「中途半端なしつけ」に気づける「鏡のルール」

「正しいしつけ」でもない、「虐待」でもない「中途半端なしつけ」こそ、一番流布している落とし穴

「正しいしつけ」でも「虐待」でもない「中途半端なしつけ」こそ、一番流布している落とし穴

先日の北海道の「置き去り騒動」をきっかけに、「しつけ」と「虐待」のラインが議論になっていますが、それも「しつけの位置づけ」が難しいからでしょう。メディアでの議論は、「しつけ」か「虐待」という二分した見方ですが、この記事では、もう1つ「中途半端なしつけ」を入れ、三分していきます。

なぜなら、この「中途半端なしつけ」こそが、もっとも流布している”しつけの間違い”であり、子供が言うことを聞かない原因になっているからです。つまり、「正しいしつけ」のためには、虐待のみならず、この「中途半端なしつけ」をもなくさねばならないのです。この記事では、その「中途半端なしつけ」に対抗するための「鏡のルール」をご紹介していきます。


正しいしつけにあって、中途半端なしつけにはないもの

子供への痛ましい事件や騒動が起こるたびに、「しつけのつもりでやった」「いや、あれはしつけではない。虐待だ」と議論が巻き起こります。それを聞くたび、この二分化した見方が、逆に、しつけの位置づけを難しくしているのではと感じずにはいられません。

ある親の行動が「虐待」に当たらなければ、それは「しつけ」なのでしょうか? 決してそうではありません。子育て心理学では、「しつけ」とは、親にとっては「教え」、子供にとっては「学び」です。つまり、
  • 親がいくら言い聞かせても「教えがない」
  • 子供がいくら言われても「学ばない」
のであれば、それは「正しいしつけ法」ではないのです。

実は、この「教えも学びもないしつけ」が子育てに悪影響をおよぼし、結果として、
  • 言うことを聞いてくれない
  • イライラが止まらない
  • 全てが空回り
という状況をもたらしていることが非常によくあります。「正しいしつけ」でもない、「虐待」でもない、3つめのカテゴリーである「中途半端なしつけ」こそ、一般のご家庭で一番陥りがちな落とし穴なのです。これを抜け出すことで、虐待やネグレクトから遠ざかり、正しいしつけをしているという実感が得られるようになります。では、その「中途半端なしつけ」について、具体的に見ていきましょう。


しつけはこうやって脱線していく…

まず見ていただきたいのがこちらの例です。
  • うちの子、待てないんです
  • うちの子、すぐ暴言を吐くんです
  • うちの子、すぐ手が出るんです
  • うちの子、すぐウソをつくんです
よくあるお悩みです。こんなとき、親はまずこう対処しようと試みます。
  • うちの子、待てないんです ⇒ だから、「待ちなさい」と注意した
  • うちの子、すぐ暴言を吐くんです ⇒ だから、「バカというのはやめなさい」と注意した
  • うちの子、すぐ手が出るんです ⇒ だから、「叩くのはやめなさい」と注意した
  • うちの子、すぐウソをつくんです ⇒ だから、「ウソはダメだよ」と注意した
ここまではいいのですが、もしここで子供が言うことを聞かないと、「しつけ」が脱線しはじめます。

例えば、大きな声で注意する ⇒ 繰り返して言う ⇒ 激しく怒鳴る ⇒ 肩をつかんで自分に向ける ⇒ 頭を叩く……のように。でも、いくらエスカレートさせても、効果がないことが多いですよね。

育児で何か問題が起こったとき、親はその場をなんとか鎮めようというと必死になってしまいます。しかし、ご存知の通り、子供は受け身の学びよりも、自ら学ぶやり方の方が吸収がいいもの。親が一方的に叱っても、子供が学ばない理由はここにあるのです。子どものラーニングスタイルに合った方法でしつけていくことが必要です。


子供は言われるよりもマネで学んでいく

子供のラーニングスタイルは、大人とは違うところがあります。特に言われているのが、

「子供は受動的には学ばず、能動的に学ぶ」

ということ。では、この「能動的に学ぶ」とは、分かりやすくいうと何でしょうか?

それは、「マネをする」ということです。子供ってマネの達人ですよね。なぜなら、能動的に学ぶのが得意だからです。だから、「しつけ」には、この「マネの力」を活用しない手はないのです。

よくこういうことはありませんか?

「○○なところ、パパそっくり」
「○○するの、私に似てきちゃって…」

これは、マネの力です。これは、良い方向へも悪い方向へも働くのですが、まずここでは、悪い方の例を見ていきましょう。

上に挙げた暴言の例を用います。
  • 子供がすぐに暴言を吐くので、「バカというのはやめなさい」と注意した
ここまではOKです。しかし、これで聞かない場合、エスカレートする傾向があります。

「いいかげんにしなさい」 ⇒ 「誰に向かって言っているの!」 ⇒ 「なんて悪い子、バカ!」

あれれ…? 「暴言を吐かない」ということをしつけたかったのに、親自ら、暴言を吐いてしまっていますね。これでは、しつけにならないどころか、その子の暴言を助長してしまうことになります。


「中途半端なしつけ」を繰り返さないための「鏡のルール」

叱り方の権威であるマッケンジー博士も、マネの力が悪い方に転がった「負のループ」について指摘しています。著書「子供を上手に叱っていますか?」の中で、あるカウンセリングのひとコマが載っているので、それをここで抜粋しましょう。

博士 「息子さんが弟を叩いたら、あなた方はなんと言いますか」
父親 「声が少し大きくなります。許さないということをしっかりとわからせてやります」
博士 「そのメッセージを伝えるためにどうしますか」
父親 「必要であれば叩きます。子供は親の本気を知る必要がありますから」

言葉では「叩くな」と言っているのに、行動では「叩いていい」ということを伝えてしまっていますね。子供は、相手の言葉以上に行動から学ぶ(マネをする)ことが多いので、ここでは、親の「叩いていい」というメッセージの方を優先して受け取ってしまうわけです。

子供は、鏡のように親の行動をマネしていきます。言葉よりも、行動や態度の方を模倣する傾向があります。だから、もし子育てで、「うちの子の○○(ある行動)で困っている」というときは、次の2つのルールを意識してみてください。
  • 「○○」を、親自ら子供の前でやらないこと
  • 「○○」の代わりにやってほしい行動を、親自ら意識して取り入れること
これが、「中途半端なしつけ」から脱するための鏡のルールです。「子は親の鏡」。ならば、良い言動、良い行動をそこに映し出してあげたいですね。


 



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※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。