主人公が変人だらけの2016年秋ドラマ

今年の秋ドラマはヘンな主人公揃い

今年の秋ドラマはヘンな主人公揃い

前回記事「逃げ恥が視聴率UP、トップはドクターX!秋ドラマ概況」で触れましたが、秋ドラマは主人公が変人か、変人に巻き込まれるものがほとんど。
これを書いている時点でプライムタイム(20~23時)放送の現代劇で数えると
  • 主人公が変人:8作『レディダ・ヴィンチの診断』『相棒season15』『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』『ドクターX ~外科医・大門未知子~』『Chef~三ツ星の給食~』『THE LAST COP/ラストコップ』『スニッファー 嗅覚捜査官』『IQ246~華麗なる事件簿~』
  • 変人に巻き込まれる:2作『砂の塔~知りすぎた隣人』『レンタル救世主』
  • どちらでもない:5作『カインとアベル』『逃げるは恥だが役に立つ』『木曜ミステリー 科捜研の女』『コピーフェイス~消された私~』『キャリア~掟破りの警察署長~』
『逃げるは恥だが役に立つ』はまともそうに見えるけど「契約結婚」するとかやっていることはおかしい、という見方もあるでしょうが、主観的に判断させてもらいました。


今年になって急増

いつの間にこんなに増えたのか? それを探るために2007年の『ハケンの品格』以来、ヘンな主人公が好きな日本テレビ系水曜22時枠を見てみましょう。

2007年以降のヘンな主人公ものは
  • 2007年:『ハケンの品格』
  • 2008年:『斎藤さん』
  • 2009年:『キイナ~不可能犯罪捜査官~』
  • 2010年:『曲げられない女』『黄金の豚-会計検査庁特別調査課-』
  • 2011年:『家政婦のミタ』
  • 2012年:『ダーティ・ママ!』
  • 2013年:『ダンダリン 労働基準監督官』
  • 2014年:『ST 赤と白の捜査ファイル』
  • 2015年:『○○妻』(主人公は夫ですがタイトルが妻なので)『偽装の夫婦』
と、ここまで年1~2作ペースです。ところが今年になって
  • 悪意にシンクロする女刑事『ヒガンバナ~警視庁捜査七課~』(堀北真希)
  • 自分本意なホテル社長『世界一難しい恋』(大野智)
  • 無表情なすご腕不動産営業ウーマン『家売るオンナ』(北川景子)
  • あこがれの女性雑誌編集部に入るのに一直線『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(石原さとみ)
と全作ヘンな主人公、昨年秋の『偽装の夫婦』から数えると5作連続。去年から今年にかけて変な主人公ものが急増したようです。


脚本家のツートップが原因?

ヘンな主人公ものの中心にいるのは『ドクターX~外科医・大門未知子~』のメイン脚本・中園ミホ作品。以前に『やまとなでしこ』や『ハケンの品格』もヒットさせています。これについては『ハケンの品格』放送時、ガイド記事「麗子桜子春子・ヘンなオンナは七年に一度くる」でまとめました。

要約すると中園ミホは『やまとなでしこ』の前に松雪泰子主演の『白鳥麗子でございます!』を担当し、これが「ヘンなオンナ」主人公の原点。そして『白鳥麗子』が1993年、『やまとなでしこ』が2000年、『ハケンの品格』が2007年と7年おきなので、次は2014年に「ヘンなオンナ」がくる、そしてヒロインとして米倉涼子はどう?とまとめました。『ドクターX』は2012年から2014年をまたいで続いているので、予想はだいたい当たっています。

脚本家でヘンな主人公ものを得意としているもう一人は遊川和彦。『女王の教室』『家政婦のミタ』が大ヒット。他に『曲げられない女』『○○妻』『偽装の夫婦』など。極端な設定の中で真実を求めるのがテーマになっています。『純と愛』は変人ばかりの登場人物にヒロイン・純(夏菜)が振り回されるストーリーで最近の朝ドラの中では評判最悪。当たりハズレが激しいのも特徴です。


変人だからこそ謎を解くことができる刑事たち

もう一つのヘンな主人公が目立つのは『IQ246~華麗なる事件簿~』などの刑事・事件もの。この路線の原点は1991年の映画『羊たちの沈黙』。影響を受けて世界中で異常犯罪ものが流行し、日本のテレビドラマでも『眠れない夜をかぞえて』『沙粧妙子-最後の事件-』などがヒットします。

『羊たちの沈黙』の大きな要素として「異常犯罪者であるレクター博士は異常犯罪者の心理がわかる」ため捜査協力をするということがあります。この部分をうまく日本流に消化して、変人探偵を主人公にしたのが1999年の『ケイゾク』に2000年の『TRICK』。そして2000年に始まり2002年に連ドラ化された『相棒』が人気シリーズになり、刑事・事件ものの主流になりました。



ヘンなキャラクターへの期待

なぜこんなにヘンな主人公が流行るようになったのでしょうか? 90年代を代表する刑事ドラマ『踊る大捜査線』と2000年以降を代表する『相棒』。二作品の差にヒントがあると考えます。

青島刑事(織田裕二)は警察の抱えるさまざまな矛盾に苦労しますが、変人である杉下右京(水谷豊)は組織のしがらみなどは気にせず、勝手に動いて事件を解決。変人は普通の人にはできないことができる新しい形のヒーローとして描かれています。視聴者は現状のいきづまりに対して破壊的な改革を期待しているんでしょう。

ただこれだけでは、ここ1,2年の急増が説明できません。これは演じる俳優、特に女優の事情があるんじゃないでしょうか。



“アレルギー”がなくなった

『女王の教室』の後、続編を望む声は強くありましたが、天海祐希の次回作は売れない演歌歌手が主人公の『演歌の女王』でヒットせず。『家政婦のミタ』も続編を松嶋菜々子が断ったといわれ、米倉涼子も『ドクターX』の2013年や2014年のときには「もうしない」といったといわれています。

続編に出ない理由はイメージの固定化。それも『ドクターX』のように明るい役ならまだいいのですが、『女王の教室』『家政婦のミタ』は冷たく無表情なキャラ。これではCMなどのイメージに影響するのではないかという心配がありました。

しかし天海祐希は昨年、遊川和彦脚本の『偽装の夫婦』に出演。松嶋菜々子は『家政婦のミタ』のキャラをイメージさせる役を『砂の塔』で演じています。そして米倉涼子は『ドクターX』に出演しヒット中。

視聴者も成熟して、冷たいキャラを演じているからといって俳優がそんな人だとは思わなくなりました。『ごちそうさん』の「イケズ」で注目されたキムラ緑子とか悪女キャラで人気の菜々緒とかもいます。女優のアレルギーがなくなり、「ヘンな主人公」企画が通りやすくなっているのではないでしょうか。

そうだとすると今後も「ヘンな主人公」が今後も活躍していきそうです。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。