不妊症

高度な生殖医療…つばきウイメンズクリニック取材記

このたびは愛媛県松山市において、昨年10月開院されたつばきウイメンズクリニックに伺い、取材をさせて頂きました。院長の鍋田先生とは不妊治療の勉強会でご一緒させて頂き、その時にクリニック設立のお話を伺いました。

執筆者:池上 文尋

つばきウイメンズクリニック取材記

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院長の鍋田先生です。

このたびは愛媛県松山市において、昨年10月開院されたつばきウイメンズクリニックに伺い、取材をさせて頂きました。院長の鍋田先生とは不妊治療の勉強会でご一緒させて頂き、その時にクリニック設立のお話を伺いました。

四国において本格的に不妊治療に取り組む施設は数が限られているので、新しいクリニックが出来る事は待ち望まれていたとも言えます。

それでは取材の内容をご覧ください。

つばきウイメンズクリニックの鍋田先生へのインタビュー

―先生が医師になられた理由、生殖医療に興味を持たれたきっかけを教えてください

私が高校生だった1992年、Palermo先生が顕微授精で初の妊娠例報告をあげられ、当時のセンセーショナルなニュースになりました。人の手で受精を行う顕微授精は神の領域という感覚があり、非常に興味深かった。

それで生殖医療に興味を持ち、医学部に行こうと思いました。はじめは文系でしたが、医学部に行こうと思い、理系に転身しました。

―なぜこのクリニックを作ろうと思ったのですか?

ずっと大学病院勤務の時からコンセプトは持っていて、それをやりたくて開業しようと思いました。そのスタイルを1つずつ形にしていった感じです。

設計士の方にも10人くらいお会いしましたが、ここを建ててくれた人だけレスポンスが違いました。最初はHPのお問合せフォームに投稿して、以前作った大阪の2件を紹介されて見に行きました。一度話すとすぐに設計図を持ってきてくれて、私が話をしていた内容が形になっていくようでした。

ただ、その時土地はまだ決まっていなかったんです。ビジョンの方が先に出来てしまいました。

ー1200坪という広さの土地を探すのは大変だったのでは?
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クリニックの外観です。


見つけるのに1年かかりました。田んぼ一箪分の300、400坪はよくありますが、それだとイメージしていたクリニックのスタイルはできないので、構想から変えないといけません。患者さんは車で来られるので、大きな駐車場も必要です。

不動産屋さんに1000坪くらいで頼んでいましたが、結局自分で気になっていた場所に足を運んで見つけることができました。


 
ー熊本県がご出身ですが、愛媛に来られた理由は

久留米大学を卒業後、愛媛大学に入局しました。同級生の妻が松山出身だったので、子育てのことも考えると妻の実家の近くが便利だろうとこちらに来ました。

四国の不妊治療事情を教えてください

ー四国の不妊治療事情を教えてください

徳島では大学病院が主導していますし、香川では厚仁病院が有名ですが、高度生殖医療をやっていこうというクリニックはまだ数が少ないです。
愛媛では松山市が人口50万人くらいに対して専門医が3人、ART実施施設が4施設という状況です。

クリニックの強み

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待合室の様子です

―クリニックの強みを教えてください
不妊治療を始めた方が、ここで出産まで一貫して行えるのが一つの強みです。

採卵は1月からスタートして4月は月35件、徐々に増えてきている感じです。その後Blast(胚盤胞)まで持って行って全胚凍結、子宮に返したのが4月は月20件。ようやく採卵から移植、妊娠された方も出てきており、体内受精も含めると開院後これまでに約50名の患者さんが妊娠されました。

お産の方は開業時、月20例からスタートし、今では月40~50例くらい取り上げています。

不妊治療に関しても、体内受精、体外受精の両輪で行えるのがもう一つの強みです。

FT(卵管鏡下卵管形成術)にも力を入れていて、卵管通過障害があれば、まずはFTを行った後に体内受精を試みます。その後AIH(人工授精)を試み、IVF(体外受精)へと移行するスタイルをとっています。FTは月10~20件くらいです。また、がん患者さんの卵子凍結も行っています。

 ―ドクターは何人いらっしゃいますか?

医師は6人体制です。長年産婦人科で働いていたベテラン医師が1名、産婦人科と小児科の女性の先生も2人常勤で来てくれていて、平日の昼間はずっと院内で妊婦健診や新生児健診、無痛分娩などを担当してくれています。他に麻酔科の常勤医師もいます。

私は夜と土日のお産、無痛分娩の日程を決める内診以外はほとんど生殖医療担当です。また、男性不妊外来として月一回、専門の泌尿器科の先生に来ていただいています。

男性不妊への取り組み

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診察室の様子です。

ー男性不妊では、どういった取り組みをされているのでしょうか?

月1回、日曜日に独協医科大学から岡田弘先生が来てくれて、完全予約制の男性不妊外来の日にしています。

4月から院内でMD‐TESE(顕微鏡下精巣内精子回収術)をはじめました。手術室を広くとり、隣には培養室があります。術者が胚培養士と状況を直接連絡話しながら手術ができるような体制をとっています。

昔は愛媛から、大阪のクリニックに診療に来られている岡田先生に患者さんを紹介していました。しかし、愛媛からだと移動も大変だし、治療が年単位になってくると患者さんも移動だけで疲れてきてしまいます。これからは先生が月に一度こちらに来てもらえるようになったので、患者さんの負担の軽減になりました。

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手術室です。広々としています。

 
―胚培養士は何名いらっしゃいますか?

胚培養士は4人ですが、もうすぐ5人体制になります。経験者の胚培養士もいますし、トレーニング中、新卒でゼロからのスタートの人もいます。胚培養士は管理胚培養士である私からみても十分に信頼できる人間性と高い技術を備えており、当クリニックの至宝と言えます。
 

今後のビジョンについて

―今後はどういったビジョンをお持ちでしょうか?
PGD(着床前診断)やPGS(着床前スクリーニング)、男性の精索静脈瘤手術なども将来的には取り入れていきたいと考えています。

また、不妊治療は体内受精、体外受精、男性不妊と多方向から治療を試みることができますし、妊娠された後も出産までを一貫して行えるクリニックとして、患者さんに上質な医療を提供していきたいと思っています。
 

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ナースステーションです。

まとめ

実を言うとこの文章の他にも色々とお話を頂きましたが、今回の主旨から離れていることもあり、かなり割愛させて頂いております。鍋田先生には本当に包み隠さずお話を頂いたと思っております。

鍋田先生の場合、生殖医療専門医師になるという思いから、このクリニックを作られているので、本当に思いの詰まった内容になっています。私の主観ですが、このクリニックが四国の生殖医療を牽引していくのではないかと感じております。

今回の取材はゴールデンウイーク中でしたが、快く取材に応じて頂いた鍋田先生にこの場をお借りして、心より御礼申し上げます。

▼関連サイト
つばきウイメンズクリニック

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