家庭のルールが夫を家から遠ざける?
以前話題になった、「乙武洋匡さん不倫問題」では、奥様の謝罪ということが注目され、私も「このような夫婦関係はどういうことか?」と、多くのメディアから取材を受けました。各種のコメンテーターの方々からは「不倫された被害者である妻が謝罪をするなんてありえない」という意見も多く聞かれましたが、私は「不倫された妻の謝罪」もあって不思議ではないと思っています。
なぜなら、夫婦関係はお互いが一緒に作りあげていくもの。そこに起きた事件は、どちらかが100%加害者で、どちらかが100%被害者という構図ばかりではありません。
たとえば夫が不倫をした場合、妻側に原因となる要素は全くないといいきれるでしょうか?
・もし妻が子供ばかりに時間を取られ、夫婦のコミュニケーションもなかったら?
・もし妻が仕事で忙しく、家事が全部夫の負担になっていたとしたら?
・もし妻が出産後、数年間にわたっても夫のセックスの誘いをすべて拒否していたら?
たとえば、その家庭がこんな状況にあったらどうでしょう。妻側に悪意はなかったとしても、夫にとっては幸せな家庭生活とはいえないでしょう。その寂しさを埋めるために外に愛情や癒しを求め、不倫をしたとしたら、果たして妻は100%被害者といえるでしょうか。
もちろん、不倫を擁護するわけではありません。しかし、夫婦関係のヒビ割れには必ず夫婦両方が関与しているはず。ということは、その関係修復には相手を責めるだけでなく、自らの行動を振り返ることも必要ではなかろうかと考えるのです。夫婦仲相談所では浮気経験がある男性のお話も日々聞いています。
悪いと思いながらも一線を超えた夫の苦悩も聞きました。10年以上妻と姑に束縛されていた例、子供ができてから5年以上セックスを拒否された事例。だから不倫したというのは確かにおかしい論理ですが、向き合う土壌を作っておかねばと感じました。
以前、著書『モンスターワイフ』(講談社)でも書きました。「夫がセックスを拒否する」というセックスレスの原因はもしかすると妻にあるのかもしれないと。不倫もまたしかり。
その意味では、乙武家の「22時以降帰宅禁止」というルールは、奥様の負担を減らすために良かれと思って作ったものが、結果的に夫を家から遠ざける危険なルールにもなってしまった事例といえます。
そして、このような「実は夫を家から遠ざけて、浮気に追いやってしまうルール」というのは、気づかぬうちに皆さんのご家庭にもあったりします。
今回は、その代表的なものをご紹介してみましょう。
家庭のルールでこれが「夫を家から遠ざけ、浮気に追いやる」
【夫を家から遠ざけてしまうルールその1】「お風呂に入らないでベッドに寝てはダメ!」
「一日外を歩き回った格好のまま、汗やほこりもそのままなのにベッドで寝るのは不潔でしょ。ベッドに入るのは、入浴後にして」というルール、お宅にもありませんか?
確かに、きれいなシーツを汗だらけの身体で汚されたくないと考えるかもしれませんが、だんな様としては「風呂に入る気力もないほど疲れているときこそ、ベッドで寝たい」と考えているかも。
それなのに寝室を追い出され、リビングのソファーに横になるしかないのでは、家庭への不満の元になります。
【夫を家から遠ざけてしまうルールその2】
「家事は夫婦平等に分け、自己責任で行う」
最近は共働き家庭も増え、それに従って、だんな様の家事分担もずいぶん進んでいるご家庭もあるようです。なかには家事は「手伝い」ではなく「シェア」であるとしっかり理解して、積極的に取り組んでくださるだんな様もいらっしゃるでしょうが、多くのだんな様にとっては、いまだに家事は「お手伝い」であって、自分のメインの仕事ではないと考えるものかもしれません。
それだけに「家事の役割分担」が硬直的であったり、自分がやったことに対して感謝されたり褒められたりしないことに不満をいだく方もいらっしゃいます。
たとえば「お皿洗いはだんな様のお役目」と決まっていたとしても、だんな様が残業で終電で返ってきた日にも、ご飯を食べ終えた妻と子供のお皿が流しに置きっぱなしになっている。だんな様が「体調が悪い」といっている日でも、「これは私の仕事じゃないから」と妻が一切家事に手を貸さない……。
また、「自分の担当の作業をするのは当たり前。お礼を言う必要はない」とやったことに感謝もされなければ、やっぱりだんな様としては面白くないでしょう。
これもまた、家庭が居心地悪いものになってしまう原因となりえます。
【夫を家から遠ざけてしまうルールその3】
「連絡がないときは夕飯は作らない」 夕飯を作っては空振り……ということが続いたあるご家庭では「だんな様の夕飯は作らないことを基本とし、作ってほしいときのみ連絡する」というルールにしたそうです。その結果、だんな様は平日、家で夕飯を食べることがまったくなくなり、夫婦のコミュニケーションも激減してしまう結果になったそう。
その原因の一つは、電話のタイミングがなかなか難しいことにあります。夕方は何かと忙しいし、かといって家に帰る直前の20時過ぎに「今日は食べます」と連絡をしても「今頃言っても遅い」と言われてしまう。
従って、夕方の連絡の機会を逃してしまうと、たとえ家に早めに帰れそうな日も「どうせ夕飯がないから」と外に飲みに行くサイクルができてしまったのだそうです。
「一緒に食事をすること」は実はパートナーとの関係を築くのに最も大切な時間の一つ。「家で食事をする」機会をなくしてしまうルールは大変危険です。作り置きを冷凍しておくでもいいので、策を考えてください。
【夫を家から遠ざけてしまうルールその4】
「家計の管理は妻。夫はお小遣い制」
「家計の管理を妻にまかせ、自分はお小遣い制」というご家庭も多いかと思います。でもこれも、だんな様が家の中に居場所がなくなる原因の一つ。
なぜ、自分で稼いだお金を、「今月足りないので……」と妻に頭を下げなければいけないのかと不満に思う。あるいは、子供が家計は母親が支えていると勘違いして、お小遣いをもらう父親をバカにするなどのマイナス事例がよく見られます。
夫が一家の大黒柱。家族を養ってくれていることへの感謝の気持ちを妻も子供も持っている――こういう雰囲気を作り出すことが、男性のプライドを満足させる家庭づくりにはとても大事です。もちろんギャンブル好きや浪費癖は直してから。
【夫を家から遠ざけてしまうルールその5】
「家の中は子供にいい環境にすべて整える」 最近よくあるのが「お子様至上主義」のご家庭です。家の中のルールやスケジュールなど、すべてが子供優先で、大人(特に父親)は家の中で自分のしたいようにできないということになってしまうという現象。これも家庭への不満につながります。 そのほかにも「子供に示しがつかない」という理由で休日も下着姿でごろごろできないなど、家の中がだんな様にとってくつろげない環境になっているような例もあります。
だんな様はいつでも自分が家族の中心でいたいもの。子供優先にする部分も多少はあるとは思いますが、一家の主としてのだんな様の希望も上手に立ててあげることが大切です。
いかがでしたか? 思い当たるところがある方は、まずは我が家のルールを見直し、だんな様にとって居心地の良い家庭の雰囲気をつくりだすことが、浮気予防の第一歩です。
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