電車内での化粧はいつから流行しはじめたか?
東急電鉄が制作した、電車内で化粧する女性に向かって登場人物が「みっともない」としゃべるコマーシャルが賛否両論を呼んだ。「人前で化粧はすべきでない」「朝は忙しいのだから電車内で化粧してどこに問題があるのか」と意見は割れているようだが、感情論はさておき、一体いつから電車内での化粧が流行しはじめたのか。出勤前に時間がない
このテの問題は感情が絡むと話が複雑になるので、いいか悪いかはひとまず置き、どんなきっかけで電車内メイクが増えたかを振り返ってみたい。この件に関する報道各社の調べを見ると、電車内での化粧について女性の約8割が「よくない」と回答し、約2割が「問題ない」と回答しているという。
注目したのは「問題ない」と答えた人の中で「出勤前にメイクする時間がないから」という意見が多かったことだ。
イベントコンパニオンがきっかけ?
30年ほど前まで通勤電車内で化粧する人はまず見かけかったが、ある頃を境目に急増した。イベントコンパニオン全盛期だ。イベントコンパニオン(以下、コンパニオン)はモーターショーやAV家電ショーなどの見本市で商品説明やイメージを伝える女性で、その多くは女子大生のアルバイトだった。
そのコスチュームが当時は水着さながらの露出の大きなものだったことから、撮影目的のマニアなどが生まれるなどブームとなった。
会場に向かう電車内で化粧するコンパニオンたち
しかし仕事はハードで、朝早くに会場入りして準備をしなくてはならず、自宅でゆっくり化粧をしている暇などなかったのが実情で、彼女らは混雑する通勤電車の中で化粧をしていた。私は90年代はじめに海浜幕張に通勤していた。近くには幕張メッセがあるため、通勤電車には会場に向かうコンパニオンが乗り合わせ、その多くが人目もはばからず化粧していた。
むろん日本全国がそうだったとは言わないが、少なくとも私の通勤経路ではそうで、職場でもかなり話題になったのを記憶している。
レースクイーンとの違い
派手で露出度の高いコスチュームは元々レースクイーンからその流れを汲むが、コンパニオンとレースクイーンでは遭遇する場所が大きく異なる。レースクイーンの行き先はあくまでサーキットであり、一般人の通勤経路とは異なっているため、仮にレースクイーンが電車内でコンパニオンと同じことをしていたとしても、一般人の目に触れる度合いはかなり少ない。
一方、コンパニオンの行き先は都市部の会場のため、一般人と同じ通勤電車に乗ることになり、化粧を見られる機会はより増したと考えられる。
当時は女性のほうが批判的だった
電車内で化粧する女性がいると、男性は見ないふりをしてもつい目が行ってしまうため、セクハラと言われはしまいかと困惑が先に立った。一方、同性である女性のほうが手厳しかった。同じ電車に乗り合わせた女性らが、「はしたない」「みっともない」という言葉で実際に批判していたのは事実である。
だが、年々電車内メイクは増えていった。
人間は繰り返し見るものに慣れてしまう
まず、新たに社会人になった女性たちの間で電車内メイクが増えた。その一部は電車内メイクに見慣れて抵抗感がない人かもしれないが、もう一つの可能性として、コンパニオンをしていた大学生が卒業して就職し、それまでと同じように電車内メイクしている場合も考えられる。
こうして電車内メイクが増えるにつれ、不満を言う人は減っていった。その光景が日常化したことで見慣れてしまったからだろう。
断続的に話題になる電車内メイク
電車内での化粧は古くて新しい問題で、今回再び東急電鉄のCMによって話題になったが、このように断続的に現れてくるのは、女性の化粧は着替えに似ていて本来であれば他人が見ることがないはずの行為という点が根本にあるからだろう。この現象についての統計などないため、あくまで仮説とするが、以上、電車内メイクが増えた経緯を振り返った。