価格上昇で注目浴びる金投資
株価が長らく低迷している中で、金価格が上昇しています。この1年間で約18%の値上がりです(田中貴金属工業株式会社調べ、2015年7月から2016年8月までの月間平均ドル建て価格の差異)。人は、金(ゴールド)を資産の逃避先として考えがちです。そこには、「金は安全である」という思い込みがあります。しかし、金は本当に安全資産なのでしょうか?
金が安全といわれるゆえんを考えてみました。
1、金は破綻しない
金は、株式や債券などの金融商品のように、破たんすることがありませんどんなに価格が下がっても、ゼロになることはありません。株式や債券のように、特定の政府や企業の信用リスクと無関係なのです。むしろ、金融の世界での信用力が低下すると、その威力を発揮する資産です。しかし、これを”安全”と呼ぶのはどうなのでしょうか?正確に言えば信用リスクがないということです。
2、世界中のどこでも同じ価値を有する
金価格は米ドル建てですが、世界中のどの国にいっても、現地通貨に換算された同価格で取引されます。地域や経済力の差が、資産価格に影響を及ぼさない、普遍的な価値を有する資産です。世界共通の均一価格の資産なので、だれにとっても平等で公平です。原油や食糧は、その国によって、必要度が異なりますから、価格にはバラツキが存在します。しかし、金を要らないという国家や営利団体はないのです。
3、株価と逆の値動きをする
上記のような理由から、金が特別な資産です。特別であるがゆえに、多くのリスク商品(株式や債券)と真逆の値動きをします(負の相関関係)。株式市場が暴落すれば、金価格は高騰します。その意味では、金はリスクヘッジ(回避)をする最適な資産です。ポートフォリオにおいて、価値の変動を抑える働きをする資産なのです。資産にブレーキとアクセルがあるとすれば、金はブレーキ、株式がアクセルです。
金はもうかるのか?
金を安全資産と考えることは、必ずしも正確でないことをご理解いただけたでしょうか。安全資産でないなら、収益資産なのかというと、収益性が高いわけでもありません。長期でみれば、金投資は魅力的とはいえません。たとえば、日本での金価格は最近でこそ4,500円/グラムを超えてきましたが(田中貴金属工業のサイトより)、それは1980年以来、実に35年ぶりのこと。1980年につけた4,499円という年間平均小売価格は、2014年までの34年間で、一度も上回ることはなかったのです。
つまり、金は高値をつかむと、何十年も塩漬けになってしまう可能性があるということです。金の価格変動は平穏なものではありません。
金と預金では、安全に意味が違う!
以上をまとめてみると、金が安全だといわれる本意は、普遍性があるとか、耐久性があるとかいう意味であることに気づきます。同じ安全資産である、預貯金のように元本が守られるという意味での安全ではないことに留意すべきです。ましてや、老後の生活費を作るために投資をしているような人にとって、金は投機的資産であって、決して安全資産ではないことを忘れないでいてください。金をリスク商品として、適材適所で戦略的に使うことをおすすめします。