週刊誌で見たFX取引の記事が取引を始めるきっかけだった
負けないFXトレードの方法
1998年といえば、超低金利を追い風に、まさに米国ではITバブルが起ころうとしていた頃です。投資に対する注目度が高かったことと、インターネットの普及が重なり、新しい金融商品「FX」はたちまち人気化し、商品取引会社や証券会社などが続々取扱いを開始しました。 ただし、今の取引環境は考えられないほど整備されておらず、「取引単位は10万ドルに固定され、かかる手数料は一律8000円、取引は『買い』しかできなかった」そうです。
取引開始直後に大損。FXをやめなかったのは悔しかったから。
ここで、1998年のドル円相場を振り返っておきましょう。まず年前半は、前年の山一証券、1998年の日本長期信用銀行、日本債券信用銀行破綻を受けて、147円まで円安ドル高が進んでいました。しかし、8月に起きたロシア危機(ロシア国債の債務不履行)の影響で、10月にアメリカの有力ヘッジファンドLTCMが破綻し、111円台まで下落。なんと36円を超える大暴落になったのです。 前述したように、当時はまだ「買い」の取引しかできなかったため、ポジョンを持っていたSさんは大損。数百万円を損切りしなくてはなりませんでした。
しかもそこに2000年問題が重なりました。取引していた会社から「コンピュータが誤作動を起こす可能性があるので、保有しているポジションを全て決済してほしい。万が一、マイナス方向に誤作動が起きると、どれだけ損が膨らむかわからない。責任は持てない」と言われ、Sさんは、また数百万の損切りを強いられました。
相場に「たられば」は、禁物ですが、その後、コンピュータが誤作動を起こすことはなく、ポジションを持っていればプラスになっていたはずです。2000年問題の後、しばらくFX取引をやめていましたが、リーマンショック前頃から取引を再開。理由はたったひとつ、「負けたままでいるのが悔しかったから」です。
しかも、2007年から米国のサブプライムローン問題が深刻化し始めていたため、「売り」から入れるようになっていたFX取引が最適だと考えました。 その判断は大正解。すぐに5000万円近くの利益を獲得し、「株式取引より、少額でレバレッジもかけられるFX取引の方が資金を効率的に活かすことができる」と、FX取引の魅力を再確認したそうです。
長期トレンドに基づいた「両建て」を武器に、負けないトレードを。
さて現在、Sさんは独特の取引手法で、利益を得ているそうです。その手法とはなんと「両建て」。両建てとは、同じ通貨ペアで「売り」と「買い」の両方のポジョンを持つことです。全く同じ金額で保有した場合、相場が上昇すれば、買いポジションの利益は増えますが、売りポジションは損が増大するため、一般には危険といわれている手法です。
では、Sさんはどのように使いこなしているのでしょうか。
Sさんの取引は、金融政策などのファンダメンタルズを中心に、相場の方向性を考えるところから始まります。そして、資金を4等分して、まずは4分の1で買い(売り)ポジションを保有します。
その後、予想に反して値が大きく下落(上昇)してしまうこともあるでしょう。改めて、為替を取りまく状況を見直し、「まだ下がる」と思われる場合のみ、同額の売り(買い)ポジションを持つのです。
ここで初めてポジションが「両建て」になるわけです。両建てのメリットは、損が膨らみ続けることをひとまず回避できることです。Sさんは、「両建てが作ってくれる、心理的に落ち着ける時間がとても大事」だといいます。 冷静になってポジションを見直し、さらに下がると思えば売りポジションを追加。上がると思えば、売りポジションを決済してから、買いポジションに切り換えます。
為替相場は、短期的な上下を繰り返しながら、長いトレンドを形成していきます。最初から全力でポジションを持たずに、資金を4等分してから投資することで、両建て、買い増し、買い支えなど、その後の相場の状況に合わせた戦略的なトレードをすることができるのです。もしかしたら、無駄な損切りも避けられる可能性もあります。 ただし、損切りしないわけではありません。
「間違えたと判断すれば、躊躇なく損切りします。復活できる余力を残しておくことが大切。損はいつでもとり返すことができます」。
また、「FXで成功するために、特別な能力が必要だとは思いません。熱心に値動きを見ていれば、利益が出せるようになります。アドバイスできるとすれば、『同じトレンドがいつまでも続くと思わない』こと。もうひとりの自分が、常に自分を客観視しているようなそんな冷静さも必要でしょう。とにかく『負けないトレード』を積み上げていくことが大事です」とも話してくださいました。