自ら尾行して、二股をあばく
自ら尾行して二股をあばく女性たち
そんな中、なぜか「二股話」を立て続けにいくつか聞いた。独身者の話なので、不倫にはならないが、話を聞いてみると、かつての「二股」とは女性の対応がかなり変化してきているのが興味深い。
「6年つきあっていた3歳年上の彼に、別の彼女がいたんです。あちらは4年だそう。気づけなかった自分にも腹が立つけど、つきあっている期間の3分の2は騙されていたんだと思うと、腹が立って……」
激しくまくしたてるのは、マリカさん(33歳)。目鼻立ちのくっきりした女性である。彼に他にも女性がいると知ったのは、共通の友人からの情報だった。
「『彼と別れたの?』と言われて。別れてないよと言ったら、彼が別の女性と最近やたらと連れだってあちこち顔を出してるって。なにそれと思って、すぐに彼に問いただしました。すると彼は、最近、一緒に仕事をしている女性というだけだと。彼はIT関係の仕事を自分でやっているので、まあ、そういうこともあるかなと思ったんですが……」
それから3ヶ月もたたないある日、彼女は自分の目で、彼と他の女性がラブホテルに入っていくのを見てしまった。
「なんだかあやしいと思ったので、たまたま私の仕事が休みだった平日、彼を尾行したんですよ。そうしたらとある駅でふたりが夕方待ち合わせして、そのままラブホへ入っていった。ショックでしたね」
だが、ショックだからといって引き下がらないのが今どきの女性である。
「そのまま私もラブホに突入しましたよ。部屋を選んでいるふたりのところへ行って、彼の肩をぽんぽんと叩き、『なにしてるわけ?』と。彼は目を白黒させ、彼女は口をぽかんとあけていました。『私、彼と6年つきあってるんだけど』と言ったら、彼女が『あ、私は4年です』って。ふたりして、彼に向かって『どういうこと?』と。あとから考えるとドラマみたいですよね(笑)」
3人はそのままラブホを出て、近くの喫茶店へ。女ふたりで彼を問い詰める形となった。
「どうするつもりなのよ、と彼女と私が彼を追い込んで。彼は『答えが出せません』と小さくなっていました。彼女は27歳。『まだ若いのね』とつぶやくと、彼女が『私は別れます』と。『先につきあっていたあなたのほうが権利があると思う』って。恋愛なんて権利云々ではありませんよね。『ちょっと待って、私だって騙されていたんだもの、もうつきあっていられないわよ』と言いました。私たちは連絡先を交換しあって、今後の彼への対策を一緒に考えていこうということになったんです。どちらも結婚していたわけでも婚約していたわけでもないから慰謝料なんてとれないだろうけど、なんとかとっちめてやりたいから」
彼への未練はないのだろうか。
「なくはないですよ。今だって彼のことは心から憎めない。だけど、そういうのを許していたら、いつまでたっても同じでしょう? 彼と一緒にいたら私も進歩できないなと思ったんですよね」
この切り替えの速さがすごい。恋愛感情を自らぶったぎるような潔さである。
未練はあっても断ち切る
二股をかけられたとわかっても、泣いて喚いたりしない。
「わかるなあ、その気持ち」
そう言うのは、彼には何人の女がいたかよくわからなかったというルリコさん(35歳)だ。10歳年上の彼と5年つきあっていたが、国内のみならず海外への出張も多い彼だったから少なく見積もっても3人はいたはずだという。
しかも彼はバツイチ独身と言っていたのに、実は長年別居している妻もいることが、別れてから発覚した。そこまでいくとよほど魅力的な男なのだろうと想像するが、
「仕事はできる人だったみたい。だけどふたりでいるときは、本当にしょうもないダメ男なんですよね。ぐずぐずで甘ったれで。でもそこがかわいかった」
なぜ彼に別の女性がいることがわかったかというと、LINEでのやりとりだった。
「間違えたんでしょうね。他の女性に送る文章を私に送ってきた。思い当たらないことが延々と書いてあって、それによると、その女性と彼は前の晩、一緒に過ごしたらしい。エッチな文章でしたよ。私にはそんなことしないのに、というセックスの内容まで書いてあったから、腹が立ちました」
彼自身、誤送信したことにすぐ気づいたらしいが、言い訳のメッセージはなく、翌日、LINEではなく携帯のショート-メールで、「今日会おうよ」と言ってきた。いつものようにデートをし、いつものように彼がひとり暮らしのルリコさんの部屋に泊まった。その晩、彼女は彼のスマホを徹底的に調べたという。
「怪しい女性を3人特定できたんです。彼女たちに、彼のスマホから、『私は彼と5年つきあっていますが、あなたは何年ですか』とLINEを送りまくりました。そのまま彼のスマホで被害者の会を立ち上げ、グループを作って2時間くらいやりとりして。情報を私のスマホに流したけど、彼のスマホで作った会はそのまま残しておきました(笑)」
結局、彼は女性たちから総スカンを食ったようだ。
「もしかしたら、そんな彼がかわいそう、と誰かが彼女として残っているかもしれませんが、私はもういいや、撤退すると決めました。マメで寂しがり屋なんでしょうね。本気で好きだったけど……。別居中の妻がいてもいいんです、私だけを見てくれれば。でも愛人4人なんて、なんだかバカバカしくなっちゃって」
週に一度は彼と会っていた彼女だが、すべてが虚しくなってしまったのだという。
今どきの女たちは、男にすがりつくことはしない。聞いていて気持ちがすっきりはするが、ある種の未練をどうやって昇華していくのかが気になるところではある。