塩素消毒が有効! 病気もうつりやすいプール
プールに行くと感じる塩素消毒のにおい…。体に害はないのでしょうか?
プールに行くと感じる、独特のにおい。塩素のにおいだと思っていませんか? 特にプールの後でまれに起こる目の充血や、湿疹、肌荒れを、塩素のせいだと思う人も少なくないようです。
確かにプールには塩素などの薬品が使われています。それは水質管理に欠かせないからです。プールは多くの人が利用する場所でもあるので、水を介していろんな人が持ち込んだ細菌やウイルスに感染する危険性が常にあります。
プールで感染しやすい病気の一例として、以下のものが挙げられます。
■咽頭結膜炎(プール熱)
原因ウイルスはアデノウイルス。主な症状は39度前後の発熱、のどのはれと痛み、リンパ節のはれなどの咽頭炎の症状。
■流行性角結膜炎(はやり目)
原因ウイルスはアデノウイルス。主な症状は結膜と角膜の炎症。結膜だけでなく、角膜にも炎症が及ぶため、角膜表面にもきずの残ることがあり、その部位によっては視力に障害を来すことがあるので早期治療が大切です。
■急性出血性結膜炎
原因ウイルスはエンテロウイルス。結膜や眼瞼の充血、腫脹のほかに白眼の部分に出血がおこります。
これらの感染症は塩素消毒によって予防することができます。適切な塩素の基準濃度を保つことは、感染症予防上とても重要なことなのです。
プールの塩素は安全? 塩素濃度と体への影響
病気予防のために塩素が大事だと分かっても、塩素自体の安全性は気になるところでしょう。特に保育園や幼稚園のプールなど、小さな子どもが入るプールの安全性について気になる方もいるかと思います。しかし、プールの塩素消毒をすることは厚生労働省で決まっているので、絶対です。もしもプールに塩素を入れなかったら、屋外プールでは1週間もしないうちに藻が発生してしまいます。そして一度藻が発生したプールは、発生を繰り返しやすくなります。学校のプールの塩素濃度(正確には遊離残留塩素濃度)は、学校環境衛生基準で定められており、0.4mg/L以上、1mg/L以下とされています。0.4mg/Lの遊離残留塩素濃度を保つことができればアデノウイルス、エンテロウイルスの感染症を防ぐことができます。
遊離残留塩素は天気のいい日や高温、紫外線によって消費されるので、必要な濃度を維持していくために塩素を追加する必要があります。1mg/Lを超えても殺菌効果はほとんど変わらないので、上限は1mg/以下が望ましいとされています。
実は塩素は特別なものではなく、普段使っている水道水にも塩素濃度の基準値があります。プールの水の塩素濃度は0.4mg/Lですが、水道水の場合は0.1mg/L以上。水道水と比較してもプールの塩度が特別に高いというわけではありません。毎日水道水を使ってお風呂に入っているのなら、プールでの塩素の影響は怖がらなくても大丈夫ということになります。
では、プールで目が充血したりする原因は?
ではなぜプールに行くと刺激臭がしたり、髪がキシキシしたりするのでしょう?プール特有のにおいは過剰な塩素だと思われがちですが、実は逆で、塩素不足が原因です。
通常、塩素が溶けると次亜塩素酸という物質になって殺菌効果が表れますが、これがプール中の遊泳者の汗などから発生するアンモニア性窒素と結合するとクロラミンという物質を生成します。このクロラミンが目や鼻、肌に刺激を与える主な原因となっています。
この場合は一時的に塩素濃度を高くしてアンモニアを分解する必要があります。塩素=悪ではなく、塩素こそがプールの衛生環境を守るためにとても重要な役割を果たしているのです。
洗眼はNG? うがい・手洗いは推奨? プールのあとにすべきこと
プール利用時の注意点として、今は、一昔前の体育の授業で行われていた常識と違う点もあります。たとえば、以前はプールのあとに水道水での洗眼をしていた人も多いと思いますが、現在はゴーグルの着用が基本です。お風呂でも直接目を洗う人はいないと思いますが、目に直接水を当てることで、水道水の塩素で角膜を傷つける恐れがあります。簡単な洗眼は行っても良いですが、積極的な洗浄は奨励されていません。髪がキシキシするのが気になる人は、水を透過しないキャップを使用するのもよいでしょう。
もちろん感染症を防ぐためには塩素任せではいけません。プールのあとは、手洗い、うがいを。他の人とタオルや目薬を共有しないことも大切です。各自で気をつけて、健康的にプールを楽しみましょう。