夫の代わりに謝罪に走る妻たちの気持ち
夫と世間が妻に「代理謝罪」を求める。煮えくり返る妻の気持ちは?
妻はどこまで夫の責めを一緒に背負わなければいけないのかという疑問がふとよぎった。
警察に呼び出され、「妻のせい、家庭のせい」
背負いきれなくなった夫は妻に丸投げ。
「警察から連絡が来たので飛んでいきました。酔った彼に『ドア蹴飛ばしたの?』と尋ねたら『やってない』と。思わず警察に、『やってないって言ってますけど』と言ったら、『あんたがそんなだから、だんながこういうことをするんだ。現行犯なんだからね』と言われて。カチンときましたね。現行犯なら夫がやったのは事実でしょうけど、それをあたかも私にも責任があるように言われたことに腹が立った。私は夫の母親じゃありませんから、と言いましたよ」
だが、彼女は翌日、夫が行くとかえって相手を怒らせるかもしれないからという警察のアドバイスもあって、その飲食店にひとりで謝罪に行った。
「本来だったら、全部ひとりで責任とりなさいと言いたいところだったけど、穏便にすませる方法としてやむを得なかった。その飲食店のオーナーにも言われましたよ。『だんなさん、よほどストレスためてるんじゃないですか。家庭がうまくいってないとか?』って。妻という立場は、こういうことでもイヤな思いをしなくちゃいけないのかとうんざりしましたね」
その件があってから、夫はトミコさんの言いなりになっているというが、今も「あのとき自分が出ていくべきだったのか」と彼女はときどき思い返している。
夫の浮気の尻ぬぐいをさせられて
オレではどうにもならない、と浮気の尻ぬぐいを頼む夫。
「3年前、5歳年上の夫の浮気が発覚したんです。それだけでも腹が立つのに、夫は自分で収拾をつけられなくなり、尻ぬぐいを私に頼んできた。『彼女が家庭を壊してやると言ってるから、なんとかなだめてきてほしい。もうオレだけではどうにもならない』って」
離婚という言葉が頭をかすめたが、当時、7歳と5歳の子どもたちのことを考えると、離婚する気にはなれなかった。夫ともうまくいっていると思い込んでいたから裏切られたショックは大きかったが、家庭を守りたい気持ちが優先した。相手は当時25歳。夫の会社に派遣で来ていた女性だった。
「住所を聞いて、彼女のアパートに乗り込みました。実際に会ってみると、夫が言っていたようなヒステリックな子ではなくて、とてもいい子だった。だからかえって申し訳なくなっちゃって。『あなたのような若くて素敵な女性なら、あんなオッサンとつきあわなくてもいいのに』と思わず言っちゃったんです。それが彼女の琴線に触れたんでしょうね、突然、殴られました。さっきまでおとなしかったのに。びっくりして言葉も出なかった」
彼女はノゾミさんを殴りつけると、あとはただひたすら号泣した。ノゾミさんは用意してきたへそくり50万円を置いて、そっと部屋を出た。
「とばっちりで殴られたけれど、あんなふうに女性を悲しませた夫に怒りがわいてきて……。数日後、彼女から届いた手紙には、会社を辞めて実家に戻ると書いてあって、後日、直接謝罪もしてくれましたしね。そうなると、なお夫に腹が立ってきて。なのに夫は、『やっぱり妻が出ていくと強いな、よかった!』と、自分が困らなかったことだけを喜んでいる。内心、しょうもない男だなと思いました。子どもたちが大きくなったら離婚するつもりです」
ノゾミさんもまた、夫の不祥事に自分が出ていったことを後悔している。
本当なら、夫がきちんと対処すべきことだった。どんなに困っても、会社で左遷されたとしても、その責任は夫が負うべきだったと。
「結局、私も自分がかわいかったんです。夫がもし左遷されたり、クビになったりしたら、路頭に迷うのは、子どもたちと私ですから。夫の利己的な行動に、私も加担してしまったことが今でも悔やまれます」
表面上は、解決しても、妻は内心穏やかではないケースも。
夫が責任をとるべきことなのに、妻が出ていってしまう。そのことで問題は一見、平穏に解決したかのように思えるが、妻たちの心には消せない傷が残ることもある。
夫と妻は一蓮托生なのか、それとも、もっとドライに割り切ったほうがいいのか。
周りの見る目も含めて、こういう問題をもう少し考えてみてもいいのかもしれない。
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