マイコプラズマ肺炎は感染拡大予防のために出席停止が必要
マイコプラズマ肺炎は痰や唾液、咳で人にうつる飛沫感染です。学校や会社など集団生活している環境で感染が拡がってしまいます。まずは感染拡大をとめるために、マイコプラズマ肺炎になった場合は出席、出勤してもよいのかをQ&A形式で見てみましょう。Q.マイコプラズマ肺炎で出席停止、出勤停止の法律はある?
A.学校では、学校保健安全法で登校可能かどうか決められています。学校保健安全法によると、「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまでの期間の出席停止の措置が必要」と考えられています。そのため、マイコプラズマ肺炎とわかってから登校することはできません。一方で大人の場合は、会社に行ってはいけないという法律はありません。
Q.出席停止の期間、出勤の目安は?
A.マイコプラズマ肺炎は、どの時点で感染のおそれがなくなると言えるのかが判りにくいため、明確に出席停止期間が定められているインフルエンザなどに比べ、判断が難しいです。明確なラインはないものの、適切な抗菌薬を服薬し、解熱、または咳症状の回復が見られれば、出席しても良いと判断する医師が多いと思います。
感染症の多くは病原体が侵入して免疫がない場合に発症します。そのため、抵抗力があれば感染は拡大しません。しかし簡便かつ迅速に個々の抵抗力を判断するのは困難です。また、マイコプラズマ肺炎は、発症する前の1週間程度と発症してから数週間は、病原体が咳などで出るため感染力があります。しかし、そこまで長期間の欠席、欠勤は現実的ではないでしょう。マイコプラズマと診断された場合、可能な範囲で、発熱時や咳がひどい時には欠勤する方が良いと思われます。もちろんその後も飛沫感染による感染拡大防止のため、マスク着用は必須です。
マイコプラズマ肺炎小学生だけでなく乳幼児も感染・発症する
マイコプラズマ肺炎の好発年齢は6~12歳の子どもで、発症年齢のピークは8~9歳。しかし、大人でもかかることがあります。年齢による症状の出方の違いと、それぞれの治療方法について解説します。Q. 小学生はマイコプラズマ肺炎になりやすい?
A.マイコプラズマ肺炎には、免疫力が強い人ほど症状がひどくなるという特徴があります。小学校以上になってくると、免疫反応が強く起こりやすくなります。その上、小学生は大人に比べて免疫反応を抑える機能が弱いことから、より肺炎を起こしやすいと考えられています。体内にマイコプラズマが侵入すると、それを排除しようとして白血球がその侵入した場所に集まってきます。白血球の数が多かったり、働きが強いと、その排除する場所で炎症という現象が起きます。免疫反応が強くなると、炎症の程度も強くなり、肺炎になってしまうのです。
Q.乳幼児はマイコプラズマ肺炎を発症しにくい?
A.前述の通り、マイコプラズマ肺炎には、免疫力が強い人ほど症状がひどくなるという特徴があります。そのため、免疫機構の弱い乳幼児はマイコプラズマ肺炎を起こしにくいのです。炎症が起こらないために、肺炎まで至らず、感染しても風邪のような症状で軽く済むことが多いです。ただし、肺炎マイコプラズマに感染はしますが、肺炎までにならないことが多いとされています。この時期にマイコプラズマに感染するのは、保育園などの集団生活か兄や姉または父、母から感染することが多いです。
Q.新生児や乳児のためのマイコプラズマの治療薬はあるの?
A.前述した通り、新生児や乳児の場合、マイコプラズマ肺炎による症状は、軽症なことが多いです。しかし咳、鼻水などの症状で哺乳が低下したり、発熱で機嫌が悪くなったりすることもあるため、症状に応じた対症療法が必要になることがあります。マイコプラズマに効果のある抗菌薬の中で比較的安心して使用できるのは、マクロライド系抗菌薬(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)です。後味が苦く、嫌がるお子さんは多いかもしれません。新生児では、生後2週間までのマクロライド系抗菌薬の使用では、胃と十二指腸の間にある胃への逆流を防ぐ幽門と呼ばれる部分が厚くなって、胃の内容物が十二指腸に流れない肥厚性幽門狭窄症という病気になる可能性があることから、抗菌薬の必要性を十分に考える必要があります。また、中にはマクロライド系抗菌薬が効かない耐性菌も存在します。
そこでマクロライド系の他にもマイコプラズマに効果のある抗菌薬はあります。テトラサイクリン系とキノロン系、ニューキノロン系です。テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリンなど)は、歯が黄色くなる可能性があり、キノロン系抗菌薬ニューキノロン系抗菌薬も、トスフロキサシンを除くと、関節や発育への影響から使用しにくいため、新生児、乳児ではできれば避けた方がよいと思われます。テトラサイクリン系抗菌薬およびニューキノロン系抗菌薬については、マクロライド系抗菌薬での効果がない時に、そのメリットとデメリットを考えた上での使用になります。
妊娠中のマイコプラズマ肺炎感染による胎児への影響・薬の副作用
妊娠中にマイコプラズマ肺炎にかかってしまったら・・妊婦になると気になることがいっぱいです
Q.妊娠中のマイコプラズマ感染と、胎児への感染・影響は?
A.マイコプラズマ肺炎になったとしても、胎児への影響はありません。マイコプラズマは、主に気道に感染、増殖するため、胎盤を介して胎児に感染することはないと言われています。妊娠中に感染してしまっても、過剰な心配は不要です。
Q.妊娠中に肺炎を起こしたらどうなる?
A.妊娠中に限らず、成人がかかると肺炎を起こし、さらに重症化しやすいので、妊婦も注意が必要です。前述の通り、胎児への感染による影響はありませんが、妊娠初期には咳によるお腹の圧迫(いわゆる腹圧)、加えて後期にはお腹による肺への圧迫で、通常以上に息苦しさを感じてしまうことが多いため、もちろん感染しないに越したことはありません。
Q.妊娠中のマイコプラズマ肺炎の治療法・飲んでよい薬は?
A.どの薬も100%安全とは言いきれないため、妊娠中は薬を使用しないことが多いです。しかし、妊娠中でもマイコプラズマ肺炎の症状改善を優先して、マクロライド系抗菌薬が処方される場合もあります。マクロライド抗菌薬は妊婦さんにも比較的安全と考えられているためです(マイコプラズマへの効果はありませんが、マクロライド系以外にもペニシリン系やセフェム系といった感染症に有用で、かつ比較的安全といわれる抗菌薬もありますので、抗菌薬についても適切な使用が可能です)。マイコプラズマ肺炎は、軽症なら抗菌薬を使用せずに自然治癒が期待できます。いずれにしても重症化することのないよう、自己判断をせずに適宜医療機関を受診して下さい。
Q.妊娠中の抗菌薬の服用は不安…副作用は?
A.テトラサイクリン系の抗菌薬を妊娠中期以降で使用すると、赤ちゃんの歯が黄色くなるおそれがあります。キノロン系抗菌薬は人体に危険な事を証明するデータはありません。一方で薬の説明書に妊娠中使用不可といった記載があるのを見つけ、強い不安を感じてしまう方もいるようです。この記載は主にネズミやウサギに「高用量」を投与した際、発育抑制や骨格異常が生じたという結果に基づくものです。妊娠中、自己判断での市販薬の服用や乱用はもちろん避けなくてはなりませんが、医療機関で妊娠中であることを伝えた上で適正に処方されたものであれば、副作用について心配しすぎることはありません。症状を適切に緩和させて、ストレスの少ない妊娠生活を送ってください。
マイコプラズマ肺炎については、「マイコプラズマ肺炎の症状・治療・予防法」で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
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