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円安・株高の効果が見え始めた家計の金融資産

2016年7~9月期の資金循環統計が日本銀行から公表されました。2016年に入ってから2期連続して減少していた家計の金融資産の減少にやっと歯止めがかかったようです。とはいえ、過去最高額だった2015年12月と比較すると31兆円ものマイナス。内訳も含め家計の金融資産額はどのように変化したのか見てみることにしましょう。

深野 康彦

執筆者:深野 康彦

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3期振りに家計の金融資産額は増加に

2016年12月19日、日本銀行は同年7~9月期の資金循環統計を公表しました。年前半は円高・株安などを背景に家計が保有する金融資産額は減少。過去最高額だった2015年12月末の1783兆円から、2016年6月末の半年間で37兆円もの減少してたのです。

今回公表された2016年9月末は、3期振りに増加となったものの同年6月末と比較して6兆円増の1752兆円に過ぎません。1752兆円は同年3月末の金額と同じですから、3カ月で基に戻っただけです。1年前、2015年9月と比較しても10兆円の増加に過ぎず、2016年はなかなか家計の金融資産額が増えにくい年だったと言えそうです。

しかし、米国大統領選後、相場つきは一遍。円安・株高が急速に進んだことから、2016年12月末の数字(2017年3月下旬に公表予定)には期待が持てそうです。終わりよければ全て良しではありませんが、結果だけを見れば前言を撤回して2017年も家計は資産を大幅に増やすことができた1年だったと言えるかもしれません。家計の金融資産額は、初の1800兆円乗せをしているかが注目点かも?

現金・預金などの増加が寄与

円安・株高の効果が見え始めたのが2016年9月末の状況と言えそうですが、厳密には減少幅(率)が縮まっただけに過ぎません。増加の寄与は現金・預金、保険の増加が大きく影響しているようです。

9月末の資産残高の内訳をみると、投資信託は前年同月比3.3%減少の88兆円、株式なども同2.2%減少の150兆円になっています。6月末は共に二桁の減少率でしたから、減少にはかなりブレーキがかかったと言えそうです。6月末は英国のブリグジットが決まった後だったことも大幅減の要因と考えられます。

とはいえ、投資信託、株式などは2016年に入って3期連続して減少しています。9月末まで家計の金融資産残高が増えなかったのは、ひとえに円高・株安の進行と言えるでしょう。

なぜなら、現金・預金はマイナス金利導入後も、2016年に入ってからも低金利をものともせず増加を続けているからです。しかも、2016年7~9月期は、前期と比較して増加率が最も高くなっているのです。先に述べたようにブリグジットが前期にあったことから、家計はリスクオフに動いたのかもしれません。

ちなみに増加率は1.4%で、9月末の現金・預金は916兆円になっています。また、現金・預金の残高は10年近くも増加が続いています。貯蓄から投資へ!と言われていますが、家計は堅実経営を行っていることがうかがえます。

債務証券(債券)も増加に転じる

現金・預金は10年近くも残高増が続いていますが、アベノミクスが始まって最も影響が大きかったのが債務証券、いわゆる債券です。日本銀行の金融緩和を受けて長期金利は急低下。個人向け国債を除けば、個人が購入できる国債(新窓販国債)は新規募集が停止したこともその要因です。

しかし、前期から債券の残高は一転して増加に転じています。個人向け国債の金利が大手銀行などの定期預金金利よりも高めであること。2016年から個人向け国債などの公社債と上場株式等の間で損益通算ができるようになったことも債券が増加に転じた要因といえるかもしれません。

増加幅は前期より0.2ポイント減少しましたが、それでも前年同期比3.6%の増加となっています。2期連続3%を超える増加となっていますから、債券人気は復活と言えそうです。ただし、債券の2016年9月末の残高は26兆円に過ぎません。3%を超える増加といっても、金額に直せば9000億円強。本格的な増加は道半ばという状況に変わりありません。
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