子育て/子育てに役立つ最新心理学

子供を預ける罪悪感を払拭!グループ保育で伸びる能力

待機児童問題も切実ですが、子供を預けられるようになった後に生じやすいママの罪悪感もまた深刻です。そんなママの気持ちを和らげるような朗報を、イギリスの研究とともにお伝えしていきます。

佐藤 めぐみ

執筆者:佐藤 めぐみ

子育てガイド

子どもを預けるのは悪いことばかりじゃない!

「我が子に寂しい思いをさせているのでは」と思うとこみあげる罪悪感、何とかしたい…

「我が子に寂しい思いをさせているのでは」と思うとこみあげる罪悪感、何とかしたい…

子どもが小さいうちは、我が子を他者に預けることに強い罪悪感を感じてしまうママは非常に多いもの。でも、預けることで伸びる能力もあると分かれば、その気持ちが少し和らぐ気がしませんか? 子どもが外に出ることで獲得してくるスキルについて、イギリスからの報告を交えてご紹介したいと思います。



待機児童問題、突発の病気、そして罪悪感…

子どもを預けることへの罪悪感で押しつぶされそうになるママも

子どもを預けることへの罪悪感で押しつぶされそうになるママも

今の日本は、子育て問題が山積みです。とくに、育児と仕事を両立しようとするママには、次から次へと壁が立ちはだかっています。まず仕事に復帰しようとすると浮上するのが待機児童問題。2015年4月1日時点の待機児童数は全国で2万3167人。とくに、東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏部、そして、大阪、兵庫の近畿圏では、深刻な状態になっています。

なんとか保育園問題をクリアし、無事、仕事に復帰できても、それで安泰ではありません。その後も、次々に問題が浮上します。勤務時間と保育園のお迎えの兼ね合い、突発的な病気のときの対応など、毎日ハラハラしどおしです。

しかも、保育園に送りに行ったら、別れ際に号泣されてしまったりすると、「子どもに辛い思いをさせているのではないか」と気になり、それが続くと、「これでいいんだろうか…?」と子どもを預けることへの罪悪感で押しつぶされそうになってしまいます。


3歳児神話がママに重くのしかかる

子どもが小さいときに生じやすい「ママの罪悪感」は本当に深刻です。このような罪悪感の背景には、「3歳児神話」が関係していると言わざるをえません。「3歳になるまでは母親が子育てに専念すべき」という3歳児神話は、1998年版の「厚生白書」で、合理的根拠がないと否定されているものの、それから20年近くたった今でも、しっかり根強く残っているのを感じます。

とくに、現在子育て中のママの母親世代は、3歳児神話が健在の時代に子育てをしてきたので、言葉の端々に、「小さいうちは、ママがそばにいてあげないと可哀想よ」というニュアンスを感じることも多いでしょう。そう言われると、余計に辛くなってしまいます。

ただ、子どもを預けることに対する罪悪感は、3歳児神話が根強い日本だけに見られる現象ではなく、世界中の多くのママが同じような気持ちを感じているようです。そんな状況を踏まえ、イギリスの大学がある研究を行いました。その結果が、ママの罪悪感を少しぬぐってくれるような内容だったので、ここでご紹介したいと思います。


イギリスの研究で分かったグループ保育の効果とは?

この研究の対象となったのは、978人の子どもたちとその家族。そのうちの217人が、2歳になる前から、保育園のようなグループでの保育施設のお世話になっていた子どもたちでした。

対象となった子どもたち全員を、赤ちゃん時代から約4年間追いかけ、1歳6か月と4歳3か月のときには、認知能力の計測も行いました(認知能力とは、理解力、判断力、論理力などの知的機能のことで、言語能力のみならず、非言語能力も含みます)。すると、保育の方法と認知能力に次のような相関関係があることがわかったのです。

  • 2歳になる前から、グループ保育(保育園など)を利用していた子は、4歳3か月の段階で優れた認知能力を示す傾向があった
  • とくに、非言語能力に関してはその値が高かった
  • グループ保育に通い出した月齢が早い子、通う頻度の多い子の方が、認知能力の伸びがより大きい傾向が見られた
  • 自宅などで面倒をみてもらうタイプのチャイルドケア(ベビーシッターや祖父母などに個人的に見てもらう)では、子供の認知能力の大きな伸びを生み出す影響力は見られなかった

子供たちは思っているよりも早く社会デビューできる!

これを見ると、子どもたちは、親からよりも、外に出た方がたくさん学ぶのではと思えてきますが、実はそんなことはありません。もう1つ大事なデータがあります。それは、「0歳のとき母親がしっかりと向き合っていたか」。これが、4歳3か月の時の認知能力レベルに、より大きな影響力を持っていることも明らかになったのです。ここで言う「しっかり向き合う」とは、子どもの変化に敏感に気づき、反応してあげていたか、ということ。赤ちゃんの気持ちを察し、それに対し、きちんとリアクションしてあげることを指します。

これらを踏まえると、
  • 子どもが1歳になるまでの母親の接し方
  • 2歳になる前からの同世代の子との関わり合い
これらが子どもの認知発達に大きな影響力を持っているのが分かります。お子さんが1歳になるまで、育休を取っているママも多いと思いますが、このデータを見ると、ちょっと安心しませんか? 子どもたちは、意外と早く、社会での学びをスタートさせるのです!

実は、これは、アタッチメント理論にも沿った結果です。アタッチメントとは、赤ちゃんが特有の人に示す精神的な絆のことですが、まずはママ、そしてパパとのつながり。1歳半くらいからは、その絆を複数の人に広げる能力があることが分かっています。

1歳半というのは、歩いたり、ちょっとだけ言葉が出てきたりという対外的なコミュニケーションが伸びる時期でもあります。この時期に同年代の子どもたちとの刺激を与えてあげることが、その子の成長を促すことにつながるようです。

せっかく仕事をするのなら、気持ちよく働きたいものです。「子どもはママと一緒じゃないとかわいそう」と思うと、あっという間に罪悪感に見舞われますが、心身の発達段階を見れば、「ママ以外から受ける刺激も大切」なのです。

とはいえ、早朝から夜遅くまで預けっぱなしでは、やはり子どもがかわいそうです。勤務時間を長引かさない工夫をしつつ、グループ保育を活用するのが、母子ともに恩恵を受ける秘訣といえるでしょう。

■出典:学術誌「International Journal of Behavioral Development
(2016)「Amount and timing of group-based childcare from birth and cognitive development at 51 months: A UK study」より
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※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。

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