暗い話題で恐縮ですが、1998年から2011年まで、自殺をする人が年間3万人を超える事態が続いていました。その後は年々減少傾向にあるものの、依然として多くの人が自殺している状況に変わりはありません。
自ら所有する一戸建て住宅やマンションの部屋の中で命を絶つ人も多いでしょうが、自殺をした部屋はその後どうなってしまうのでしょうか?
以前に比べれば自殺などがあったことを気にせずに購入する人が増えたり、自殺などの「事故物件」を専門に扱うところも出てきたりしていますが、それでも相場をだいぶ下回る価格でしか売れないことになります。
住宅の需要が落ち込んでいるエリアのマンションでは、まったく買い手がつかないケースも考えられますが、売れる見込みがなくても残された遺族は固定資産税や管理費などを支払い続けなければなりません。
自殺などがあった物件を不動産業者が買い取って、痕跡が残らないようにマンションであれば全面リフォームをしたり、一戸建て住宅であれば新たに建て替えたりする場合もあります。地域によって違うかもしれませんが、丁重にお祓いをするケースも多いでしょう。
一戸建て住宅を建て替えたときには、通常と変わりなく建売物件として販売される場合もあるのですが、部屋をまるごと取り替えることのできないマンションではそうもいかないため、「事故物件」として売られることも少なくありません。
ただし、故人や家族のプライバシーや守秘義務に配慮し、一般に向けて「自殺のあったマンションだ」ということをおおっぴらにいうことはできないため、中古マンションの販売図面などには「告知事項有り」とだけ記載されることが一般的です。
そして、いざ買おうとする人に対しては「重要事項説明」でその内容を明示するのです。
また、大半の人は自殺、あるいは殺人事件などがあったマンションを敬遠しますから、「それでも安ければ」という意向をあらかじめ営業担当者に伝えているようなお客様だけに紹介される場合も多く、物件情報が広く公開されないこともあるでしょう。
自殺をした人がどう考えていたのか知る由もありませんが、「家族にこのマンションを残せる」と考えていたならそれは間違いです。
たとえ生命保険で住宅ローンがなくなったとしても、残された家族はその部屋に住んでいるのが辛く、仮に相場の半額以下になっても手放す人が少なくありません。
多額の遺産や保険金が遺族に残るのなら話は別ですが、マンションの売却代金だけでは買い換えもままならないケースが多いのです。
それよりも、誰も自ら命を絶つ必要がない社会になることを望みたいものですね。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2007年8月公開の「不動産百考 vol.14」をもとに再構成したものです)
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