オープンデッキの観光バスのような気分の良さ
スーパーカー以外で、ドライブ中にこんなにも注目を浴びることは久しぶりかも知れない。と、同時に、気分の良さはスーパーカーの比じゃなかった。イヴォーク・コンバーチブルの屋根を、もちろん開け広げて都会の道を進む。混んでいても、まるで気にならない。むしろ、ふだんは味わえない街との一体感や、いつもと違う街の表情を、ダイレクトに感じる時間が増えて嬉しいくらいだ。その気分の良さは、ちょっとしたオープンデッキタイプの観光バスに乗っている感覚、と言ったら、言い過ぎだろうか。否、そんなことはない。背の低いオープンカーから見る景色とはまた違った爽快感が、確かにあった。
ボディサイズは全長4385mm×全幅1900mm×全高1650mm、ホイールベースは2660mm。車両重量は3ドアクーペより260kg重い2020kgとなる。撮影車両はブラックデザインパック(35.7万円)を装備していた
シリーズには、エキセントリックなスタイリングの3ドアモデル(クーペ)と、より実用的で売れセンの5ドアモデルとが用意されているが、この3ドアをベースに大胆にもオープンエアを楽しめるようソフトトップを装備するモデルが発表された。それが、イヴォーク・コンバーチブルだ。
ソフトトップの開閉はもちろんオートマチックで、開閉に要する時間は18~20 秒。時速48km/h以下でなら、走行中の開閉もできるから、やや時間は要するとはいうものの、気軽にオープンエアを楽しむこともできるはず。ソフトトップは5層からなっており、見るからに丈夫で遮音性能も高い。
最高出力240ps/最大トルク340Nmを発生する直噴2L直4ターボエンジンを搭載。減速時にバッテリー充電を優先させるシステムや最先端マネジメントシステムなどを採用、JC08モード燃費は9.6km/lとなる
ちょっと高い位置から。他では味わえない楽しさ
もう少し大人のスポーツムードに仕立てたい。取材車はレーシーなオレンジ系のボディカラーに、エクストラで“ブラックデザインパック”なるものが選択されていて、グリルやホイールなどがブラックアウトされていた。それが小洒落たコンバーチブル気分をぶちこわしにしている。ここは、どんなに面白みがないと言われても、明るいオーシャンリゾートあたりが似合う雰囲気に仕立てたいもの。ブラックのインテリアもつまらない。オープンは中をみせてナンボ。もっと明るく仕立てたいものだ。———と、個人的な感想はともかく。走らせた印象は、冒頭の気分の良さに加えて、クローズドモデルよりもしなやかな乗り心地に終始するなぁ、というものだった。大きな面積をもつルーフを取り去ったがゆえ、ボディ強化も相当なものだったらしく、重量増もけっこうな数値である。パワートレーンに変わりはないから、乗り味に違いが出て当然だろう。とはいえ、元来が元気印のパフォーマンスだったHSEダイナミックをベースにしている。大人3人分くらいの重量が増えても、不満になるようなレベルにまでは劣化しない。むしろ、重厚感が増し、頭上のイキみも取れて、柔らかなタッチの乗り味になっていた。ふだん乗りには、コンバーチブルのテイストの方が妙にしっくりときた。
ルーフを閉じてしまえば、まるでクーペ感覚だ。イヴォーグはクーペに限る、と常々言ってきたが、コンバーチブルのクローズドスタイルもクーペに近い。ふだんは、格好いい2トーンカラーのクーペ感覚で乗りこなし、天気のいい日にはタマにオープンエアを楽しむ、という、自分へのご褒美的な使い方が嬉しいと思う。
もちろん、4シーターだから仲間と楽しめばもっと愉快なドライブになるだろう。4シーターオープンで走る楽しさは、ちょっと他では味わえないものだ。しかも、いつもよりちょっと高い位置を楽しむことができる。他では経験できないから、オーナーになれば病み付きになること請け合い。もっとも、オープンエアドライブを心から喜んでくれる仲間を探す方が、イマドキ難しいかも知れないけれど。