人気上昇中の旅先ノルウェー、その理由とは?
いま、ノルウェーが人気です。ノルウェーを訪れる外国人観光客の数は右肩上がり。今年7月までの日本人宿泊数も前年比プラス12%と好調です。理由のひとつは近年のノルウェークローネ安。2016年10月現在、1ノルウェークローネ(NOK)=約12円ですが、前回私が訪れた2008年は1NOK=約20円だったので、感覚的にもだいぶちがいます。また、昨今の海外情勢の不安定さから北欧を選ぶ人もいるようです。
2013年に映画『アナと雪の女王』の舞台になったことで、アメリカ人や若い世代からの注目も高まりました。映画の美術スタッフはリサーチのためにノルウェー各地を周り、インスピレーションを得たといいます。もちろん「このシーンはこの街がモデル」と明確にうたわれているわけではありませんが、ノルウェーを旅していると映画のワンシーンが思い浮かぶ場所がたくさんあるんですよ。
フィヨルドって冬でも観光できるの?
ノルウェーの見どころといえば、フィヨルドとオーロラが2大人気。今回はフィヨルドを楽しむ3泊5日の旅をレポートします。フィヨルド観光のハイシーズンは夏ですが、場所によっては1年中観光できます。夏よりすいている秋冬はのんびり楽しめるし、アナ雪の世界観に浸りやすいのもやっぱり冬。フィヨルドクルーズ船の乗員も「混んでいないし、黄葉や冠雪する山々もきれいでおすすめだよ」と秋冬のフィヨルドのよさを熱弁していました。もちろんしっかりとした防寒対策は必須ですが。
ちなみにフィヨルドとはノルウェー語で「内陸部に深く入り込んだ湾」という意味。300万年前にヨーロッパ大陸を覆っていた氷河が溶けて流れ出るときに岩を削り、そこに海水が流れ込んで入り江が作られました。ノルウェーの西海岸はほぼすべてがフィヨルドになっていますが、そのなかでも“フィヨルドの王様”といわれ、長さ・深さともに世界最大級なのが今回訪れた「ソグネフィヨルド」です。
2日半の有休でOK!3泊5日の弾丸ノルウェー旅プラン
北欧3泊5日と聞くと、かなり弾丸旅行なイメージですよね。正直、私自身も行ってみるまで3泊5日でここまで楽しめるとは思っていませんでした。ちなみに今回のテーマはフィヨルドですが、北極圏の街トロムソを起点としたオーロラ観賞の旅も最短3泊5日から可能。フィヨルドとオーロラの両方を楽しむなら6泊以上は欲しいですね。ノルウェーには直行便がないので、ヨーロッパで乗り継ぎます。今回は東京(成田)発着、スカンジナビア航空(コペンハーゲン乗り換え)で、フィヨルド観光の玄関口であるベルゲンへ向かいました。
※今回のスケジュール
【1日目】午前:東京(成田)発、空路、ベルゲンへ。(途中、コペンハーゲンにて乗り継ぎ)。夜:ベルゲン着(ベルゲン泊)
【2日目】午前:ベルゲン観光。午後:フィヨルド観光(鉄道、バス、船を乗り継いでフロムへ、フロム泊)
【3日目】午前:フロム鉄道、ベルゲン鉄道で、ミュールダールを経由してオスロへ。午後(夕方):オスロ観光(オスロ泊)
【4日目】午前:オスロ観光、午後:オスロ発、空路、スカンジナビア航空にて東京(成田)へ(途中、コペンハーゲンにて乗り継ぎ、機中泊)
【5日目】午前:東京(成田)着
初日と最終日は移動日。復路は日本に午前中に着くスケジュールなので、週末をからめれば最短2日半の有休で行けちゃいます。ベルゲンへはコペンハーゲン以外にも、ヘルシンキ(夏季のみ)やアムステルダム、ロンドンなどから直行便があります。
それではさっそく現地でのプランを紹介していきます!
【2日目:午前】ベルゲンの定番スポットを観光
弾丸旅行のスタートは、ノルウェー第2の都市ベルゲンから。フィヨルド観光の玄関口であると同時に、街自体にも見どころがたくさんあります。なかでも必見はユネスコ世界遺産にも登録されている「ブリッゲン地区」。ベルゲンはもともとノルウェー沖合で獲れる干しダラの取引で栄えた港町。カラフルな三角屋根の木造建築物は、ハンザ同盟時代の事務所や倉庫として使われていました。それからもうひとつ、標高320メートルのフロイエン山にケーブルカーに登るのもベルゲンの定番アクティビティ。7つの山に囲まれたベルゲンの街並みとフィヨルドが一望できて、なんとも爽快! 夏なら山頂でマウンテンバイクやハイキングなどを楽しむのもおすすめです。
【2日目:午後】大自然に感動!いざ、フィヨルド周遊へ
午後からはいよいよフィヨルドへ! ここで活躍してくれるのが、「ノルウェー・イン・ア・ナットシェル(Norway in a nutshell®)」。バス、鉄道、船を組み合わせてフィヨルド周遊ができる個人旅行者に便利な周遊チケットです。乗り継ぎが便利なようにタイムテーブルが組まれているのでそれを参考にプランを立ててもよいし、オリジナルスケジュールを組んでもOK。今回は2日かけてベルゲンからオスロへ向かいましたが、ベルゲン発着の日帰りも可能です。*ベルゲン~オスロ間の交通手段(料金:1770NOK)
・ベルゲン(Bergen)~ヴォス(Voss)……鉄道(ベルゲン急行)
・ヴォス~(Voss)~グドヴァンゲン(Gudvangen)……バス
・グドヴァンゲン(Gudvangen)~フロム(Flåm)……船
・フロム(Flåm)~ミュールダール(Myrdal)……鉄道(フロム鉄道)
・ミュールダール(Myrdal)-オスロ(Oslo)……鉄道(ベルゲン急行)
※以下の移動時刻は2016年10月取材時のもの。スケジュールは季節によって変わるのであくまで参考程度にごらんください。
●【鉄道】ベルゲン→ヴォス/所要時間約1.5時間(13:58→15:14)
まずは鉄道旅から。列車はすぐに街の喧噪を離れ、フィヨルドに沿って走ります。
●【バス】ヴォス→グドヴァンゲン/所要時間50分(15:50→16:40)
続いてバス。車窓には牛が草を食んでいる牧歌的な風景も現れます。後半は急こう配のヘアピンカーブを13も超えて谷底へ向かい、スリル満点!
●【船】グドヴァンゲン→フロム/所要時間2時間(17:30→19:30)
最後はこの日のハイライト! クルーズ船で海の上からフィヨルドを眺めます。前半はユネスコ世界遺産にも登録されている「ネーロイフィヨルド」、後半には「アウルランフィヨルド」を通ります。ネーロイフィヨルドは世界一幅が狭いフィヨルドとして知られ、最も狭いところはわずか250メートルしかありません。その狭いフィヨルドの両脇に雪を頂いた高さ1000メートル超の山々が塔のようにそびえ、断崖からは垂直にいくつもの滝が流れ落ちています。水面に映る木々や青い空も怖いほどの美しさです。
今回フロムでは、老舗ホテル「フレトハイムホテル(Fretheim Hotel)」に宿泊。夕食はホテルでとり、そのあとは村内にある醸造所を兼ねた「エーギル・ブルッゲリ(Ægir BryggeriPub)」で、自慢のクラフトビールをあれこれ飲み比べました。流木の壁や暖炉もあり、ほっと落ち着ける北欧らしいパブで、2階のレストランで食事もとれます。
【3日目:午前~15:00】絶景づくし!憧れの鉄道旅
3日目は鉄道づくしの旅! まずは、ノルウェー国鉄の傑作ともいわれ、世界の鉄道ファンの憧れでもある山岳列車・フロム鉄道に乗り、その後ベルゲン急行で一路オスロへ向かいます。●【鉄道】フロム→ミュールダール/所要時間約1時間(8:35→9:28)
フロム鉄道は1時間弱で海抜2メートルから866メートルまで上る、世界でも指折りの急こう配の山岳列車。わずか20kmの路線に、川あり、滝あり、雪原あり、と絶景続き。約180度向きを変えるへアピントンネルや冬は凍ってしまうショース滝なども通ります。
●【鉄道】ミュールダール→オスロ/所要時間約5時間(9:52→14:45)
ベルゲンとオスロを結ぶノルウェー国鉄ベルゲン急行は全長500kmにもおよび北欧最長。これに途中のミュールダール駅から乗りこみます。海抜1222mメートルのフィンセあたりは映画『スター・ウォーズ エピソード1』の撮影にも使われたそう。長旅ですが、Wi-Fi完備で座席には電源付き。食堂車もあり快適です(※運航スケジュールによって食堂車のない車両の場合もあります)。
【3日目:15:00~】オスロで観光やショッピングを満喫
ムンク美術館。オスロは画家エドヴァルド・ムンクの故郷
この日は時間があまりないので、あらかじめ見どころを1~2か所に絞っておくとよいでしょう。私はホテルを出てすぐタクシーで「ムンク博物館」へ向かいました。そのあとはおしゃれな雑貨店やカフェが集まるオスロの流行発信地、グリューネルロッカを散策。このエリアにある屋内市場「マートハーレン」には、お土産物にちょうどいいコーヒーやオーガニック食材などもそろっています。
数時間、オスロの町歩きを楽しんだら、そろそろディナータイムです。今回は2016年にミシュラン1つ星を獲得した話題店「コントラスト(Kontrast)」へ。北欧ではデンマークの「NOMA」に代表されるようなモダンスカンジナビアン料理が席巻中ですが、ここもそんな北欧料理の最先端を感じさせてくれるお店です。
自然の恵みを最大限に活かしつつ、食材の組み合わせや盛り付けの妙で魅せる独創的な料理は、6品のコースが850NOK、10品のコースで1350NOK。オーガニック食材や自然の中でのびのび育てられた動物の肉を選び、地元産であることやその旬にもこだわっているそう。最後の夜にふさわしい素敵な時間が過ごせます。
【4日目:朝~11:00】最後までオスロを楽しみつくそう!
最終日もギリギリまで遊びましょう。まずは、コーヒーの街のオスロらしく、人気のカフェで浅煎りのコーヒーを楽しむところからスタート。日本にも上陸した「フグレン(FUGLEN)」やユニークな自転車カフェ「ペロトン(Peloton)」などお店も多彩で、選りどり見どり。カフェは7:00~8:00ごろから開いているところが多いです。美術館は時期にもよりますが、10:00ごろから開館するので、オープンと同時にかけこめば1館は楽しめます。今回はオスロ中央駅からアクセスのよい「国立美術館」へ行きました。
11:00を過ぎたら、いよいよ空港へ。空港へは「フリートーゲ(FLYTOGET)」という空港への急行列車が便利。オスロ中央駅から約20分。列車は10分間隔で出ています。
冬のフィヨルド観光プランニングの注意
冬は日照時間も短く、フィヨルドクルーズ船が昼の1便のみになるので、今回とまったく同じスケジュールは難しくなります。「ノルウェー・イン・ア・ナットシェル」を使って同じように周る場合、昼のクルーズ船に間に合わせるには、ベルゲンを午前中に出る必要があり、その分フロム到着が早くなります。そのため、ベルゲンやオスロの観光時間を削ったり、ベルゲン~オスロまで途中の宿泊なしで一気に移動したり、多少アレンジが必要ですが、基本的には今回紹介したルートを3泊5日で周ることはできます。■冬場のアレンジ例(※スケジュールは季節によって変わるので事前に確認してください)
(1)ベルゲンの観光を削る
2日目:朝にベルゲンを出て午後フロム着
3日目・4日目は今回紹介したプランと同じ
(2)ベルゲン~オスロまで1日で移動(ベルゲン1日、フィヨルド1日、オスロ0.5日)
2日目:終日:ベルゲン観光
3日目:終日:フィヨルド観光(朝にベルゲンを出て夜にオスロ着)
4日目:午前:オスロ観光
(3)ベルゲン~オスロまで1日で移動(フィヨルド1日、オスロ1.5日)
2日目:終日:フィヨルド観光(朝にベルゲンを出て夜にオスロ着)
3日目:終日:オスロ観光
4日目:午前:オスロ観光
日本も自然豊かな国ですが、ノルウェーの自然はまたひと味ちがうダイナミックさがあり、圧倒的な大自然にパワーをもらえます。3泊5日から行けるので、ちょっとお休みがとれそうなときや疲れて自然に癒されたいときなど、気軽に計画してみてはいかがでしょうか。(取材協力:ノルウェー政府観光局)