのワクチンもありません。このため、治療は症状を和らげるための対処療法となります。ただし早産やダウン症候群などの一定の条件にある子どもに対しては、モノクローナル抗体製剤である「パリビズマブ」というものを流行初期に投与し、その後も1カ月ごとに筋肉注射する方法が取られることがあります。これにより、重い下気道炎症状を抑えることが期待できるためです。

冬になると毎年流行するRSウイルス。現在の流行はもちろん、これからの流行にも備え、適切な方法でしっかりと予防するようにしましょう。
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