いまだに勘違いされている体罰の位置づけ

体罰は子供の心に何を残すのか?

体罰は子供の心に何を残すのか?

「しつけ」という言葉は、定義があいまいで、家庭ごとに多種多様です。体罰をしつけの1つとしている家庭もあり、それがエスカレートし、虐待につながることもあります。海外ではすでに家庭での体罰を禁止している国が数多くありますが、日本では未整備です。

この記事では、先日オーストラリアで発表された「体罰にまつわる10の迷信」にフォーカスし、いまだに勘違いされている「しつけとは何か」についてお伝えしていきます。


体罰の禁止が法律で定められている国は、すでに49か国

「Global Initiative to End All Corporal Punishment of Children」のサイト によると、子供への体罰を、法律で禁止している国は世界で49か国。これは家庭内での体罰も含んでいます。

サイト内には、体罰禁止が法律化された年度ごとに国名が書かれているのですが、子育て先進国の北欧が1970年代にまず着手、その後、ヨーロッパ、そして全世界へと広がっているのが分かります。でもよく見ると、アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリア、そして日本も載っていません。その背景には何があるのでしょうか?


体罰にまつわる思い込み

2011年の調べで、イギリスでは40%の親が、フランスでは87%の親が、「子供を叩いたことがある」と答えています。そこには、体罰が当たり前のように存在し続けている現状があります。なぜなら、今なお、体罰への思い込みが根強く残っているからです。

そんな状況を踏まえ、最近、オーストラリアの大学が、世に存在する「体罰にまつわる思い込み」について調査し、次のようなデータをまとめました。


体罰にまつわる10の思い込み

  1. しつけの一環としての体罰であれば子供に害はない
  2. たまに叩くくらいなら子供を傷つけることはない
  3. 体罰で子供に責任感を学ぶ
  4. 体罰は他のしつけ以上に効果がある
  5. 体罰を用いずに子供をしつけるのは、机上の空論であり現実的ではない
  6. 体罰こそ子供が唯一理解できる教えだ
  7. 体罰は男の子、女の子両方のしつけに使える
  8. 体罰を使わないのは、子供を甘やかすことになり、言うことを聞かなくなる
  9. 子供は体罰により他者をリスペクトすることを学ぶ
  10. 子供が悪いことをするたびに体罰は使われるべきだ

これを読んでどう感じましたか? 「ありえない!」と憤りを覚えた方もいる中、いくつかの項目には「その通りだ」と感じた方もいるのではないでしょうか。


体罰は親から子へと受け継がれやすい

体罰というと、イメージとして非常に暴力的なものを想像するかもしれませんが、「頭を手で叩く」「ほほをつねる」「尻叩きする」なども含まれます。

子供はそれで何を学ぶのでしょうか? 親が思っているようなことを学んでくれるのでしょうか?

残念ながら、親の期待する学びは起こりません。むしろ、その期待とは逆のことを学びます。「叩かれたら叩き返せ」「困ったら叩けばいい」と。親が叩いているのに、子供に「お友達を叩かないの」「弟を蹴らないで」と言っても、子供は矛盾を感じるだけです。

次にご紹介するYoutubeのビデオは、体罰に反対するフランスの団体が作ったものです。30秒という短い映像の中に、ずしりと来る教えが込められています。非常に多くの反響を得た作品ですので、ぜひクリックしてご覧になってみてください。


「clip tele contre les violences educatives ordinaires de la fondation pour l'enfance」

ジュースをこぼした娘のほほに平手打ちをする母親。それをキッチンから見ていた祖母(母親の母親)が、手を出した娘に「Pardon... ごめんね…」と自らの子育てを謝るシーン。体罰が子供に伝えるものをストレートに描いています。


しつけとは子供に学んでほしいことを親が形で示していくこと

親が子供を叩くと、その子が親になったときにまた叩くようになる。これは多くの研究で立証されているものです。それにもかかわらず、その事実はまだまだ浸透しておらず、体罰の効果を信じている人はいまだに多いのです。虐待にまで発展してしまうとニュースとして取りざたされますが、表にはならない家庭内でうっかり出る体罰も深刻な問題です。その多くは「感情的になって思わず手が出てしまった」というケース。

このようなケースは、親の感情を子供にぶつけて吐き出しているに過ぎません。それは教えでも何でもなく、言ってしまえば八つ当たりです。本来、親はその感情をどう処理するかを教えなくてはいけない立場なのに、そこで叩いてしまっては、「感情的になったらそれを相手にぶつければいい」と教えてしまっています。

先に挙げた「体罰への迷信」がどれも過ちであることがお分かりいただけたでしょうか?
  • 親が叩いたら、子供は叩くことを学びます
  • 親が叩かずに対応したら、叩かずに対応することを学んでいきます
「子供に学んでほしいことを、親が形で示していくこと」こそ、本当のしつけと言えるのではないでしょうか。


*出典:Personality and Individual Differences. (2015) 「Smacking never hurt me!」より

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。