舘出張佐藤病院取材記
このたびは高崎市最大の産婦人科病院である舘出張 佐藤病院院長と高崎ARTクリニックの理事長である佐藤雄一先生に取材をさせて頂きました。佐藤病院は高崎市の産婦人科医療の中核を担う施設で1740年頃から継続して医業を営まれているということで、とても歴史ある施設と言えます。また、不妊治療においても高崎ARTクリニックを設立され、妊活から出産まで広くサポートされています。
今回は佐藤病院や佐藤先生のお考え、また栄養と産婦人科医療について語って頂きました。それでは取材の様子をご覧ください。
佐藤先生へのインタビュー
院長の佐藤先生です。
―いつも最初に伺うのですが、佐藤先生が医師になられた理由を教えてください。
うちは代々産婦人科で、12代目になります。医師になるかならないかを考えたこともありましたが、いい仕事だとは思っていましたし、何より父親が楽しそうに仕事をしていたので、父の背中を見て医師になることを決めました。―お父様が楽しそうに仕事をしていたというのはとても素敵なことですね。産婦人科医になることに、迷いはなかったのでしょうか?
強制的に「なれ」とは一度も言われたことはないのですが、代々守ってきたものもあるし、地域の中核病院なので、辞めるわけにもいきません。父は継いで欲しかったと思います。どうしたら子供が受け入れてくれるかと考えると、自分が誇りを持ってできる仕事でなければ継いでくれないと思ったのでしょう。その日病院であった大変なことやいい事を素直に教えてくれながら、いい仕事なんだということをいつも話してくれました。いいことも悪いことも話してくれるので、大変さももちろん伝わってきましたが、やりがいがある仕事だろうなということは感じていました。
病院の歴史を物語るスタッフ集合写真
医者になるかならないかは迷いましたが、なるんだったら産婦人科で、将来的には地域医療を目指して家を継ごうと考え、科の選択に迷いはありませんでした。
―代々継がれてきた仕事にプレッシャーを感じることはありましたか
産婦人科は地域にとってなくてはならないものだということもありますし、続けていけるかということに対してのプレッシャーを感じることはなかったです。佐藤病院、高崎ARTクリニックの特徴について
佐藤病院はアンチエイジングやウェルエイジング外来、アスリート外来といった診療というものをかなり追及されているように感じます。それにはどういった理由があるのでしょうか?
今でこそ女性医療という言葉が認知されてきましたが、元々上の代からお産病院ではなく、女性のための医療を幅広く提供し、女性の生涯にわたってのサポートをしていこうという理念がありました。医者になったときにはよくわかりませんでしたが、不妊治療にたずさわっていると、“高齢化、晩婚化の中で体が年をとっても妊娠できる体作りをしていかなくてはならない”という所に、技術よりも目が行くようになりました。早くは思春期から、年をとっても将来子供を産み育てられるような体を作っていくためには、長いスパンでのサポートが必要になってきます。
乳児室
その中でアンチエイジングも付加的な要素として取り入れました。目的はいつまでも子供を産める体を維持するためにどのようなサポートができるかという思いからになります。
―高崎ARTクリニックを作られたきっかけとはどういったものなのでしょうか?
ここを作ったのは不妊治療と分けるため、また、県内でメジャーな施設が少なかったことも理由にあります。不妊治療だけをやると、どうしても一方からの視点になってしまいますが、周産期もできる、手術もできる、その上で不妊を見ることで多角的な視点から最適な治療を選択することができ、これは大切なことだと思っています。
―高崎ARTクリニックの一番のこだわり、強みはどういったところでしょうか?
うちでは自然周期メインでやっていますが、他にも治療方針はたくさんあり、その中の1つのコンセプトだと思っています。つまり、どれがいいとか、どれ選ぶかということはあまり重要ではなく、それぞれの方針に特化したクリニックがたくさんあり、その中から患者さんが自由に選べるということが、選択肢の幅も広がり、とてもいいことだと思っているからです。高崎ARTクリニックの待合室です。
うちでは医師と話をした後に、もう一度看護師と話をするようにしています。
まず、毎回すべての診療においてしっかり信頼関係を築けるよう、治療方針なども含めて医師と話をします。治療の後は、次の予約をとるという名目で、看護師と必ず面接をして帰るようにしていただいています。すると、患者さんが医師に言えなかったことや気持ちなどの話をここでできるんです。
診察室は4つあるのですが、治療の後に看護師とゆっくり話をするので、そのブースの方がもっとほしいという声が上がっています。以前はカウンセリングを希望する人の時間を別でとっていたのですが、診察後に看護師としっかり話をするのでそれがカウンセリングになり、今では希望する人はいなくなりました。
また、すべてのスタッフには、そういったスキルを身に着けてもらうように、学会なり、勉強会なりに参加するように言っています。
このようにメンタルのサポートをしている所は、他のクリニックから来られた患者さんたちにも評価していただいている所です。
―不妊治療の一環として栄養療法もされていますが、これについてはどのようにお考えでしょうか。
いろいろやっても妊娠しない人、また、年齢が高くなるとどうしてもその傾向が強くなってきてしまいます。そういうときに、どう体を作っていくのがよいのかと考えました。卵子も細胞でできていますから、細胞1つ1つを若返らせることは難しくても、活性化していく方法はあるはずです。アンチエイジングという視点を持つと、体作り、つまり食事、運動、睡眠という原点に戻ってきました。そうなると、口から入ってくるものが一番大きな影響を及ぼすことは当然ですので、どういう栄養を取るのがいいのかということに着目するようになりました。
院内自動販売機は様々なものが売られています。
―産後うつなども栄養の問題が大きいといわれていますが、やはりそうなのでしょうか?
うつには、器質的になりやすいという人もいらっしゃるとは思いますが、アミノ酸、鉄分などの栄養素をしっかりとってもらい、きちんと栄養状態を整えていれば、多くのケースで防げるのではないかと考えています。当院を受診された方でも、1人目を産んだ後にひどい産後うつに悩まれた方がいらっしゃいましたが、2人目の妊娠前から栄養療法をきっちりとされ、2人目の出産後はうつどころがピンピン元気に子育てをされている方がいらっしゃいます。
エステルームもあります。
社会貢献活動や今後のビジョンについて
―たくさんの社会貢献活動をされていますが、どういった理由からでしょうか?
少子化対策として、元気に子供を産み育ててもらう社会づくりというのが、私の気持ちの中にあります。社会奉仕をするというよりは、少子化対策のための活動が社会貢献活動につながっているのだと思います。子供を産んでほしい、産める体になってほしい、体を壊さないでほしい、という思いがあっても、結局は病院に来て頂いた人にしか話はできません。病院や医療はすごく受け身の仕事なんです。なので、外に向けての発信も医療者が行っていかなくてはいけないという思いから行っています。
―今後のビジョンとしてはどういったことをお考えでしょうか?
女性が妊娠できない体というのが今問題となってきていますが、出産年齢も上がってきていて、栄養状態も非常に悪いというのが一つの要因に挙げられます。子供を作るためというだけでなく、生きていくためにということも含め、健康的な体作りについて、啓発も兼ねて取り組んでいきたいと考えています。そして、これから妊娠したいと考えるであろう若い女性もターゲットにして、より多くの人に啓発活動ができる仕組み作りをしていこうと考えています。
読者の方に向けてのメッセージがあればお願いします
最上階のレストラン
先ほどから何度かお話をしていることなのですが、長年医療現場に携わっていく中で、技術よりもきちんとした食事や生活が、妊娠や出産だけではなく、健康であるためにいかに大切かということに視点が行くようになりました。
言葉に出してしまうとよくある話になってしまうのですが、一番身近にありながら見逃しやすく、簡単そうで難しい問題です。この記事を読んだ方が今一度ご自身の生活習慣を振り返っていただき、規則正しい生活や栄養のある食事での体づくりを今一度見直していだだくきっかけになればうれしく思います。
まとめ
不妊治療をされている患者さんの多くは目の前の妊娠する事ばかりに意識が集中しがちですが、実はその視点はあまり好ましいものではありません。なぜなら、妊娠した瞬間から、妊娠中の事や出産の事、そしてその後の育児の問題が出てくるからです。佐藤先生が言われる通り、妊活の時から生活習慣や食事(栄養)に気を配り、妊活も最大限の効果を出しつつ、妊娠期、出産時、育児期にも元気で健康な状態を保てるようにすることが大事だと分ります。
子供を産み、育てていくためにはお母さんの健康が重要だということです。今日の取材では改めてそれを理解した次第です。
ご多忙の中、佐藤先生にはじっくりとお話を頂戴しました。またサポートして頂いた福田さまにも大変お世話になりました。お二方にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。
▼関連サイト
・舘出張 佐藤病院
・高崎ARTクリニック