imm(ケルン国際家具見本市)とは?
imm(ケルン国際家具見本市)は、世界最大規模の家具見本市として、4 月にイタリア・ミラノで行われるミラノ国際家具見本市(ミラノサローネ)と双璧をなす重要な家具見本市です。毎年1月にドイツのケルンで開催され、約1200 のメーカーが出展し、世界100 カ国以上から15 万人以上もの人が訪れます。その歴史は1949 年にまで遡り、ミラノサローネよりも10 年以上も前にはじまり、現在まで65 年も続いているという歴史ある一大イベントです。2011 年に「Living Kitchens」が復活して以降、「Living Interiors」と「Living Kitchens」が隔年で家具見本市と同時開催されており、ますます盛り上がりを見せています。今年2017年は1月16日から22日までの7日間に渡って開催されました。
見本市という性質上、価値ある商品を求めるバイヤーと一般来場者の両方にとって家具・インテリア、キッチン関連製品を同時に見られるという大きなメリットがあり、出展者にとっても相乗効果を見込める理想的なビジネスプラットフォームとなっているようです。より実験的な場、インスタレーション、街を上げてのお祭り騒ぎのミラノサローネに対して、展示会場のみで展開されているimmは、商談の場といった棲み分けがなされている印象があります。
この展示会が開催されるケルン(Köln)という街はライン川沿いに位置し、人口は100 万人強のドイツではベルリン、ハンブルク、ミュンヘンに次いで4 番目に大きな都市。第二次世界大戦で激しい空爆を受けてケルン市内の9 割の建造物が破壊されましたが、街のシンボルでもあるケルン大聖堂(Kölner Dom)だけは奇跡的に完全には崩壊しませんでした。そのケルン大聖堂は1248 年に着工していますが宗教改革で中断、500 年以上の年月を経て1880 年に完成。ゴシック様式の建築物としては世界最大であり、ユネスコ世界遺産にも登録されている。ケルンの英語表記が『cologne』であることからも分かる通り、オーデコロン(eau de cologne=ケルンの水)発祥の地としても有名です。
展示会場であるケルンメッセはケルン中央駅からライン川を挟んだ隣の駅前という、非常にアクセスしやすいところにあり、展示面積は284,000m2と東京ビッグサイトの約3倍の広さがあります。
ケルンメッセ会場マップ。4-1、4-2、5-2がLIVING KITCHENの会場
そのなかの一角にLiving Kitchenのスペースが設けられています。
では、いくつかのキーワードで展示を見ていきましょう。
ライフスタイルの提案とダイニングスペースの存在感
キッチン本体を取り扱っているメーカーで、キッチンだけを展示しているところはほとんどありません。必ずダイニングやリビングまで一体となった見せ方をしています。つまり、リビングソファーの背景としてきちんと存在できるキッチンを提案しているわけです。ここであることに気付きます。2年前のケルンから感じていたことですが、ダイニングスペースとキッチンスペースの関係がどんどん近づいています。多くのキッチンではダイニングテーブルがキッチンにくっついています。日本でも最近普段の食事はキッチンに併設のカウンターで食べ、週末の落ち着いた食事はソファーで食べるという生活スタイルが見られるようになりました。よりいっそうダイニングスペースの存在感、存在理由を各ご家庭で考えなければならない時代なのです。
そのうち「ダイニング」はなくなってしまうかもしれませんね。
隠す収納と見せる収納の定義付け
ミラノからの流れですが、徹底的に「ノイズレス」というデザインキーワードの基に、隠す収納が徹底しています。その一方でオープンフレームの見せる収納も多く使われています。つまり、『ノイズ』の定義付け、見せるものと隠すものの線引きがしっかりしているということでしょう。私感ですが「自らの意思で選んだものは見せる、機能的に選んだものは隠す」というルールなのではないかと思います。ユーズド感のある素材、ノスタルジックな仕上げ
古材そのものやアンティーク仕上げといったユーズド感がある素材、仕上げが多く見られました。インダストリアルスタイルのインテリア
スタイルの一つの方向として、インダストリアルインテリアが上げられます。このスタイルの特徴は「レザー」「木+鉄」「レンガ」が多く使われたスタイルを指します。ワークトップの厚み
日本のキッチンはグリル付きにコンロを前提としているため、天板の厚みが約40mmほどで決まってしまっています。しかし、海外には魚焼きグリルなんてありませんから、天板の厚さは自由です。この一つのポイントがどれだけキッチンを自由にしてくれることでしょう。素材と仕上げ
ストーリー(物語性)のある素材がよく見られます。樹種としてはオーク材が目立っていました。ワークトップの素材は数年前まで中心的存在だったクォーツストーンはすっかり影を潜め、セラミック材が主流になっていました。高圧メラミンも相変わらず多く見られます。仕上げはマットです。しかも中途半端なつや消しではなく、スーパーマットと表現できるぐらいのマット感です。下引きファン
ヨーロッパでもIHクッキングヒーターがかなり普及しているようで、レンジフードの考え方も変わってきます。換気の必要がないため匂いと煙を除去する高性能な空気清浄機のようなものでよく、上昇気流が起きないために上にある従来型のレンジフードよりも、発生源の近くで吸い取る下引きファンの方が効率的です。トレンドカラー
これもミラノから続く流れですが、今回の流行としては、スモーキーカラーと呼ばれるグレイッシュなパステルカラー(グリーン、ブルー、ピンクなど)とナチュラルな木を合わせた家具をよく見かけました。またパーシモンレッドも目立った色のひとつです。まとめ
全体的には、前回のケルン、昨年のミラノから流れを踏襲していて、あっと驚くような展開はありませんでした。それはimmという「商談の場」に特化した展示会という背景も関係しているのかもしれません。特筆すべきはアプライアンスです。自動化やハンドルレスといった高機能化はさらに進んだと言えます。この記事がアップされる頃はミラノサローネも終わってることでしょう。今年の報告に期待したいところですが、来年2018年はEuroCucinaの年ですから、また見に行きたいと思っています。その時はどんな進化が起こっているのでしょう?楽しみです。