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円高・株安により15年度末の家計の貯蓄は減少に

2008年のリーマンショック以降、順調に増加してきた家計の金融資産額は、2016年3月末には対前年比で7年ぶりに減少してしまいました。円安・株高というトレンドから円高・株安というトレンドに転換したことがその要因のようです。新年度に入った4月以降も円高・株安が継続していることから、2期連続の減少となり、個人消費を低迷させる可能性もあります。

深野 康彦

執筆者:深野 康彦

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2015年度末の家計の金融資産残高は1706兆円

家計の貯蓄は減っている

家計の貯蓄は減っている

日本銀行が2016年6月17日に公表した2015年度末(2016年3月末)の資金循環統計によれば、家計の金融資産残高は対前年比0.6%減の1706兆円となりました。1年前と比較して減少したのは実に7年振りのことになります。減少率は0.6%と低いものの、金額に直せば10兆円の減少になります。

減少の背景は円安・株高というトレンドが、一転して円高・株安に転じたことがその背景にあるようです。マイナス金利が導入されたにも関わらず、現金・預金は増加している反面、株式等、投資信託の残高は、2014年度末まで3年連続して二桁の増加となっていましたが、マイナスに転じてしまっているからです。

2016年度に入ってからも円高・株安トレンドが継続していることから、家計の金融資産残高はさらに減少する恐れもあります。日本は米国などと比較すると株高による資産効果は低いと言われていますが、それでも高所得者を中心に株高になれば高級品が売れ行きが好調になると言われています。このまま為替や株価が持ち直さないと、個人消費も低迷する可能性すらあり得る状況と言えるでしょう。

投資信託の残高100兆円乗せは遠のく

それでは各資産ごとの内訳を見ていくことにしましょう。

現金・預金は2016年2月にマイナス金利政策が導入されたにも関わらず、対前年比で1.3%の増加となりました。資産全体に占める金額は894兆円と2015年12月末と比較して8兆円の減少となりましたが、資産全体に占める割合は0.6ポイント上昇して52.4%となっています。その背景は、株式等の残高が大幅に減少したことによるものです。

その株式等ですが、残高は1年前と比較して9.9%の減少となり153兆円となっています。2015年12月末と比較すると金額にして16兆円も減少しています。資産全体に占める割合は、9.0%と0.7ポイントも減少してしまいました。

株式等は、2015年6月末にも対前年比でマイナスになったことがあったのですが、投資信託はマイナスになっていませんでした。ところが、2016年3月末の残高は、対前年比で3.7%の減少に転じ、その残高は92兆円、資産全体に占める割合は5.4%となっています。

100兆円をうかがう勢いでしたが、円高・株安の状況を考えると、100兆円乗せは当面遠のいたと言えるかもしれません。なぜなら、投資信託に入ってくるお金(純資金流入額)も流出にはなっていないものの、1年前などと比較すると大幅に鈍化しているからです。

債券の資金流出は急ブレーキがかかる

円安・株高というトレンドが続いた結果、株式等、投資信託の残高は大幅に増加した反面、債券(債務証券)の残高は急減が止まらない状況が続いていました。未だ残高は減少していますが、その減少速度に急ブレーキがかかったようです。

2015年の6月末以降、二桁の減少が続いていた債券の残高の減少が、2016年3月末には対前年比0.6%の減少に留まっているのです。残高の減少に急ブレーキがかかったのは、マイナス金利政策の導入により個人向け国債の金利が、相対的に高くなり売れ行きが急増したことがその要因と考えられます。

メガバンクを始めとする大多数の銀行の定期預金金利は全期間0.01%。個人向け国債はどんなに市場金利が低下しても最低0.05%が保証されているため、相対的に金利が高くなり人気が盛り返したというわけです。2016年6月末の債券の残高は、いよいよ増加に転じるかもしれません。

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