トランプ大統領で世界はどうなるか?

11月8日、アメリカ大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利を収め、第45代アメリカ合衆国大統領に就任することが決まった。当初は泡沫候補と軽視されながら、大本命のヒラリー・クリントン元国務長官を大差で破る地滑り的な勝利となった。なぜトランプ氏は勝利することが出来たのか、トランプ大統領の誕生で世界はどうなるのか。(以下、敬称略)

トランプ大統領で世界はどう変わるか?

トランプ大統領で世界はどう変わるか?



あらゆる世論調査が外れることに

ありとあらゆる下馬評を覆し、大逆転で勝利を飾ったドナルド・トランプ。しかもワンサイドとも言える地滑り的勝利。

この結果はアメリカの政治専門家にとっても想像すら出来なかったことは、テレビ中継に出演した面々が揃って青ざめていたことからも想像がつく。
なぜこれほどまでに専門家やメディアの予想が外れたのか。

隠れトランプ支持者

それは事前に行われた調査の結果が実態を表していなかったことにある。
メディアや関係者の調査ではヒラリー支持者がトランプ支持者を大きく上回り、優勢は揺るぎないと言われていた。

ところが投票箱の蓋を開けたら、事前の調査とはかけ離れた数の票がトランプに投じられていた。

つまり「隠れトランプ支持者」が大勢いたのである。
それはなぜなのか?

記名式アンケートにはホンネを答えないアメリカ国民

アメリカはホンネとタテマエを使いわける国民性だ。出身や人種など異なる事情を抱えた多くの人々が暮らすアメリカ社会では、ホンネは騒動の元となりかねない。

よってホンネとタテマエをうまく使いわけるのが一つの処世術であるが、まして過激な発言で眉をひそめられていたトランプを支持していることを明らかにすればコミュニティでの居心地も悪くなりかねない。

よって回答者がわかる形での調査ではトランプ支持であってもそれを隠した可能性が高い

ヒラリーの自滅

だが、それだけではこの地滑り的勝利は説明できない。今回は「隠れトランプ支持」に加え、ヒラリー自身にも問題があったことに触れなくてはならない。

それはヒラリーの自滅である。

ヒラリーは今回、大統領本選でも民主党の大統領候補者選びでも、日和見的な発言が多かった。ライバル候補の主張が人気を集めると、簡単に自分の意見も転換したのだ。

たとえばTPP(環太平洋経済パートナーシップ)の締結についても、ヒラリーは自ら推進派であったにもかかわらず、トランプがTPP反対で票を伸ばすと一転して反対に転じた。

そうした態度により支持者の信用を失ったことは大きな痛手となった。

テレビ討論会が暴言合戦になり潮目が変わった

もう一つ、支持を落とすきっかけになったのがテレビ討論会での言動である。
長年、国の政治に関わってきたヒラリーは、トランプに比べて経験豊富であるのは明らかであり、テレビ討論会でも淡々と政策を訴えることで大きな票に結びつくものと思われていた。

ところが実際は違った。
ヒラリーは多くの時間をトランプの非難に費やしたのだ。

「暴言王」と言われるように、トランプがその言葉の悪さで相手を翻弄するのは心理作戦の一つに過ぎない。よってヒラリーはその土俵に乗らず、毅然とした態度で政策論争をするだけでよかった。

ところがトランプの暴言に応じ、ヒラリーは政策そっちのけで暴言合戦に参加した。それを見た支持者が失望したことは、討論番組をやる度に支持率が下がったことからも明らかであった。

トランプの女性蔑視発言などが問題になっていたものの、テレビ討論でのヒラリーの失敗により選挙戦の潮目が変わった

トランプとはどんな人なのか

ドナルド・トランプ本人についてはすでに当欄2月5日付「アメリカ大統領選挙、トランプ大統領はあり得るか?」で解説しているのでそちらを参照していただきたいが、果たして大統領として大丈夫かという不安の声が聞こえる。

彼のこれまでの言動から危険人物というイメージが(とくに日本では)持たれているが、実際のところ、一連の言動が彼の実体を表しているかと言えば、そうとも言えない。

ビジネスマンでありエンタテイナーでもあるトランプ

トランプは不動産会社オーナーとしてニューヨークで大成功を収め、またテレビでも人気司会者として活躍した人物だ。

ビジネスマンとしての彼は現実主義者であり、物事には是々非々で当たる人物である。

またエンターテイナーとしての彼にとって過激な発言はリップサービスだ。
そんな過激な発言が選挙戦では問題となったが、そんな度が過ぎるやり方こそ自分のスタイルであることを彼は認識し、意図的にやっていたと考えるのが妥当だ。従って彼の選挙戦での発言がそのまま全て実行されると判断するのは早計だ。

外国への影響は?

トランプ大統領の誕生について不安視する意見が外国にもある。だがそれは、彼の次の言葉から杞憂であると思わせる。

「アメリカは世界の警察をやめる」

大統領に就任したら、外国に派遣していた米軍を引き上げることや、他国への介入から一定程度手を引くというものだ。

これは悪いことではない。これまでのアメリカは、世界の警察を名乗って中東など他国に度々介入してきたが、その結果、イラクでは国家が崩壊し、軍部の残党がISIS(通称:イスラム国)というテロリスト集団となってしまうなど、悪影響があったのも事実だ。

こうしたアメリカの「過介入」「過干渉」を行わないという意味であれば、トランプの言う「アメリカは世界の警察をやめる」は歓迎すべきである。

トランプの人物像についてはマスコミによって作り上げられた部分が多分にある。よって彼の本質を見極めるのは、就任後の具体的政策を見てからで遅くない。

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