一時期に比べればだいぶ減少し、最近ではあまり報道されることもなくなりましたが、金属類の盗難は依然として多いようです。被害がピークだった頃には「中国での建設ラッシュによる金属価格の高騰」が主な原因とされましたが、現在はどうなのでしょうか。
金属盗による被害は山間部などの電線が盗まれるケースが多いものの、マンションの建設現場で配電用の銅線が盗まれたり、一般の住宅に取り付けられた門扉などが盗まれたりすることもあるようです。
くれぐれも「金属類を盗まれて、足りないままで造っちゃった」などという住宅建築現場が出てこないことを願いたいものですが、盗まれた資材を再調達するために工期が遅れれば、最終的に想定外の突貫工事にならないともかぎりません。
一戸建て住宅の門扉などが盗まれれば、さらに厄介な問題が絡むケースも考えられます。以前はわざと外れやすい構造にした門扉も多く、深夜の人通りが少ないところでは、住人が気付かないうちに持っていかれてしまうこともあるのだそうですが……。
中古一戸建て住宅を購入し、手付金を支払ってから引き渡しを受けるまでの間に門扉などが盗まれてしまうことも考えられますが、このようなときは売買契約における「危険負担」の問題として、売主が新たに門扉を取り付けたうえで引き渡すべきだと判断するのが普通でしょう。
ところが、中古住宅の売買では引き渡しの数日前までに売主が引っ越しをして、引き渡し当日には空き家となっていることが大半です。
そのために、もし万一門扉などの盗難があっても、それが引き渡し日の前なのか後なのかが分からないこともあるでしょう。
引き渡し当日以降の被害は買主の負担となるのが一般的な売買契約条項ですが、いつの被害か分からなければ門扉の取り付け費用も、売主と買主のどちらが負担するべきなのかを判断できないことになりかねません。
万全を期すのなら、引き渡し(残代金支払い)当日の朝に購入した物件の現地を確認することも必要です。確率として考えれば、売買契約をした物件が引き渡し前に被害を受けることはかなりレアケースにすぎないでしょうが、決して油断はできないのです。
しっかりとした仲介業者であれば引き渡し当日、残代金のやり取りをする前の段階で物件の状態を確認するのですが、売買契約の当事者としても一定の注意を払っておくようにしましょう。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2007年7月公開の「不動産百考 vol.13」をもとに再構成したものです)