【国の不妊治療費助成】治療1回で上限15万円、年齢・所得に制限も
男性の助成金があることを知らないケースも。
不妊治療は保険外診療となり、多額の費用がかかるケースが大半です。この負担を少しでも軽減させようと国や各自治体が助成金を支給する仕組みが作られました。国が掲げる特定不妊治療費助成制度は、数年の移行期間を経て、平成28年度から内容が変更された上で本格運用となっています。
制度の詳細を見てみましょう。
- 治療1回につき上限15万円の助成
- 初回の治療については上限30万の助成
- 凍結胚移植の場合、上限7.5万円の助成
注目すべき点は、助成を受けられる治療者は43歳未満となっていることです。加えて、40歳未満であれば助成回数は6回まで、40歳以上であれば3回までと回数を区切り、若いうちの治療を促す内容となっています。
年齢制限が加わったのは平成28年度からですが、高齢になれば妊娠が難しく、流産の割合が上がります。また、妊娠高血圧症候群などのリスクを抱える可能性も上がります。これらの背景に加え、諸外国の状況なども考慮して年齢・回数制限が設けられているのです。また、助成には730万円(夫婦合算の所得ベース)の所得制限があります。
不妊の原因は女性だけに限ったことではありません。その割合は男女ともに半々だと言われており、男性不妊に対しての配慮も求められます。国の制度では男性不妊も助成対象。精巣から精子を取り出すTESEやMESAなどの手術について15万円の助成があります。こちらの詳細は後述します。
東京都下の自治体では所得制限撤廃も
国の助成金制度は全国共通ですが、居住する自治体によってこれに独自の上乗せ助成を行うところもあります。ここでは東京都を例にみてみましょう。
まず、東京都内では八王子市在住の場合のみ、助成金の申請は八王子市にすることになります。なぜなら、中核市としての機能を持っているため、都道府県の事務権限が移譲されているからです。
そして、いずれの場合も国の制度に上乗せ助成されていますが、その内容に違いがあります。
ステージA*1については東京都が20万なのに対し、八王子市は25万、ステージB*2では東京都が25万で八王子市が30万であり、どちらも厚生労働省が周知している助成金額に上乗せされているものの、比較すると八王子市のほうが5万円高くなっています。*3
助成金に対しては各自治体に相談窓口があります
世帯収入に目を向けてみましょう。国およびほとんどの自治体においては申請条件に所得制限があり、大半は夫婦の所得額が730万円未満という条件になっています。今は共働きの夫婦が増えているので、この金額を超えてしまう世帯もあるでしょう。
そんな中、所得制限を撤廃したのが港区と品川区です。港区は1年度あたり30万円までを所得にかかわらず助成します。品川区は東京都がカバーしていない、体外受精や顕微授精などの特定不妊治療以外の一般不妊治療を対象とし、10万円まで助成するところが特徴です。
珍しいものでは、「日本一人口が少ない村」として知られている東京都青ヶ島村は、交通の便の悪さを考慮し、不妊治療による羽田までの交通費実費の半額を1年度に5回まで助成するという制度があります。
*1 ステージAの治療内容:新鮮胚移植の実施
*2 ステージBの治療内容:凍結胚移植の実施
*3 いずれも初回の治療に関しては30万の助成。
助成回数・金額が充実している秋田県
全国各地の様々な自治体の取り組みの中でも、私が注目したのは秋田県です。秋田県は以前から母子保健に力を入れていましたが、不妊治療助成でも他と比較してその充実ぶりが際立っています。【秋田県】幸せはこぶコウノトリ事業
・助成対象は40歳未満においては、年間助成回数の制限なしで通算9回まで(県の助成3回含む)通算9回までと、東京より3回多く助成してくれます。
・助成金額は治療区分に応じて10~20万円
国の助成7.5万円の治療区分は10万円、15万円の治療区分は20万円と、いずれも上乗せされて設定されています。秋田県にお住まいの方はぜひ知っておきたい制度と言えるでしょう。
男性不妊助成を対象に助成を行う自治体も
男性不妊治療を対象にした助成を行う自治体も増えてきました。例えば、体外受精及び顕微授精を指す特定不妊治療において、治療の一環として行われる、TESE・MESA・PESAの費用の一部を助成する自治体があります。
- TESE:精巣内精子生検採取法
- MESA:精巣上体内精子吸引採取
- PESA:経皮的精巣上体内精子吸引採取法(陰嚢の皮膚を切開せずに皮膚の上から直接針を刺して精子を回収する方法)
これらの制度も上手に活用したいもの。男性不妊助成は三重県を皮切りにその動きは全国の自治体に広がっています。