子どもの近視…「目が悪い子」はどれくらい増えている?
小学生の3人に1人は裸眼視力0.1未満という現実…。今、子どもの目に何が起きているのでしょう (※画像はイメージです)
近視の有病率を2000年から2010年の推移で見てみても、アジア太平洋地域の高所得国で46.1%→48.8%、東アジア国38.8%→47.0%、東南アジア33.8%→39.3%と、わずか10年間で確実に増加しています。2050年にはアジア太平洋地域の高所得国66.4%、東アジア国65.3%、東南アジア62.0%と順位は変わらないものの、今後も増加の一途と予想されています。
文部科学省による平成27年度学校保健統計調査では、「裸眼視力1.0未満の者の割合」は、小学校で30.97%と過去最悪です。幼稚園生は平成20年の28.93%がピークでしたが、平成27年でも26.82%とあまり減っておらず、ほぼ横ばいに近い状態です。中学校では平成24年の54.38%がピークですが、平成27年でも54.05%、高等学校で平成25年に65.84%をピークとなるも、平成27年でも63.79%と、いずれも依然と高い状態です。
そもそも近視とはどんな状態?
「近視」になると、遠くの物が正しく見えなくなります。みなさんおなじみの方法だと思いますが、視力検査では検査表から一定の距離の場所に立り、アルファベットのCのような形のランドルト環のどちらが欠けているか、大小のひらがなが正しく読めるかで視力を判定します。近視の場合、ランドルト環の欠けもひらがなも大きなものしか見えなかったり、一番大きな文字でも、検査表に近づかないと見えなかったりします。眼はよくカメラに例えられますが、ものを見る時には、ものに反射した光がレンズの役割を持つ水晶体の部分で屈折し、丁度フィルムにあたる網膜の部分に光が集まり、その物の形が映し出されます。近視や遠視は、カメラでいうならばピンボケの状態です。近視の場合、網膜の「前」で光が集まってしまうため、近くものはよく見えるのが特徴です。
そして一言で近視といっても、次の2つに分けられます。
■屈折性近視
近くを見るときは水晶体が膨らんで厚くなり、網膜で焦点を合わせるように働きます。しかしずっと近くばかりを見ていると水晶体を厚くする筋肉が緊張した状態になり、常に近くを見ているときの状態になってしまします。これが屈折性近視です。眼の筋肉に緊張を取るためのトレーニングや点眼薬で回復しますので、「改善できる近視」と言えます。
■軸性近視
軸性近視は、水晶体から網膜の距離が長くなってしまう状態です。網膜が後ろにずれて眼が前後に長くなった状態をイメージしてください。この場合は、トレーニングや点眼薬を使用しても良くならないので、コンタクトレンズや眼鏡で対処することになります。
スマホ?ゲーム? 子どもに増加する近視の原因と対策法
身近で小型で便利な一方、字が小さく、より近視になりがち
パソコンやゲーム機は昔以上に非常に身近になり、スマートフォンや携帯電話、携帯ゲーム機などを長時間利用している子も少なくないようです。画面を見る電気製品の多くは、テレビなど大画面のもの以上に顔の近くに寄せて見ることが多いため、常に近くに焦点を合わせることになり、上に挙げた「屈折性近視」の状態になっていると考えられます。
昭和58年に家庭用ゲーム機器である『ファミコン』が発売されたあたりから、子どものテレビゲームの利用時間が増え始めたようですが、テレビ等の画面から出るブルーライトは波長の短いエネルギーの高い光で、目に対して疲労を起こしやすくことも指摘されています。そして、近視の状態になってものが見えにくくなると、目の筋肉に力が入ってしまい、さらに目が疲れてしまう悪循環に陥ってしまいます。生活が便利になるにつれて環境が変化することは仕方のないことではありますが、我々の生活に欠かせなくなっている身近なものが、目には悪影響を及ぼすものだということは、忘れないようにしなくてはなりません。
まず子どもに対しては、スマートフォンや携帯電話、携帯ゲーム機を無制限に与えるのではなく、時間を決めて使用するように習慣づけること。そして、気付いた時にできるだけ遠くを見るクセをつけさせることも、子どもに自分で目を守る力をつけさせるために大切です。さらに具体的な方法については、「PC・スマホで近視化が進む……子どもの視力を守る方法」もあわせてご覧ください。
※1:2016年オーストラリアのBrien Holden Vision InstituteおよびUniversity of New South Walesで行われた近視の人口推移に関する研究結果(『Ophthalmology』に発表)