条件さえ合えばどこでも可の関東、地元にこだわる関西

関東、関西の街選びで根本的に異なるのはどこに住むかを選ぶ際の意識。極論すると、関東では通勤・通学の便と住宅価格・賃料が折り合えばどこでも良いと考える人も少なくないが、関西ではそうした選択はしない。「住みやすい街選び(関西)」ガイドの田中和彦氏によると、関西の人間は地元意識が強く、地元を離れたがらないという。

「特に京都府、大阪府、奈良県ではその意識が強く、さらに県内でどの地域に住むかにもこだわります。たとえば、大阪府は明治になるまで、河内国(大阪府東部)、和泉国(大阪府南西部)、摂津国(大阪府北中部と兵庫県の一部を含む)とおおむね三大別(一部に含まれていない地域などもある)されており、南部の和泉に住んでいる人は摂津には住もうとしません。もっと地元意識の高い人の中には『大阪市福島区で住むならあみだ池筋より東だよね』と道一本にもこだわります」。

自分が住むべき場所を自分で決めているので、関東のように成功したら六本木に住みたいなどといった感覚はなく、いくら成功しても芦屋に住みたいという考えはないとも。

神戸市夜景

兵庫県で最も知られているのは神戸市だが、関東その他の地域に住んでいる人はそれ以外は知らないという言い方も(クリックで拡大)

ただし、比較的その感覚が薄いのが兵庫県。「他府県に比べると県民意識は薄く、住まいを聞いて兵庫県と答える人は少ない。一方で神戸市、芦屋市などに住む人は地元意識が強く、居住地を聞かれると神戸、芦屋などと答えますね」。

これは他府県に比べ、兵庫県が新しい街だからだろう。その意味では居住地を聞かれて神奈川県と答えるより、横浜、鎌倉などと答える人が多い神奈川県と兵庫県は似ているのかもしれない。港町であり、坂の多い街である点も共通だ。

こうした地元意識があるため、地元の人が良しと認めていない場所についての開発は遅れ気味で利便性が高くても住宅価格・賃料は安い傾向がある。たとえば京都では四条通から御所までのエリアが良しとされるため、それよりも南側ではあまり開発が進んでいない。京都駅の南側になるとさらにその傾向は強く、近年、新しい宿泊施設ができたことで多少動きつつはあるが、北側に比べると低調。安く買う、借りるを考えるなら、そうした地元での認知度の高い地域を狙うという手があるが、地元の人にはあまり評価されない可能性もあることは付け加えておきたい。

東西南北、海山の関係で土地を考える関西

鉄道、地下鉄などの公共交通網が網の目のように開発されてきたこと、関東平野が広すぎて目印となる山、海などの位置関係が分からないことなどから、関東の地理は非常に分かりにくい。誰かに道を教える時に駅を降りて北に向かうという案内をしないことからも分かるように東西南北で位置を確認するという習慣もない。これに比べると関西はいくつかのルールを覚えてしまえば非常に分かりやすい。

もっとも分かりやすいのは京都市中心部だろう。「道路が東西南北に碁盤の目のように巡らされているので、ルールを覚えてしまえばどこへ行くのも容易です。京都では上ル、下ル、東入ル、西入ルという言い方(表記はさまざま)で道案内をされますが、上ルは北へ、下ルは南へ、東入ルは北を上に考えると右へ、西入ルは左へと覚えてください。東西南北自体は京都駅を背に京都御所が北と覚えれば分かりやすいでしょう」。

奈良

奈良の場合の目印は若草山。関東の場合は平野部が広すぎて山が見えない……(クリックで拡大)

あるいは神戸。神戸の場合には北側に山があり、南側が海。その位置関係が分かったら、自分がどこへ向かっているかが分かる。「大阪の場合も中心部は碁盤の目、奈良市内は若草山が東です」。

通勤で泣かずに済む関西、ツラい関東

関西は鉄道路線もシンプルだ。関東の場合には複雑に乗入れし、郊外から都心部を通過して再度郊外に向かう、半円状に走る路線があったりもするが、関西の路線は基本中心部から郊外へ向かっており、複数路線が走っていても並行して同じ方向に向かっている例が大半。何度か路線図を見て乗換を経験すれば、迷わずに済むと思う。

そして、その結果、関西では徒歩でも、鉄道利用でも、ショートカットがしにくい。目的地が斜め方向にあっても、京都の道路は直角に曲がることしかできない。鉄道でも一度中心部に戻って他路線を利用することになるのだ。

大阪中心部

関西で通勤が辛い路線は大阪に多いが、関東に比べればかなりまし。写真は古い建物が多く残されている大阪市中心部(クリックで拡大)

鉄道では通勤が気になるところだが、ラッシュ時が痛勤になるのは関東だけと思っても良いかもしれない。国土交通省都市鉄道政策課が年に1回、公表している都市鉄道の最混雑区間における混雑率データ平成27年度版によると、関西エリアで混雑度が最も高い路線は大阪市営地下鉄御堂筋線の梅田~淀屋橋間で150%。これに対して関東のトップはJR東日本総武線(緩行)の錦糸町~両国間の199%となっており、関東では全84路線46路線までが150%以上。関東で言えば半数以下の空いてる路線が関西の混んでる路線に該当すると考えれば良い。

ちなみに関西で混雑度が高い路線は御堂筋線以外では阪急電鉄の神戸本線、宝塚本線、大阪市営地下鉄中央線、近畿日本鉄道奈良線、同大阪線、南大阪線、神戸市営地下鉄の西神・山手線、阪急電鉄京都本線などとなっている。

30分が遠い関西、30分ならと喜ぶ関東

こうした交通事情は不動産の価値も左右する。たとえば京都~大阪間は30分。関東の感覚からすると近いと思うだろうが、関西の人たちにとっては物理的な時間としても、さらに前述したように文化圏も異なることから、遠いと感じる。

「心理的な距離感もポイントで大阪の人は京都は遠いと思っていますが、同じようにバス利用で30分かかる伊丹空港はそれほど遠いとは思っていません」。

こうした地元の人にとっての遠い、近いの感覚を知らないまま、関東の時間、距離の感覚で不動産を選ぶと割高な物件を選んでしまうこともあり得る。「河内長野市という、大阪の中心部から電車で25分くらいの街があります。そのくらいなら近いと思うのが関東の感覚だと思いますが、関西では遠い郊外という感覚。のどかで良い街ですが、こんなに近いのに安いと判断すると間違えかねません」。

また、鉄道利用では路線による運賃格差も意識しておくべき。関西では私鉄、地下鉄が高く、それに比べるとJRはお得。たとえば京都市営地下鉄の初乗りは210円(!)で、大阪市営地下鉄が180円、JR西日本は120円。京都市営地下鉄は日本一高い初乗り運賃と言われているほど。会社から通勤費が支給されるならまだしも、そうでない場合にはけっこう痛い出費になるかもしれない。

坂の閾値が低い関西、坂だらけが普通な関東

京都の坂

関東の坂は京都の清水寺周辺のような坂が数えきれないくらい続く(クリックで拡大)

最後に地形的な差異をひとつ。関東の、特に都心部や台地上では坂があるのは当たり前だが、関西はその感覚からすると恐ろしく平坦である。関西では坂は山に向かうところにあるもので、山がないのに凸凹があるのは不思議に思えるらしい。

「関西で坂といっても関東の人にとってはほぼ平坦に思えるくらい、関西での坂の閾値は低い。関東から転勤などで来た場合には関西は移動しやすいのではないでしょうか」。

ちなみに最近は京都と東京を比べ、京都のどこと東京のそこが似ていると書籍が話題になっている。では関東、関西全域でやってみたらどうなるだろうと考えたのだが、あまりに広範になり過ぎて難しいことが判明。前述の神戸と横浜以外で意見の同意を見たのは都心からの距離と歴史・文化の蓄積という点から小田原市と姫路市だが、両市とも通勤圏としてはやや遠め。あまり参考にはならないようだ。申し訳ない。



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