夫の心を傷つけている妻の言葉とは
「僕の存在価値は……」と夫が虚しさを感じるとき。
「あなたに、もしものことがあったら私たちどうなるの?」
「保険に入っているから大丈夫だよ」
「でもそれは入院費だけでしょ」
いざというときの給与を補助するサービスを表しているのだが、このCMを見たとき、どこかで聞いたことがあると感じ、そして思い出した。
リストラされた男性とその妻への取材をしていたときのことだった。
「どうしてあなたがこんな目に……」と嘆く妻を持つ夫たちは、リストラされたとしても自分を必要以上に卑下せずにすむ。それは妻が、夫目線で考えているからだ。
だが、「私たちの生活はどうなるの?」という第一声を発した妻をもつ夫は、その後、なかなか精神的に立ち直ることができなかった。なかには離婚した夫婦も少なくない。
CMで言うところの夫の病状(なのかケガなのかわからないが)を尋ねて労うこともせず、いきなり自分と子どもの生活を心配する妻は少なからずいる。いったい、男性たちはどう思うのだろうか?
いざというときに出た、「妻の本性」だと感じる
保険のCMでよく見るシーン。既視感があると思ったら……。
そう言うのは、ダイスケさん(46歳)だ。3年前、仕事で運転中に交通事故に巻き込まれた。しばらく経ってから病室にやってきた妻は、開口一番に「これって、労災よね?」と言った。
「骨折程度だったんですが、『大丈夫? 痛む?』くらいのことは言ってもいいだろうと思いましたよ。僕は妻を信頼していたし、そんなに仲が悪いわけでもなかった。だけどあのひと言で、妻を見る目が一気に変わってしまった。いざというとき本性が出るというから、これが妻の本音なのだろうと……」
子どもが成人したら離婚することも視野に入れているとダイスケさんは言う。
妻が自分をどう思っているかを気にする男たち
鬱になり自宅休養を余儀なくされた夫は……。
「お金を稼いでくる役割だけでいいのかと思った瞬間、膝から力が抜けて崩れ落ちそうになったのを覚えています」
3年前のショックなできごとを、昨日のことのように思い出せるというマサトさん(42歳)。彼には、会社での人間関係がこじれて鬱状態となり、休職していた時期がある。幸い、3ヶ月ほどで復帰できたのだが、その間、家の中は妙な緊張状態にあったという。
「パートに出る回数を増やすという妻には申し訳ないと思っていた。だからといって、妻の代わりに家事を全部やれるかというと、そうはできない。何もできずに毎日、うとうと寝たり起きたりという時期があったんです。
そんなとき、当時10歳の娘と妻との会話が聞こえてきてね。『パパが働いてくれないと、〇〇ちゃんもピアノが続けられなくなるねえ』『え、そうなの?』『だって、パパはお金を運んでくる人だから』『お金を運んでこないパパは、いらないの?』『そうねぇ』と……。ショックでしたね。現実的にはそうかもしれないけど、10歳の娘とそういう会話をする妻に不信感を抱きました」
もちろん、妻はマサトさんがその会話を聞いてしまったことは知らない。
マサトさんのほかにも、娘に正面を切って「お父さんはATMだから」と言われたと嘆く男性に会ったことがある。それも、やはり妻がそういうことを娘に吹き込んでいたからだった。
妻と娘の会話が聞こえてしまった。
「家のローンも、僕が死んだら相殺されるシステムになっている。このまま働けないなら、死んだほうが家族のためなのかもしれないと思いつめたこともありました」
それでも、マサトさんはなんとか会社に復帰することができた。
「妻には迷惑をかけたとは思うけど、労りの気持ちは、まったくなかったんでしょうか……聞けないですけどね、もちろん。でも、いつかわかってくれるかもしれないと希望はもっています。妻は無理でも、娘にはいつか。僕が必死で会社にしがみついていた理由と、いかに娘を思っているかをわかってもらえるのではないかって。……それにしても、夫婦っていったい何なんでしょうね?」
稼いでくるのが当たり前だったからこそ、稼げなくなったとき存在価値がなくなるのか。そこに家族としての情愛はないのだろうか。
「男の役割はそんなものだと、割り切るしかないのかもしれませんね」
マサトさんのつぶやくような声が耳に残る。
▼夫婦関係に見る、夫のつらさ
夫を不倫に走らせる妻の言動とは?