相続した空き家の譲渡所得の特別控除とは
空き家は増加の一途。国もこの問題に力を入れています。
2016年4月1日から2019年12月31日までの売却という期間限定で、国はこの間に空き家の増加問題を何とかしたかった、ということが考えられます。2019年までとしたのは2020年の東京オリンピックが関係していたかもしれませんね。
※2019年度税制改正により、2023年12月31日まで延長されました。
※2023年度税制改正により、2027年12月31日まで延長されました。
期限が重要?
相続した空き家の譲渡所得の特別控除で最も注意したいのが「期限」です。一見すると2019年までとなっているので急ぐ必要は無いように見えてしまいますが、ここが大きな落とし穴です。別の条件で「相続時から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却」となっていますので、誰もが2019年までではないのです。※2019年度税制改正により、2023年12月31日まで延長されました。※2023年度税制改正により、2027年12月31日まで延長されました。具体的な期限は?
相続発生時期によって以下の通り特別控除が受けられる期限が違います。2020年1月2日から2021年1月1日 → 2023年12月31日までの売却
2021年1月2日から2022年1月1日 → 2024年12月31日までの売却
2022年1月2日から2023年1月1日 → 2025年12月31日までの売却
2023年1月2日から2024年1月1日 → 2026年12月31日までの売却
2024年1月2日以降 → 2027年12月31日までの売却
タイムリミットに注意
前記の期限のとおり、例えば2020年1月2日から2021年1月1日に相続が発生した場合の空き家の譲渡所得の特別控除は、タイムリミットが2023年12月31日ということになります。なおそれぞれの年の期限である「12月31日までの売却」とされるのは、原則としてあくまで売却物件の「引き渡し」です(売買契約日を譲渡の日とする場合はその前に建物を取り壊す必要があります)。
それまでには測量や。それまでには測量や境界の確定もしなければならないため、それらを考慮すると売却活動は数か月前に始めなければ期限に間に合わなく可能性があります。引き渡しまでの売却活動期間は、順調に行っても一般的には3~4か月かかるものと思われます。
その他に注意すべき点は?
相続した空き家の譲渡所得の特別控除の注意点として、「期限」と「引き渡し」であることについて述べましたが、その他にも注意点があります。- 被相続人が老人ホームに入所している等のないこと。相続税の計算において小規模宅地等の評価減の特例があり、この特例では老人ホームに入所していても適用を受けることが可能なため、空き家の譲渡所得についても適用ができると考えがちですが、あくまで「自宅に相続開始の直前まで被相続人が住んでいる」ことが条件ですので、老人ホームに入所していた場合は適用はありません。※2019年度税制改正により、一定の要件を満たすことで、老人ホームに入所していても適用できるようになりました。
- 取得費加算との併用はできません。相続した財産を譲渡した場合の譲渡所得の計算において、支払った相続税の一定額を取得費に加算できる特例がありますが、相続した空き家の譲渡所得の特別控除との二重の適用は出来ず、どちらかを選択して適用することになります。
- 2023年12月31日までの売却においては、売主が「耐震リフォーム」や「家屋の除却」を譲渡日までに行うものとされていましたが、2023年度税制改正により、2024年1月1日以降の売却については、「耐震リフォーム」や「家屋の除却」は売主・買主どちらでもよく、また期限も「譲渡日まで又は譲渡日~譲渡年の翌年2月15日まで」に緩和されました。
- 2023年12月31日までの売却においては、相続人が複数いる場合もそれぞれ3000万円控除が可能でしたが、2023年度税制改正により、2024年1月1日以降の売却については、「相続人が3名以上いる場合はそれぞれ2000万円控除」と厳しくなりました。
相続した空き家の譲渡所得の特別控除の期限は3年もあるからと思い、しばらくはゆっくりしていようと考えている人も多いと思いますが、うっかりしていると特別控除のチャンスを失ってしまうかもしれません。またこの特別控除が受けられるか否かは税理士に相談することをお勧めします。税理士なら売却後は「空き家の特別控除」か「取得費加算」のどちらが有利かも判断してくれます。