味わい深いアジア各地の乗り物たち
アジアの旅先でお世話になることも多い、その国ならではの素朴な移動手段。日本でも比較的有名なものから、“知る人ぞ知る”的なものまで様々ですが、今回は一国一つに絞ってご紹介したいと思います!
第10位 テンプ―(ネパール)
ヒマラヤの山並みをバックに夕刻のカトマンズで客を集めるテンプーの群れ。大気汚染が進む今なお庶民や旅行者の重要な移動手段に変わりはない。
最初はネパールのテンプーです。アジア的乗り物はタクシータイプとバスタイプに分かれますが、これはバスタイプ。ルートが決まっていますので初心者でも安心して利用できます。ちょっと違うのはバス停がないこと! 合図をすればどこでも乗り降りさせてくれます。
写真ではちょっとわかりにくいですが、実は前輪は一つしかなく、三輪車です。たくさんのお客を乗せてヨロヨロと走っていく姿がチャーミング。
第9位 ベビー(バングラデシュ)
ダッカの住宅街を颯爽と走り抜けるベビー。時代の流れで徐々に姿を消しつつあるのが残念
喧騒のバングラデシュの町を自由自在に動き回る小型のバイク型タクシーで、ベビータクシーを略してベビーと愛称で呼ばれています。黒と黄色のツートンカラーに派手なアートが目印ですが、世界一の過密都市ダッカを中心に大気汚染対策でCNGと呼ばれる天然ガス車に取って代わられているため、消えゆくノスタルジックな乗り物です。乗るなら今のうちに!
第8位 ベチャ(インドネシア)
ジョグジャカルタの駅前で整列して出番を待つ緑のベチャ。運転手も皆グリーンでキメていてかっこいい。
いわゆる「輪タク(自転車タクシー)」タイプの一つ目はインドネシアのベチャ。ジャワ島を中心に多くの場所で活躍しています。デザインは地味でシンプル、不要な飾りつけはほとんどありません。前乗り(運転手の前に座席がある)タイプなので、運転手とコミュニケーションが取りにくいのが難点。また前面が完全にオープンなので、良く言えば颯爽とした走り心地、悪く言えばスリリングな移動手段と言えるでしょう。
近年は自転車部分がバイクになった「ベチャマシーン(ネーミングが超かっこいい!)」も登場。さらにスリリングになりました。
第7位 シクロ(ベトナム)
シクロの体験乗車を楽しむ観光客
同じく輪タク型のベトナム版はシクロ。2000年代初めの頃まではかなりのシクロが現役で頑張っていましたが、しつこい運転手が多く、料金トラブルが多かったのも事実。それだけが理由ではないでしょうけど、近年はめっきり数が減ってしまって、ほとんどツアー客用の体験乗車みたいなものが主流になってしまった感があります。逆に言うと、乗るならツアーの体験乗車で。観光地で客待ちしているシクロは十中八九料金でもめます。
“ホンダ”の行列はホーチミンの日常風景
現在の庶民の足はもっぱら「ホンダ」です。ホンダとはベトナムではバイクのこと。ホンダの「大群」がうごめく風景はホーチミンなどベトナム都市ならではのもの。街を歩くときはホンダに気を付けましょう(笑)
第6位 サイカー(ミャンマー)
昔ながらの素朴な移動手段、サイカー。ちょっと疲れたらすぐ乗れる、気軽な乗り物
ミャンマー情緒あふれる乗り物と言えばコレ。「サイカー」は英語のサイドカーがなまった言葉で、自転車の横に座席が付いているのが特徴。運転手さんと非常にコミュニケーションが取りやすいのが利点です。
ヤンゴンなどの大都市では数が減ってしまいましたが、地方都市ではまだまだ健在。歩くにはちょっと遠いお寺巡りなどに活躍します。
第5位 トライショー(マレーシア)
華人の多いペナン島ならではの中国風センスのトライショー。華やかな飾りつけは見ているだけでも楽しい。
もちろん雨は降っていません。日差しの強いマレーシアでも安心
マレーシアの輪タクはトライショーと呼ばれ、ペナン島やマラッカなどで今でも多く走っています。ベチャやシクロと違ってトライショーはカラフルなパラソル、それから花束などの華やかな飾りつけが特徴。ついつい乗ってみたくなってしまいますね!
シンガポールでも観光客用に一部走っています。
第4位 2階建てバス、トラム(香港)
看板にぶつかりそうでぶつからない香港のシンボル2階建てバス。夜景の名所、ビクトリアピークもこれで登ってしまう。運転手のドライビングテクニックには脱帽
香港の景色に欠かせない存在でもある2階建てバスは乗ったことのある人も多いのではないでしょうか。空港からのアクセスなどちょっとした長距離のときには是非2階席へ登ってみましょう。一番前が空いていたらラッキーです。街中を縦横無尽にうめつくす看板スレスレに走り抜ける車窓風景はテーマパークのアトラクションなみの迫力!
世界でも珍しい2階建てのトラムは香港島を東西に結んでいる
また香港島には2階建てトラムが走っています。バスに比べると遅いですが、2階建ての路面電車というのは世界的に見ても大変珍しいです。せわしない香港の街をたまには上からゆっくりと眺めてみるには絶好の乗り物です。
第3位 ジープニー(フィリピン)
ド派手な装飾で街を彩るジープニーはフィリピンの庶民の足ナンバー1。Hop on とHop offで軽快に乗りこなそう!
フィリピンを代表する乗り物といえばこれ、ジープニーです。米軍の払い下げジープを改造したバスタイプの乗り物です。前面に行先が表示してありますが、自分の行先のジープニーを見つけるのが慣れない人にはなかなか大変。もちろん停留所はありませんので、お目当てのジープニーが来たらさっと合図を送りさっと乗るのがテクニック。写真でもよーく見ると確認できますが、後ろにしがみついている人もいます。
とにかく、フィリピンに行ったら絶対一度は乗りたくなってしまう乗り物です!
第2位 リキシャー(インド)
インドといえばリキシャー、街中どの風景を切り取ってもリキシャーが入らないことはない。座席は比較的ゆったりしていて、乗り心地はなかなか。
日本の「人力車」が語源のリキシャーは、インドの輪タクです。インドの雑踏の主役とも言えるこの乗り物は、インドの旅には欠かせない移動手段。座席は後ろに取り付けられていて目線がやや高いので、昔のちょっとした貴婦人のような気分が醍醐味。さらにどんな裏道にも入っていけるのが利点です。
ただし、シクロほどではないですが料金でもめることも多いです。
(詳しくはこちらの記事) 慣れるまでが大切ですので、しっかり料金交渉しましょう(それでもトラブルをゼロにはできません)。
バングラのリキシャーは走るアート!
またおとなりバングラデシュもインドと並ぶリキシャー大国。インドと違って華麗なペインティングが目を惹きます。運転手ではなく、装飾で選びたくなってしまうのがバングラのリキシャーですね。
前述のベビーよりもさらに狭いところまで縦横無尽に走りますが、やはり人力ですので近場の利用にとどめるのが良いでしょう。特に上り坂の多い所などは乗っていて申し訳なくなってしまったりしますよ……
第1位 トゥクトゥク(タイ)
タイに来たらトゥクトゥクに乗らなきゃ始まらない。全身にタイの風を感じながら移動できる知名度も旅情も抜群の乗り物
栄えある1位はやっぱりタイのトゥクトゥクがランクイン! トゥクトゥクはアジア的乗り物の代名詞です。渋滞で有名なバンコクの町を「トゥクトゥクトゥクッ」とパワフルなエンジン音とともに軽快に走り抜けます。屋根にはしっかり「TAXI」のあんどんを掲げているところが庶民の足としての誇りと自負を感じさせますね。
料金は交渉制で普通の車のメータータクシーとそれほど大きくは変わりませんが、特に夕方の渋滞時など、場所と時間によっては大活躍します。
ビエンチャンのタート・ダム(黒塔)前を走り抜けるラオスのトゥクトゥク
トゥクトゥクはアジアの共通語、他の国でもトゥクトゥクと言えばだいたい通じますし、ラオスなどの周辺国でも活躍していますので東南アジア旅行では非常にお世話になる機会も多い乗り物と言えるでしょう。
最後にですが、やっぱりもう一つだけご紹介しておこうと思います。
番外編 馬(モンゴル)
草原の交通手段といえば昔から馬。モンゴルの少年はみな馬術の達人、人馬一体の華麗な動き
偉大なるチンギス=ハンの末裔たる者、幼少より馬ぐらい自由に操れなくてはお話になりません。もちろん観光客用施設に行けば乗馬体験も可能ですので、稀代の英雄になった気分で広大無辺の草原を駆け抜けてみては!?