カフェ/東京・有楽町・銀座のカフェ

銀座の屋上カフェ「月のはなれ」で月のレモンケーキを

秘密の屋上庭園のような「月のはなれ」は、老舗画材店「月光荘」が開いたカフェ。小さな中庭で昼の月を見上げながら、三日月形のレモンケーキや名物のクレオール料理を楽しみませんか。月光荘の名付け親は歌人の与謝野晶子・鉄幹夫妻。大正時代の文化サロンを想いながら。

川口 葉子

執筆者:川口 葉子

カフェガイド

 月のレモンケーキを屋上庭園で

夏の銀座の夜空を見上げながら…

夏の銀座の夜空を見上げながら…


月はたとえば、夜空に浮かぶ巨大なレモン。その色がレモンを思わせるばかりではなく、形もわずかにレモン型をしているのだといいます。

秘密の屋上庭園のような「月のはなれ」の小さな中庭で、昼の月を眺めながら「月のレモンケーキ」、あるいは夜の月を眺めながら日本酒「月の井」レモン添えを楽しむという趣向はいかがでしょう。

1917年(大正6年)創業の名門画材店「月光荘」が2013年に古いビルの5階に開いたカフェには、月にまつわるちょっとした遊び心がちりばめられています。

レモンケーキは3種のソースを添えて (はちみつ、コンフィチュール、生クリーム)

三日月形のレモンケーキには3種のソースを添えて(はちみつ、コンフィチュール、生クリーム)


5階までは狭い階段。わざわざ上がる価値はあります。ぜひ途中で出現する「あと23段」「あと15段」などという文字に励まされながらたどりついてください。扉の向こうに静かな青空が見えたとき、ここははたして銀座? と不思議な浮遊感をおぼえるでしょう。

クレオール料理はビールとともに

濃厚なガンボスープは、鶏と野菜でスープを作るところから手作り

濃厚なガンボスープは、鶏と野菜でスープを作るところから手作り


夕方からの名物料理はガンボやジャンバラヤなど、米国南部発祥のクレオール料理の数々。チキンガンボはランチセットでも楽しむことができます。

なぜクレオール料理? 月光荘3代目主人の日比康造さんにそう質問すると、20歳の頃にミュージシャンを志してアメリカ・ミシシッピ川沿いの都市を旅した記憶が語られました。ニューオーリンズ、メンフィス、ナッシュビル、そしてシカゴ。

「ミシシッピ川沿いの街には星の数ほどブルースバー、ミュージックバーがあり、音楽のありかたが東京とは全く違っていました。人々は会社帰り、学校帰りに気軽に生演奏を聴きながらお酒を楽しんでいる。音楽とお酒と人々の暮らしが密接につながっているさまに感動したんです」

そんな日々に食卓を彩っていたのが、ガンボやジャンバラヤなどのクレオール料理だったのです。

ガンボとはフランス移民の家庭料理スープのこと

ガンボとはフランス移民の家庭料理スープのこと


月のはなれ自慢の手間をかけたガンボは、シェフと日比さんの二人三脚で完成した濃厚なおいしさ。鶏で濃い目のスープをとることからスタートして、玉ねぎや野菜をじっくり炒め、パプリカ、カイエンペッパー、オレガノなど9種類のスパイスを香らせます。ビールといっしょにどうぞ。

画材店の名付け親は与謝野鉄幹・晶子夫妻

レモン色の看板が目印

レモン色の看板が目印


月光荘という美しい店名の名付け親は、歌人の与謝野鉄幹、与謝野晶子夫妻。創業者・橋本兵藏さんは与謝野夫妻に可愛がられ、さまざまな芸術家たちが交流していたサロンに招き入れられたそうです。

当時、画家たちが使う絵の具の大半はフランスから船便で取り寄せており、高価なうえに1ヶ月も2ヶ月も待たねばならないという不自由さ。橋本兵藏さんは自分に良い刺激や感銘を与えてくれた芸術家たちへの恩返しにと、画材店を開くことを決意しました。

開店にあたり鉄幹はヴェルレーヌの詩にちなんだ「月光荘」という名を贈り、晶子は「大空の月の中より君来しや ひるも光りぬ夜も光りぬ」という歌を贈ったのです。

新しいサロンとして

銀座の小さな屋上

銀座の小さな屋上


創業100周年を視野に入れてオープンした月のはなれは、以前は月光荘の倉庫だったスペースを自ら改装したもの。アメリカの綿工場の床板だったという古材や酒樽を用いた内装のひとつひとつに手間と愛情が込められており、かつて創業者を育てた文化サロンのような場を銀座に提供したいという思いが感じられます。

贅沢にも、毎晩8時から音楽の生演奏が始まります。ミュージックチャージなしのチップ制。決してかしこまって聴くための演奏ではありません。

なごやかな店内には会話に興じるグループ、音楽に耳を傾けながらカウンター席で一人呑みをする人、500円で「お絵描きセット」を注文して月光荘の画材を借り、スケッチブックに絵を描いている人など、思い思いの時間を楽しむお客さまの姿があります。

コーヒー豆はOBSCURA COFFEE ROASTERS

コーヒー豆はOBSCURA COFFEE ROASTERS


「この場所で何も考えずに遊んでいるうちに毎晩、生演奏が始まるし、壁のアート展示にも触れることができます。創業者の信条は人に喜ばれるものを、ことさら宣伝したり売りつけたりすることなく、自然に提供することでした」

本当に良いものであればお客さまに気づいていただける、信頼していただけるという信念は3代目にも受け継がれ、多種多様な人種がジャンルを超えて交流できる気持ちのいい場所を生み出しているのです。

カウンターはコーヒー豆を挽くときの芳香が楽しめる席でもあります

カウンターはコーヒー豆を挽くときの芳香が楽しめる席でもあります


Menu

Beverage
はなれの銀ブラ・コーヒー 600円
ふんわりカプチーノ 750円
紅茶(アールグレイ/アッサム) 750円
瓶ビール(ミラードラフト/コロナ)各800円
日本酒「月の井」レモン添え 800円
焼酎 800円~
ウィスキー 750円~
ワイン/スパークリングワイン/シャンパン各種

LUNCH SET(ドリンク付き)
本日のホットサンド 1150円
名物チキンガンボ 1500円

Dinner Time
名物チキンガンボ 1250円
銀座ブラックジャンバラヤ 1300円
エビとアボカドのホットサンド 1050円
カントリーフライドステーキ 1450円
サコタッシュ風サラダ 750円
ガーリックシュリンプ 750円
ケイジャンフライドチキン 750円
コーンブレッド 350円
ホッピンジョン(豆ごはん)350円

SWEETS
月のレモンケーキ 700円
黒糖香るバナナフォスター 700円
自家製ジャムのふわふわフレンチトースト 700円

shop data

月光荘サロン 月のはなれ(げっこうそうサロン つきのはなれ)
【住所】東京都中央区銀座8-7-18 月光荘ビル5F
【TEL】03-6228-5189
【OPEN】14:00~23:45 土12:30~23:30 ※日祝は貸切営業のみ
【CLOSE】日・祝
【最寄り駅】メトロ・JR「新橋」駅より徒歩3分、メトロ「銀座」駅、JR「有楽町」駅より各徒歩6分

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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