東京都は2006年に「首都直下地震による東京の被害想定」(最終報告)を公表していましたが、東日本大震災の発生なども踏まえて2012年に全面的な見直しをしました。
一口に首都直下地震といっても、その震源や規模、発生時間帯などによって被害の様相は大きく異なるわけですが、最悪の想定では東京都内だけで死者が9,641人、負傷者が147,611人にのぼるとされています。
ちなみに、死者数の想定が多いのは大田区の1,073人、品川区の779人、足立区の712人などの順になっています。
また、建物被害などによる避難者数が約339万人にのぼるほか、帰宅困難者数は約517万人で、そのうち避難場所などがなく「屋外で滞留する人」は約163万人と想定されました。
帰宅困難者には国内各地や海外から東京を訪れていた人も含まれますが、東日本大震災発生直後に大混乱したときの帰宅困難者数が約352万人と推定されていますから、さらなる大混乱は免れないでしょう。
東京、新宿、上野、品川、蒲田、渋谷、池袋、北千住、八王子、町田、立川の主要な11駅だけでも、駅周辺(4平方キロメートル圏内)に滞留する人が161万人を超え、そのうち約21万人が屋外に留まり続けるとされています。
そのため、求められているのは「混乱が収まるまで職場や学校などに留まること」です。無理に帰宅しようとすることで新たな被害に巻き込まれるリスクが高まるだけでなく、混乱に拍車をかけることも懸念されているのです。
大地震のときには職場の安全確保も重要な課題になる
しかし、いざというときに社員や職員が寝泊まりできるような態勢を整えた職場がどれくらいあるでしょうか。毛布などを用意するだけでなく、数日分の飲用水や食料も確保しておかなければなりません。
それ以前の前提として、職場の建物が甚大な被害を受けないことや、余震が相次いでも安全に過ごせることが大切です。エレベーターの停止も約7,500台と想定されていますが、その復旧に数日かかった場合でも動線を確保できることが求められます。
数千人が亡くなるような大災害が起きたとき、もし家族の安否が確認できなければ、不安な気持ちを抱えたままでしばらく職場にとどまっていることも心理的に難しいでしょうが……。
勤務中に大地震が起きるとはかぎりませんし、外回りなどの仕事であれば職場に戻れるかどうかも分かりません。それでも職場での地震対策や、いざというときの職場の活用方法をしっかり検討しておきたいものです。
地震への備えは自宅の話だけではありません。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2007年7月公開の「不動産百考 vol.13」をもとに再構成したものです)