治療費の負担だけではない? 収入減も伴うがん闘病中の家計
「治療費がかかるだけじゃなかったのか!」がん治療中に減りがちな収入をカバーする方法まで考えている人は少ないものです
毎月数万円の支出……がん治療費はいつまでのしかかるのか?
がんは手術したら終わりという疾患ではありません。再発・転移の可能性がある場合に薬物療法や放射線療法といった治療を行います。治療方針により手術の前に行う場合もあります。この薬物療法の期間は予想が難しいことがあります。当初6ヶ月間の薬物治療を予定されていた場合でも、終了後に治療の効果を腫瘍マーカーや内視鏡・画像診断などにより評価しながらその後の治療方針を決定していくためです。かかる治療費は標準的な収入の場合、高額療養費適応で月約9万円です。要件に該当すれば4ヵ月目より多数該当となり月4万4400円となりますが、薬代など合わせると月に数万円かかります。上記のように治療が長期化した場合、毎月の支出から数万円捻出することは家計の圧迫につながります。
がん患者の3人に1人が収入減少のリスクを抱えている
国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターの2012年性別・年齢別がん罹患者数によると、診断年全罹患者数86万5238人に対し、20~64歳は25万6824人と全体の29.6%を占めています。つまりがん患者の3人に1人が働ける年齢でがんに罹患しているということです。働いて収入を得ている方にとって、がんになり体調の変化や調整などで働き方が変わることは、収入減少という家計圧迫に直結するリスクを抱えていることになります。がんによる家計圧迫は患者だけでなく家族の生活にも影響する
ガイドがお受けしているがん患者さんから多い家計相談の内容として、次のようなものがあります。- 保険の見直し「今の保険は古いので新しいものに入りたいが、保険料が高い」等
- 復職後の生活設計「収入が下がり、生活が成り立たない」等
- 住宅ローン「入れる団体信用保険はあるのか?」等
- 教育費「子どもが大学進学希望しているが、治療費や住宅ローンがかかり、正直厳しい」等
- 定年後の生活設計「嘱託勤務していたが、がんになり契約打ち切りになった。年金受給までの収入や治療費捻出をどうするか」等
家計圧迫の解決は「お金の見通し」をつけることから始めよう
身体もお金も、気づいた時が行動するベストタイミングです。がんなど長期的な病気になった時のお金の考え方として、治療や体調からの影響が大きいので、治療スケジュールを基にしたお金の見通しをつけることが大切です。ガイドが相談を受ける際、患者さんにアドバイスしているのは次の2点です。1.医師から説明を受けた治療スケジュールから、仕事が困難となり、収入が下がる時期を予想する
大体でよいので、実際に治療とお金の見通しをつけていくことが、「がんによる家計圧迫」の解決への第一歩となります。がんの治療は手術・薬物療法・放射線療法と月によって変わることもあり、体調の変化から働き方も変わることが多いので、数年間の長期的な予定よりも一年間の短期の予定表を作成し、まずは治療とお金の見通しをつけていきます。予定表に記入するのは次の項目です。月々で分けるとわかりやすいかと思います。
- 治療予定
- 治療費(高額療養費の自己負担額や保険適応外のかかるお金)
- 仕事の予定(休職・復職・残業の有無など)
- 入るお金(給料や傷病手当金、保険の給付金など)
同じ部位のがんで、治療内容が同じでも、年齢やがんの進行度、患者さん自身の加入している健康保険・年金・民間の保険や住宅ローンなどの情報よって利用できる制度は変わってきます。ここで大事なのは、たくさんある制度の中から「どれが自分にとって利用できるのか」を知ることです。利用できる制度を選別した上で、入るお金を試算しましょう。
自分が利用できる制度を選別できる方法の一つをご紹介します。がんと診断された方のための、公的・民間医療保険制度検索ウェブサービス「がん制度ドック」(無料)です。ご自身の情報をクリックするだけなので、数分で制度の選別が行えます。利用できる制度を選別した一覧表をプリンターで印字することも可能ですので、制度の手続きを効率的に行えることも、患者さんや家族の負担の軽減となるでしょう。
お金の悩みが解決すると身体のつらさが和らぐことも
お金と身体は切り離されて考えがちですが、実は関係があるのです。がんのつらさは総合的に捉えられるという意味で「トータルペイン」と呼ばれ、「身体」「心」「スピリチュアル」「社会面」の4つのつらさが互いに関連し合っています。トータルペインを図式化したものがこちらになります。トータルペインはマイナス面の関連だけではありません。1つのつらさが和らぐことで、他のつらさが相乗効果で和らぐことも期待できます。例えば、「お金の面で心配が無くなり、夜安心して眠れるようになることで、精神的安定や身体のつらさも和らぐ」といった流れです。
患者さんがより治療に専念できることや、家族が寄り添える環境づくりの一つの方法として家計圧迫の対処は大事だと考えます。