まだまだモテたい!
40代半ばの既婚女性たち3人と話す機会があった。それぞれ仕事をもって共働きをし、うち2人は子どももいる。日々忙しく過ごしつつも充実しているようだ。40代の既婚女性が、はっきりと口にした、「モテたい」の意味とは。
それなのに、というべきか、彼女たちの話題の中心は「モテたい」ということ。
「色気がないって言われるの。なんとか色気を醸し出せる女になりたい」
「まだまだモテたいよね」
「この間、友だちと行ったレストランにイケメンがいて、名刺交換しちゃった。今度、ごはん食べにいくんだ」
独身女性と変わらない会話の内容とノリだ。
それを聞いていた40代既婚男性が顔をしかめた。
「家庭を持っていながらモテたいだなんて、この人たちが特殊なの?」
いやいや、男たちだって酒の席で「モテたい」と言っているだろうし、心の奥底ではモテたいなあと思っているのではないだろうか。それを女性が言ったからといって、なじられることもないだろう。むしろ、こういうことを既婚女性たちが言えるようになったことに、「いい時代だ」としみじみ思う。
そう言ったら、男性はふうんと木で鼻をくくったように返事をした。
おそらく彼は認めたくないのだろう。自分の妻も、どこかでこういうことを言っているかもしれないということを。
結婚して妻になり、母になったら、もう女性は「ひとりの女」の面は封印するものだ、封印すべきだという考え方は、いまだに多くの男性の中にあるのだと思う。だが、男性が思うより一歩も二歩も女性たちは先を行っている。
40代半ばの女性は「迷いどき」
「隣の席のイケメンと……」それは、不倫とは違う?
40代の女性たちにとって、結婚生活と恋愛はまったく別物だ。
実際に恋愛するかどうかは別としても、そのベースとなる「モテたい」気持ちは常にもっている。同年代の男性たちは、「モテたい」が原動力となっていろいろなことをがんばってきたはず。
「モテたいからバイトしてギターを買った」
「モテたいからいい車に乗る」
「モテたいから仕事をがんばる」
今の20代には、そういうわかりやすいモチベーションはないが、あのころは確かにあったのだ。男性にとって、あらゆることは「モテたいから」が基本だった。
一方、女性の若いころにはそういうモチベーションがあまりなかった。だが、40代を過ぎて子どもたちも大きくなり、再度、自分に目がいくようになって心の奥底を覗いてみると、シンプルに「モテたい」という言葉が出てくるのではないだろうか。
女性がモテたいと言える時代になったとも言える
「今の私は、“モテたい”がキーワードですよ」
話をしたうちのひとり、マスミさん(45歳)はそう言った。
「自分を鼓舞する意味もあるし、家庭が落ち着いたからもうひと花咲かせたいみたいな気持ちもある。30代はずっと子育てと家庭と仕事でがんばってきたから、もう一度、女に戻りたいとも思う。だからといって実際に恋愛したいとか不倫したいとかいうことではないんです。モテたい、というのは恋愛よりもっと軽い意味合い。まだ女としてイケるかどうかを試したいという程度の気持ちです」
だから、どっぷり誰かと恋したいということではないのだと彼女は強調する。女友だちとどこかに行ったら男性に声をかけられるとか、若いときのように居酒屋で隣のテーブルの男性たちと盛り上がるとか……望んでいるのはそういうことなのだそうだ。
「やっぱり“女としての自分”に自信をもてなくなる年齢なんでしょうね。夫は私を女として見てないとわかってしまっているし。私も夫を男として見ていない。夫婦ってそんなものだと思うけど、それだけじゃやっぱり寂しいし、家庭以外の場所で、誰かに女として認められたいという気持ちが強くなっている。周りの友だちに聞いてもそうです。女としての危機を感じ始めているのかもしれません」
女としての危機。確かに40代後半になると、老いを如実に感じ始めるという女性は多い。40代半ばは、この先をどう生きたらいいのかという女の迷い時でもある。
もうひとり、トモコさん(46歳)の願いは「自分を崇拝してくれる男性がほしい」こと。女として「素敵、イケてる」という言葉を浴びせてもらいたいのだという。それが彼女の自信になり、輝く源となるらしい。
「最近まで職場の後輩でそういう人がいたんですけど、彼が転勤になっちゃって(笑)。いつも熱い眼差しで見てくれる男性がいると、仕事もプライベートも燃えますね」
不特定多数の男性からモテたいとか、「友だち以上恋愛未満」で自分を崇拝してくれる男性がほしい。
40代の女性たちがこんなふうに思い、それを口に出して言うことができる。「いい時代になった」と判断すべきなのかもしれないが、やはりそれは時代が言わせているだけではない。
言葉にする彼女たちに勇気があるのだ。彼女たちのある意味「したたかな」生き方に胸がすく思いがしている。