歯科インプラント

顎の骨が無くてもインプラント治療できるってホント?

歯科インプラントを埋入するには土台の骨が不可欠です。厚みがあって質もしっかりしている骨が望ましいですが、様々な理由でベストな状態を保てない場合もあります。そのような場合はどうしたらよいのでしょうか?

梅田 和徳

執筆者:梅田 和徳

歯科医 / 歯科インプラントガイド

インプラント治療のイメージは「顎の骨にボルトを埋める」?

土台になる顎の骨が失われていたらインプラントはできない?

土台になる顎の骨が失われていたらインプラントはできない?

歯科インプラント治療の認知度が高まっている昨今。インプラント治療がどのようなものか、大まかにでもイメージがついている方は増えてきているでしょう。そして多くの方のインプラントに対するイメージは「顎の骨にボルトを埋める」ではないでしょうか? 植物を育てるにも、家を建てるにも土やコンクリートといった土台があって柱や苗を植えることができます。では何らかの理由で土台が失われてしまったり、やせ細ってしまった場合はインプラント治療を受けることはできないのでしょうか?

土台が失われる大きな理由

インプラント治療を必要とする場合は、すでに歯を失ってしまっているケースがほとんどです。歯を失ってしまった理由は、虫歯の悪化、歯周病の悪化、不慮の事故など様々ですが、歯を失ってしまうと歯を支えていた周りの歯槽骨にまで影響が及び骨が減っていきます。これを骨吸収といい、虫歯菌や歯周病菌によるダメージや歯ぎしり、入れ歯やブリッジの土台による負担など完全に歯を失ってしまう前からジワジワと骨吸収が引き起こされる場合もあります。

骨が吸収される大きな理由が分かっていても、どれだけ注意してメインテナンスしていても、骨吸収が起こってしまうことを避けられないこともあります。実際にインプラント治療を受ける方の大半は何らかの骨不足なのです。

インプラントの長期予後を安定させるために

抜歯後ある程度は自然に骨が回復しますが全体的な高さは低くなるので、インプラントをしっかり支える為の造骨をしてインプラント治療に臨んだ方が長期予後が安定します。

一昔前と違い、短いインプラントでの長期エビデンスも出ており、様々なインプラントメーカーからも発売されています。ですが、可能であれば土台にしっかりと埋められる長いインプラントのほうが支持力が大きく長期的な安定感もありますので、骨造成によって骨を増加させることができるケースであれば造骨することを選択すべきでしょう。

前回記事「上顎臼歯部はインプラントが出来ないってホント?」でもお伝えしましたが上顎臼歯部は非常に骨質が軟らかく、インプラントを安定させるのに苦労する部位です。さらに上顎洞(耳鼻科でいう副鼻腔)がすぐ上にあるので骨の厚みが不足していることも多々見受けられます。すべての歯の中で最も欠損率が高い第一大臼歯の部位に上顎洞の底が位置することが多いので、骨吸収が大きいケースだと1ミリ前後の薄い骨しか無いようなケースも多々あります。

おすすめはステージドアプローチ

4か月前行ったサイナスリフト(上顎洞底挙上しての造骨)他の7本のインプラントは埋入したのですが左上の第一大臼歯部分だけは造骨のみ。造骨後約4か月後インプラント埋入。インプラントは直径5ミリ長さ9ミリを選択。

4か月前行ったサイナスリフト(上顎洞底挙上しての造骨)他の7本のインプラントは埋入したのですが左上の第一大臼歯部分だけは造骨のみ。造骨後約4か月後インプラント埋入。インプラントは直径5ミリ長さ9ミリを選択。

骨が薄くなってしまった場合には、まず造骨のみを先に行う方法「ステージドアプローチ」をおすすめします。例えば骨の高さが4.5ミリあり質も悪くない状態であれば、造骨と同時にインプラント埋入を行うことができますが、それ以下の場合はステージドアプローチで臨んだ方が安心かと思います。もちろん、全体の咬合バランスや生活習慣、口腔状態など様々な条件が合えば厚みが薄くても同時にインプラント埋入することも可能です。その他、ブリッジタイプの支台となるようなインプラントの場合は欠損部の咬合力負担を過剰に受ける為しっかり造骨してからのステージドアプローチをおすすめします。

大切なのは諦めずに治療を受けること

骨の量が少ないから、骨の質が十分でないからインプラント治療は無理だろうと考えている方、現在は様々な方法で土台である骨の基礎を固める方法で問題がクリアになっていきます。最初から諦めずにまずはかかりつけの歯科医院でご相談されてみてください。

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